6月5日~6月12日【初夏合宿】北アルプス 涸沢定着

6月10日 11:00 快晴の奥穂高岳頂上にて(全員登頂)

2015年度 初夏合宿報告書

日本大学山岳部

目的 リーダーシップ、メンバーシップの向上
生活技術の習得、 雪上・歩行技術の習得
山域 北アルプス 穂高連峰・槍ヶ岳 (横尾・涸沢定着)
日程 平成27年6月5日(金)~6月12日(金)
移動日1日、実働7日
メンバー 4年 CL賀来素直、SL宝迫哲史
3年 M 水越健輔、加藤純、桧山泰平
2年 岡本碩士、高根澤亮太
1年 秋山大征、荒井暢之(8日朝入山)、國谷良介、齋藤優弥(9日朝下山)、鈴木遼太郎、高橋佑太、土井祐介、中泉雄人
OB 大谷直弘(監督:8日入山)
計16名

行動

6月5日(金)移動日 新宿(高速バス)~松本駅

新宿(高速バス)22:20~松本駅01:30

6月6日(土)入山日 松本駅(貸切バス)~上高地~徳沢~横尾BC1 曇のち晴+15℃

松本駅06:00(貸切バス)~上高地07:30~明神08:30~徳沢09:20~10:20横尾BC1

曇り空のもと上高地を出発する。初めて重荷を体験する1年生にザックの背負い方、休憩の取り方を説明しつつ歩く。横尾につくと早速BCを設営しロープワークの確認を行う。奥穂高岳登頂の可能性を高めるため、2年生にFIX工作訓練を行ってもらい、1年生の通過の手順を確認しながら行う。

6月7日(日)
① 蝶ヶ岳隊 横尾BC1~蝶ヶ岳~横尾BC1 晴+11℃
(岡本-國谷-秋山-高根沢-荒井-土井-中泉-加藤-齋藤-鈴木-高橋-L賀来)

横尾BC1 5:00~蝶ヶ岳08:20~11:10横尾BC1

槍ヶ岳隊を見送り、BC1を出発する。空がおおむね晴れているため、樹林帯をあがる途中に穂高連峰がはっきりと見える。雪は去年よりもだいぶ少なく、森林限界近くまで行かないと無かった。1年生にキックステップ、ピッケルの持ち方を確認しながら登った。森林限界を越え稜線に出ると、槍・穂高が一望でき、1年生から歓声が上がる。気持ちの良い稜線を通過し頂上で記念撮影し早々に下山する。横尾に着いてもよく晴れているので昨日のロープワークの続きを本日も行う。

 

② 槍ヶ岳隊  横尾BC1〜ババ平〜槍ヶ岳山荘〜ババ平〜横尾BC1
(桧山−水越−L宝迫)

横尾BC①4:00〜5:40ババ平5:50〜8:30槍ヶ岳山荘9:30〜10:35ババ平10:45〜12:00横尾BC1

桧山をトップで行動を開始する。終始良いペースを保っており、コースタイムより早い行動が続く。ババ平からの雪渓も今年は少ない。気温が高く、行動中はかなり暑い。ハイペースだったこともあり、頻繁に休憩をとり水分補給を行う。こまめな休憩は良いリフレッシュになり、早いペースを維持し続けることが出来たと感じる。槍ヶ岳山荘のデポは残り約20kg。全てを回収する。下降は落石に注意しながら、シリセードとグリセードで雪渓を降りる。横尾BCに帰幕すると一年生がロープワークの確認をしていた。

(報告者:宝迫哲史)

7日、1年生をメインとしたパーティーは蝶ヶ岳へ登る

6月8日(月)雪訓日 横尾BC1~涸沢~横尾BC1 晴+7℃

横尾BC1 05:00~08:30涸沢13:00~雪上訓練(Ⅵ峰基部)~横尾BC1 15:00

朝、授業の実験のため下山する2年の岡本と別れる。本谷橋までの道でも雪は少なく、例年2~3箇所ある雪のトラバースも今年は1箇所しかない。本谷橋からは沢沿いに上がる道が使えるようなのでぐんぐん登ってゆく。計画より早めに涸沢に到着し、雪上訓練を開始する。8の字を含む歩行訓練を行ったが、1年生は方向転換をほとんど覚えていなかった。昼前に大谷監督が1年生の荒井を連れて上高地から到着。滑落停止を大谷監督の指導も頂きながら行い、雪訓を終了する。

6月9日(火)BC移動(横尾→涸沢) 横尾BC1~涸沢BC2 雨のち曇+13℃

横尾BC1 06:50~11:10涸沢BC2 12:30~雪上訓練(Ⅵ峰基部)~ 15:30涸沢BC2

朝3時に宝迫の付き添いで1年の齋藤が下山する。昨晩から強めの雨が降っているため、上高地から往復してきた宝迫と合流してから出発する。鈴木の体調も良好である。雨は次第に弱まってきているが、慎重に涸沢まで上がる。1年生は重荷と雨の中良く頑張っていた。テント設営後、雨が止んだので雪訓を開始する。時間の関係でFIX訓練を行うだけにとどめる。明日は1日中快晴の予報であり、それ以降は天候が崩れる可能性が出てくる点、全員の体調も良好である点等を考慮し、奥穂アタックは全員で行うことを決定し就寝。夜は風が強く吹いた。

6月10日(水)奥穂高岳アタック 涸沢BC2~奥穂高岳~涸沢BC2 晴+7℃

涸沢BC2 04:00~08:30穂高岳山荘~10:50奥穂高岳11:00~14:30涸沢BC2

全員体調良好、BCを出発する。昨晩の強風で雪面がかなり固くなっているため、大谷監督と賀来でザイテングラードまで先行し、ひたすらカッティングする。日が出てくるにつれ、雪が柔らかくなってくる。雪が少なく、ザイテングラードの夏道が所々露出しているので、落石を避けるため夏道を通過することにする。白出のコル到着後、宝迫と水越に先行してハシゴから雪壁トラバースにかけてFIXロープを設置してもらい、更に賀来と高根澤で頂上の直下の雪壁にもう1ピッチFIXして通過する。大人数であるため時間がかかるが、他の登山者が少ないので助かった。山頂に着き記念撮影、休憩をする。時間が押しているため早めに切り上げ、下山を開始する。白出のコルからはザイテングラードまで補助的に200m程ロープを出して下降する。1年生は上手い下手はあるが、雪の斜面に全員臆することなく下っているのが印象的であった。帰幕後、晴れているうちに各自乾かし物などをして思い思いの時間を過ごす。

奥穂高岳に向かう朝、ヘッドランプをつけて行動を開始する

奥穂高岳頂上手前、後方手前の涸沢岳(左)と槍ケ岳(右)

6月11日(木)
① 雪訓隊 涸沢BC2~雪訓場~涸沢BC2 晴+12℃

涸沢BC2 07:00~雪上訓練(Ⅵ峰基部)~15:00涸沢BC2

北穂東稜隊を見送り、少しゆっくりしてから雪訓場へ向かう。鈴木の熱はないが、胸に苦しさが残るということでテントキーパーとする。桧山と高根澤に1年生のビレイ訓練を任せる。手が空いている1年生は隣で賀来と歩行訓練、滑落停止、グリセードを行う。1年生に対して上級生が少ないため時間がかかる。時折、東稜を登っている隊の姿が見える。双眼鏡で東稜隊の核心部の通過が確認できたため、10時過ぎに大谷監督が上高地へ下山する。また、涸沢ヒュッテの方から飲み物の差し入れを頂く。東稜隊は13時頃帰幕、そのまま雪訓隊に合流する。最後に高根澤、桧山にFIX工作訓練をしてもらい1年生には通過してもらい帰幕する。

11日の雪上訓練(3日目)ロープワーク訓練:確保者1年生の中泉、滑落者2年高根澤

② 北穂高岳東稜隊 涸沢BC2〜東稜〜ゴジラの背取り付き〜ゴジラの頭〜北穂高小屋〜涸沢BC2
(宝迫−加藤−水越)

涸沢BC② 5:00〜6:15東稜〜7:30ゴジラの背取り付き7:40〜ゴジラの頭9:30〜12:15北穂高小屋12:20〜13:00涸沢BC②

事前のBCからの目視では取り付きまでの雪が少なく、昨年通りのルートは取れないだろうと感じていた。3年生2人はBCからよく観察し、上段の雪渓への登り口をよく観察していた。南稜の夏道が一部出ていたため、上段の雪渓まではほぼ夏道を使用する。上段の雪渓は落石跡が多い。上方に注意しながら、東稜の尾根に上がる。「ゴジラの背」取り付きまで、北穂池側の雪渓をトラバースしていく。「ゴジラの背」のリッヂは、昨年は1ピッチでザイルを張ったが、ザイルの流れを考慮して、2ピッチ張る。1ピッチ目は宝迫リード。リッヂを通過した後、北穂沢側から反対側に渡る。支点はピナクルを使用する。2ピッチ目は水越リード。高度感のあるリッヂの通過である。終了点の「ゴジラの首」周辺で、記念撮影をして休憩。「ゴジラの頭」は懸垂下降を行う。懸垂下降ポイントからは問題なく通過していくが、小屋の目前30〜40mの所で、岩稜のトラバースがある。昨年はザイルを出さなかったし、記録にも見受けられないが、雪の量等により変わるのだろう。今回、全員ザイルは必要だと感じたため、1ピッチ宝迫のリードでザイルを伸ばす。登頂後は北穂沢の落石に注意しながら下降する。登攀中時折、1年生の雪上訓練の声が聞こえていた。ルート取りから、ザイルを出す判断、実践でのザイルワークと、とても良い経験が出来たと感じる。昨年成功させた東稜ルートを、今年に繋げることが出来た。この良い流れを次に繋げていき、更なる飛躍を目指していければ良いと思う。

(報告者:宝迫哲史)

11日 北穂東稜隊 ゴジラの背を通過する、後方のピークは屏風の頭

6月12日(金)下山日 涸沢BC2~横尾~上高地 雨のち曇+5℃

涸沢BC2 06:00~横尾08:30~11:00上高地

朝、雨が強いため出発を1時間遅らせる。落石に注意しながら本谷橋まで通過する。横尾までにあった雪渓もかなり小さくなっている。上高地まで弱い雨が降り続けていた。上高地に到着後、バスが16:15発ということで、それまで入浴や上高地散を散策して時間を過ごした。

総括

期間中は天候に助けられ、槍のデポ回収、雪訓、蝶ヶ岳、奥穂高、北穂東稜と全てこなすことが出来た。また、1年生の山に対するモチベーションも全体として高く、今後が非常に楽しみである。体調を崩した1年生もいたが今回の反省点は確実に直していってもらいたい。

(報告者:賀来素直)

北穂東稜隊:ゴジラの背を通過中

北穂頂上到着(宝迫部員は昨年に続き2回目の東稜トレースでした)

初夏合宿を終えて

8名の新人1年生を迎え、総勢15名が参加した初夏合宿となった。毎年、期間の半分以上は雨を覚悟しないといけない本合宿、分散や雪訓の日程が思うように消化できないのが悩みの種である。しかし、今年は天候に恵まれ充実した合宿を行うことが出来た。

分散行動の蝶、槍、奥穂、北穂東稜と全てをこなし、雪訓も2日シッカリと消化できた。例年に比べれば出来過ぎである。1年生も合宿全般を通して、ほぼ全員が行動できたことも大きな収穫であった。1年生は、入山2日目に登った蝶ヶ岳から望んだ残雪の穂高連峰に、思わず歓声が上がったとのこと。山岳部生活の良いスタートを印象付けられたようだ。2年以上も頑張って1年生の指導に取り組んでくれた。

分散行動の奥穂アタックは、早暁からの行動開始、白出しのコルまでの急登キックステップ、鉄梯子の通過、頂上雪田でのFIX通過(2ヶ所)…・山ボーイ初体験の1年生としては関門を次々にクリアして、そして頂上に立った。奥穂頂上からは望む白馬、立山、薬師、水晶、槍、常念、白山、乗鞍…・・青空に並んだ360度の大パノラマに“サイコー”と喜んでくれた。

初夏合宿後、1年生同士のコミュニケーションがより深まったようだ。初夏で助け合いながら、お互いにヤリ切った連帯感のようなものが出来たのであろう。入部当初の余所余所しさも無くなってきた。合宿が終わり、部室で日焼けした黒い顔の1年生達に会った。“合宿ご苦労様”と声をかけるとニヤッと白い歯を覗かせ、次に“ハイッ”と元気な返事が返ってきた。少しだけ山男に近付いた様に思える。初夏合宿を終えたばかりなのに逞しささえ感じられた。彼等のこれからの活躍を大いに期待したい。

今夏、上級生をメインとした遠征組はインド・ザンスカール山群の未踏峰を目指す。遠征組とは別に、国内組11名は例年通り夏山の定着合宿を剱沢で行う。雪訓、剱登頂後、長期縦走に行く予定だ。さらに1年生が、そして2年生以上も逞しく成長することを期待したい。

監督 大谷 直弘

日本大学山岳部 初夏合宿 雪渓訓練特集

雪訓だよ、全員集合!

平成27年度 花の1年生 雪訓、雪訓また雪訓 、昨日も今日も明日も雪訓

雪訓…FIX通過訓練:固定ロープを張りに行く2年の高根澤君

雪訓…ロープワーク:ボディビレイ、確保器具を使用したビレイなどを練習する

肩がらみ確保練習中の1年生の秋山君、指導と滑落係りは2年生の高根澤君

1年生が並びます、滑落停止訓練

滑落停止体勢にはいる1年生の土井君、ズズズズッ・・と止まりましたです!

滑落停止訓練…・ピッケルのピックがしっかりと入っているか確認する2・3年生

雪訓を終えてキャンプサイトに戻る、後方は吊り尾根

雪訓を終えて(まだまだ余裕です、雪訓第2ラウンドOKです、ウッス!)

総括

冬合宿へむけての偵察ということで、下部には積雪の無い横尾尾根を通過したが、藪漕ぎがきつく、想定していたよりも不安定な道が多いなど、序盤で時間をかけすぎてしまった。逆にP4を過ぎてからは比較的スムーズに進むことができた。結果としてはエスケープすることとなり計画のすべてをこなすことは出来なかったが、核心となる横尾の歯と各ピークの通過方法、天幕地など積雪期に向けて具体的な計画を立てられる情報をそろえることが出来た。各自のコミュニケーション不足やFIX工作のスピードなど、まだまだ至らない点があり、初冬合宿でこれらを改善しなければならない。

(報告者:賀来素直)

 

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