遠見尾根BC(西遠見山)付近にて雪上訓練場にて
山行報告書
目的 |
指導力の向上、ロープワーク技術の向上、五竜岳の登頂
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山域 |
北アルプス 五竜岳・遠見尾根
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日程 |
令和7年4月30日(水)~令和7年5月5日(月) 移動1日、実働5日 |
メンバー | 3年 CL.星野伶旺、黒木佳太、曹 婉婷 2年 石川雄大、緒方俊介、久保 開(3日下山)、加藤陽登、飯塚 榛 OB 國谷良介コーチ 学生8名+コーチ1名 計9名 |
遠見尾根BC(西遠見山)付近にて雪上訓練場にて
行動報告
4月30日(水) 移動日
千石部室21:05~22:10バスタ新宿(バス移動)23:05
この日は深夜バスでの移動日であり、夕方頃に部室集合の予定であった。しかし、黒木が到着時間に遅れたため、他の部員は先にバスタ新宿へ向かった。ゴールデンウィーク期間中ということもあり、バスタ新宿は大変混雑しており、乗車するバスも満席であった。他大学の山岳部も同じバスを利用していた。
出発時刻直前に黒木も無事合流し、定刻通りにバスは白馬・五竜方面へ出発。明朝は早い出発が予定されていたため、乗車後すぐに隊員たちは睡眠をとるよう努めた。
5月1日(木) 入山日 晴れ 15℃ 積雪300cm(西遠見BC)
05:00信濃大町駅前~神城駅06:40〜7:25とおみ駅8:15〜8:30アルプス平8:50〜小遠見山10:45〜11:25中遠見山〜11:55大遠見山〜12:35西遠見山BC
早朝5:00、バスは信濃大町駅前に到着。駅に向かい、始発電車を待つ間は駅構内で待機した。神城駅にて下車後、エスカルプラザとおみまで約20分歩いて移動。前夜の睡眠は短かったが、体調に大きな問題はなかった。とおみ駅にて國谷コーチと合流し、ゴンドラに乗車する。スキー客が多く、混雑していた。
アルプス平に到着後、アイゼンを装着し、準備運動をして出発。出発は予定より5分遅れた。男子部員のザック重量は30kgであった。序盤はスキー客に注意しつつ、地蔵の頭へ向かった。そこで一本を取り、気温が高かったためレイヤリングを調整した。ルート上には明瞭なトレースが残っており、アイゼンの引っ掛けに注意しながら慎重に進んだ。小遠見山まではアップダウンが多く、行程は長く感じたが、中遠見山以降は勾配が緩やかになった。右手には八方尾根や唐松岳、その奥に白馬三山が等間隔に並び、壮麗な景色を楽しむことができた。
大遠見山付近で、緒方が疲労により太ももに張りを感じ、曹も遅れがちになったため、ペースを調整しながら進んだ。無事に西遠見BCに到着後、テントを設営した。降雨の可能性を考慮し、外張りではなくフライシートを使用。翌日以降の強風を見越して、風防ブロックも2張ともしっかりと構築した。風防作りには前年度の経験が活かされ、作業スピードは向上していたが、コミュニケーションがもっとあれば、より効率的にできたと感じた。反省会では久保から軽度の靴擦れの報告があった。明日は天候悪化が見込まれるため、起床を1時間早め、午前中に歩行訓練を行うことを決定した。
5月2日(金) 訓練日 曇り/雨 -5℃ 積雪300cm(西遠見BC)
BC05:15~05:20BC付近雪訓場07:30〜BC7:40
前日の予定通り、1時間予定を早めて訓練を開始する予定であったが、テントから出るのが遅く、アイゼン装着にも時間を要したため、出発が15分ほど遅れてしまった。また、V4テントの黒木から、久保が昨日の夜以降、だるさと微熱の症状があると報告を受けた。久保をテントで休養させ、雪上訓練を開始した。
来年度の1年生に指導するためには、自分たちが、しっかりと技術を身につけなくてはならないという目的意識を持ち、各自、アイゼン歩行練習を開始した。まず初めに、直登、直下降を行い、その後、トラバース、最後に斜歩行を行った。朝のため、雪質は固く、良いアイゼン歩行練習になったように感じた。1時間ほどアイゼン歩行を行ったのち、アイゼンを外しての歩行に移った。アイゼン歩行と同じ流れで行ったが、キックステップをしっかりと行わないと、滑ってしまい良い練習になった。またトラバース歩行では大股になりすぎているなど、國谷コーチから御指摘をいただいた。
7:30頃から風もかなり強くなり、雪が少し降ってきたため、訓練を終了し、その後1日テントにて、各々休養した。テント内で過ごしている時は、みぞれが降っているように思われた。久保の調子は良くなる見込みが無いため、天気の良い明日3日に黒木と共に久保を下山させ、他は五竜岳アタックをすることにした。
5月3日(土) アタック日 晴れ 10℃ 積雪300cm(西遠見)
BC04:10~07:15五竜山荘07:30~12:30五竜岳12:40〜五竜山荘16:20〜BC17:10
前日に引き続き、出発が10分遅れてしまった。途中下山する黒木と久保と別れ、白岳をめざして進んだ。雪面は引き締まっており、キックステップをしっかりとし、トラバース時もしっかり一歩一歩丁寧に歩く。しかし、途中斜面で一本を取った際、石川のポリタンが谷まで落下してしまった。さらに曹もツェルトを落下させてしまった。國谷コーチが回収しに向かってくださり、結果的に回収できたので良かったが、しっかりとバケツを掘り、装備の扱いを慎重に行う必要があると感じた。
白岳を巻くことも考えたが、ロープを何度も出すことになった場合の時間のロスも考え、右側の雪庇に近づきすぎないように注意しながら、尾根上を進むことにした。五竜山荘に着く前に1ピッチfix通過を行った。普段の練習を実践で行うことができ、良い経験になった。自分自身も初めてのリードであり、途中支点の場所やルートなど、事前に考えることも多く、終了後に後悔や反省点もあった。
五竜山荘到着後、営業中の小屋内のトイレを利用したため、思いの外、時間が経過してしまった。五竜山荘から先のトラバース箇所や直登箇所では國谷コーチにfixを張っていただき、2、3本連続で張った箇所もあった。最後の山頂直下は、自分が再度リードを行った。五竜山荘からは合計6ピッチほどロープを張り、通過者も多かったため、山頂到着までは時間を要しが、雷鳥も観察でき、剱岳方面の展望も素晴らしく、後立山ならではの良さを感じた。
すぐに下山を開始し、クライムダウンをする場所は、しっかりと蹴り込み、足場を安定させながら、慎重に下降した。懸垂下降はピナクルを支点にして行った。トラバース箇所では、クローブヒッチの解除を忘れてしまう部員がいるなどのミスがあったり、全員がビレイポイントについてから、次のピッチに移るのが遅いなど、課題もあった。下降の際、コンテで登っている登山者や、我々とは違うルートを選んでいる登山者がおり、多種多様で興味深かった。
五竜山荘到着後は、疲労を見せる部員もおらず、時間も押していたため、トラバースの危険箇所以外はペースを少しあげて、BCへ目指した。直下降で、転倒する部員もおらず、良いペースで進むことができた。17時過ぎ、BCに到着した。久保を下山させ、戻ってきた黒木がBCで水を作ってくれていたので、すぐに食当を開始できた。
食当以外の部員で食事ができるまで、溶けてしまった風防ブロックの補強を開始したが、一部二年生が疲れからか、のんびりと行動していたのは、問題であった。新一年生の指導をする立場になることを、わきまえて欲しいと感じ、あえて静かに観察していたが、最後の方までだらだらしていたので、反省会時に指摘することになった。明日は、朝から天気が悪く、本日が長時間行動であったこともふまえ、9時にテントを出発し訓練をすることにした。
5月4日(日) 訓練日 曇り/晴れ 6℃ 積雪300cm(西遠見BC)
BC09:00~09:10BC付近雪訓場14:40〜BC14:50
朝から強風が吹いていたが、予定通り9時にテントを出発し訓練を実施。2年生が1ピッチ、FIX工作を行った。、新入生指導の訓練も併せて実施した。続けて、アタック日にも行ったFIX2ピッチ連続して行う練習を実施。効率的なカラビナやロープなどの受け渡しの重要性を再認識した。
その後、ボディビレイの訓練を行い、足場作成やロープの手繰り方の確認も行った。最後に、木を利用した懸垂下降の訓練に移り、シングル・ダブルロープ双方の設置方法と役割分担について実践を通じて学んだ。
最後に國谷コーチよりスノーボラードについて教わった。雪質を見極めることの重要性を実感した。6日より天候悪化が予想されるため、明朝訓練後に下山することを決定した。冷え込むことが予想された為、寝る前に竹ペグを、再度打ち直した。
5月5日(月) 下山日 曇り/晴れ -3℃ 積雪300cm(西遠見BC)
BC05:30~05:40BC付近雪訓場〜09:10BC09:30〜大遠見山09:55〜中遠見山10:30〜小遠見山11:00〜アルプス平12:05
朝から風が強く、訓練開始を40分ほど延期し、テント撤収後、5:40から開始した。まず初めにダイヤモンド歩行から開始した。人によって理解度に差があったが、時計回り、半時計回りでのピッケルの打ち直しの有無、方向転換などを再確認することができた。
次に、2日の訓練の復習で肩がらみ、腰がらみを1時間ほど行った。練度が上がっているように見えた。今合宿最後の訓練として滑落停止を行った。最初は足を上げるのが遅かったり、ピックの雪面への刺さりが甘かったりしたが、繰り返し行うにつれ、形になってきていた。
訓練終了後、BCを出発した。、途中雪庇に注意し、場所によっては夏道を利用した。気温も暑く、雪が入山時に比べて溶けているように見えた。たくさんの登山客とすれ違いながらアルプス平に到着し、ゴンドラに乗りこみ、今年度最初の合宿が終了した。
(ふりかえって)
今回の合宿は、前年度の冬季期間に合宿が思うように行えていなかったため、初夏合宿で一年生への指導がしっかりと行える体制を整えるために、訓練をメインとしつつ、2年生以上でfix工作・通過の実践をつみたいと思い、前年度の合宿から少し変更し、五竜岳を選定した。訓練も一通りでき、五竜岳も登頂は達成でき、直近の山行では久しぶりにすべの目標を完遂できたと思う。
だが、装備を紛失しかけたり、朝の出発遅れ、アタック時のルート観察、選択等の反省点、課題もたくさんある。隊員間で問題点を共有して、目標とする山行を行えるように、これからの無雪期期間を過ごしたいと思う。
(報告者:星野伶旺)

五竜を目指す

5.5 雪訓

5.5 雪訓
(報告者:星野伶旺)