パダム郊外からのT20峰
日本大学山岳部ザンスカール登山隊2015
概要報告
計画概要
隊の名称 | 日本大学山岳部ザンスカール登山隊2015 NIHON UNIVERSITY ZANSKAR EXPEDITION 2015 |
---|---|
目的 | インド・ザンスカール山脈の未踏峰 T19峰6,162mおよびT20峰6,157mの初登頂。 |
隊の構成 | 登山隊長1名、隊員4名(学生4名、OB 1名) ガイド1名、リエゾンオフィサー1名、コック1名、キッチンボーイ3名、馬方5名 |
日程概要
8月5日(水)成田空港 出国 〜デリー
8月6日(木)デリー
8月7日(金)デリー〜レー
8月8日(土)レー
8月9日(日)レー〜ワンラ
8月10日(月)ワンラ〜ハヌパタ
8月11日(火)ハヌパタ〜フォトクサル
8月12日(水)フォトクサル〜センゲ・ラ ベース
8月13日(木)センゲ・ラ ベース〜スタヤン
8月14日(金)スタヤン〜リンシェ
8月15日(土)リンシェ〜ラナン
8月16日(日)ラナン〜ジンシェン谷
8月17日(月)ジンシェン谷〜ハナムル
8月18日(火)ハナムル〜ピシュ
8月19日(水)ピシュ〜パダム
8月20日(木)パダム〜BC
8月21日(金)BC〜C1荷揚げ〜BC
8月22日(土)BC〜C1
8月23日(日)C1〜T19ルート工作〜C1
8月24日(月)C1〜C2設営
8月25日(火)C2〜コル〜C2(登頂断念)
8月26日(水)C2〜BC
8月27日(木)BCレスト
8月28日(金)BC〜パダム
8月29日(土)
8月30日(日)レスト
8月31日(月)パダム〜ホンツェット村〜ピシュ
↓バックキャラバン
9月7日(月)センゲ・ラ ベース〜フォトクサル
9月8日(火)フォトクサル〜レー
9月9日(水)レー
9月10日(木)レー
9月11日(金)レー〜デリー
9月12日(土)デリー〜成田
9月13日(日)成田帰国
山域概要図
行動概要報告
(1)出国~キャラバン(往路パダムまで)
8月5日に日本を出国。メンバーの多くが初の海外経験であったため、インドの地に圧倒されながら、更に2日後国内線を乗り継いでレーに到着した。まだ異国の地に慣れていないまま、現地での登山準備に追われ、気が付いたらヒマラヤの壮大な山々に囲まれていた。
私たちにとっては、10日間の長いキャラバンをここレーから開始する。4000m級の峠をいくつも越えて、やっと最終日に目指すT20を臨むことが出来た。パダムから圧倒的な存在感を放っている双耳峰である。往路のキャラバンでは全員順化を無事終えてパダム村へ着くことが出来た。
(2)パダム村~BC設営~C1(5,000m)~C1上部
キャラバンで定していた高度順応は、順調にクリアし全員の体調は良好である。8月20日、予定通りのGompe谷にBC(4,500m)を設置する。もう少し上にBCを設置したかったが、足場が悪く荷上げの馬が入ることが出来なかった。翌21日は、T19&T20間から伸びる沢の出合にC1(5000m)を設営し荷揚げを行う。22日から本格的な登山活動を開始した。
22日はC1からT19&T20への偵察を行う。ようやく臨むことの出来たT20の裏側は予想とは違った地形であり、岩稜の細いリッジ上にピナクルが複雑に乱立していた。T19は出合からは見ることが出来なかった。未だまともに地形を偵察することができておらず、先行き更に不安がつのる。
翌23日、C1からT19&T20へのルート工作に向かう。T19&T20の間に存在する氷河(5300m)にようやく到達するが、そこから見えるT20は昨日の偵察通りの困難性を極めるものであった。また予定していたT19&T20のコルまでの氷河は、手前に大きくせり出しており崩落の危険性があるため、他のルートを探すことになった。
(3)C1~C2設営~ABC(コル)へのルート工作
23日、T19から東に伸びる尾根に、ルートを見出し尾根までの雪壁に取り付く。FIXを伸ばせる所まで伸ばす予定であったが、雪壁の中盤から堅いアイスコンディションとなり、アイゼンもピッケルもしっかりと刺さらない。時間が来てしまったため、このルートを断念し登攀具をデポして、C1に下降する。24日、当初予定していなかったC2(5,200m)を氷河上に設営し、そこからT20峰へ突き上げるコルへルートを探すことにした。昨日の雪壁は、中盤から尾根に出るまで、厳しい氷の壁であり、他のルートを探すことにした。C2設営後、宝迫、飯田コーチの2名で、コルに突き上げる東側の沢の偵察を行う。
コルまでのメインの沢は氷河が手前に大きくせり出しており崩落の危険性がある。向かって右側に小さなガレた沢があり、コルに出ることが出来るのではないかと考えた。沢の中盤まで偵察を行ったが、落石の危険も少なく、コルに上がれそうだ。このルートから予定していたコルにABCを設営することを決め、偵察を終えてC2に戻った。
(4)C2~ABC(コル)~断念~BC~パダム村
25日、ABCを設営するため、昨日偵察した沢をつめていく。沢の中盤からコルにでるため、岩稜に取り付く。1P目、2P目は岩稜帯、傾斜も緩く、難易度は高くない。3P目は核心部、岩と氷のミックスでアイゼンが刺さらなく、少しテクニカルなピッチであった。4P目はコルまで伸びる雪田を目指す。しかし、コンディションは同じく固い氷であった。荷物が重いため、アイスクライミングの要領で登ろうにも、身体がきつい。4P目を終え、ようやくABC設営予定地(5800m)のコルに出るが、そこは細いリッジになっており、テントが張れるような場所ではなかった。
相変わらず裏側から見たT20の稜線は、厳しい。またT19も目前に迫っていたが、我々の現在の力量では困難に思われた。複雑な思いに駆られながら、本日中にC2への下山を決める。下降は核心部の懸垂下降2P。FIXロープを辿り、疲労困憊のなかC2に到着した。翌26日にBCに戻り登攀を終えた。28日パダム村まで下山し登山活動を終えた。
(5)パダム村~(バックキャラバン)~レー~デリー~成田(帰国)
31日からレーを目指して帰路のキャラバンをスタートさせ、予定通り9月9日にレーに帰着。中1日、レーでの観光を行い11日にデリー着。IMF、日本大使館への登山終了の挨拶を済ませる。翌12日、デリーから成田へ向けて帰国の途につく。13日朝、成田無事帰着。
(6)登山を終えて
今回の未踏峰遠征は、敗退に終わりました。未踏峰ということで情報不足の山の困難性もありましたが、我々の力不足を大きく痛感することになりました。三次的な要因ではなく、山と自分、その間で負けてしまいました。技術的、また自身の体力面、精神面も見つめ直す必要があると強く感じております。
結果は出すことが出来ませんでしたが、大変貴重な経験をさせていただきました。今回の遠征にあたりご支援、ご声援を頂いた皆様方、大変ありがとうございました。日本大学山岳部OBの皆様のご協力に対し隊員一同心より感謝致します。気持ちを新たに、今回ヒマラヤの地で学習したことを次に活かさなければなりません。また今後も学生隊がザンスカールの地で未踏峰にチャレンジしてもらいたいと思っております。
参加隊員
隊長・渉外・会計
宝迫 哲史 Tetsushi Housako 男(22歳)
商学部 商業学科 4年
生年月日:平成4年10月30日
住所:神奈川県横浜市
渉外・食糧
加藤 純 Jun Kato 男(23歳)
法学部 新聞学科 4年
生年月日:平成4年5月17日
住所:東京都荒川区
装備・医療
水越 健輔 Kensuke Mizukoshi 男(20歳)
文理学部 教育学科 3年
生年月日:平成6年12月3日
住所:東京都世田谷区
通信・食糧
高根澤 亮太 Ryota Takanezawa 男(19歳)
生物資源学部 森林資源学科 2年
生年月日:平成8年3月20日
住所:神奈川県藤沢市
OB参加
飯田 祐一郎 Yuicirou Iida 男(24歳)
生物資源学部 卒業
生年月日:平成2年5月27日
住所:東京都品川区
海外登山歴:
インドヒマラヤ(夏) ザンスカール 2012
ネパールヒマラヤ(春)ガンガプルナ 2015
北アメリカ マッキンレー 2015
※ご協力者名簿につきましては正式報告書に掲載させて頂きます