山行報告書
日本大学山岳部
目的 | 春山合宿に向けた偵察、生活技術、体力の向上 メンバーシップ・リーダーシップの向上 |
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山域 | 北海道 大雪山十勝連峰 |
日程 | 平成30年9月1日(土)~平成30年9月7日(金) 移動1日、実働5日、停滞1日 |
メンバー | 4年 L國谷良介 3年 川村洸斗、福島端流 2年 氏神拓真 1年 喜多嶋拓海 計5名 |
行動報告
9月1日(土)移動日
札幌(バス)~富良野駅(JR)~上富良野駅(バス)~十勝岳温泉凌雲閣
山行中盤で台風の直撃が予想されるが、予定通り札幌を出発し登山口へ向かった。到着後、富良野岳北尾根の入山地点の様子を見に行く。登山口駐車場にテントを設営し就寝。
9月2日(日)入山日 晴れ 6℃
十勝岳温泉04:50~07:25富良野岳分岐~07:50富良野岳~08:15富良野岳分岐~10:35上ホロカ避難小屋CS1
登山口で入林届を記入して出発する。富良野岳分岐までの登山道は、傾斜は緩いがぬかるみがあり歩きにくい。天幕予定地の水場が涸れていることが予想される為、1人6ℓ程水を持っているが、悪くないペースで歩けている。分岐でザックをデポして富良野岳にピストンする。ピークで撮影し、北尾根の様子を確認した。富良野岳分岐は広く平らで積雪期は天幕できるだろう。
三峰山から上ホロカメットク山間の北側は切れ落ちているが、南側はなだらかな斜面が広がっている。朝のうちは肌寒いが、日が昇るにつれて汗ばんでくる。それでも10日程前までの夏山合宿と比べると随分歩きやすい。
計画より早く上ホロ避難小屋に到着し、小屋脇の天幕スペースに設営。小屋は2階建で冬季入り口もあった。水場は涸れていた。明日は午後から天候悪化の予報の為、出発を30分早める。
9月3日(月) くもり 5℃
上ホロカ避難小屋CS1 04:25~05:25十勝岳~07:20美瑛岳~08:45美瑛富士~11:50オプタテシケ山~13:25双子池キャンプ地CS2
夜22時過ぎにキツネが食糧を漁ろうとする音で目が覚めた。幸い食糧に被害はなかった。出発してしばらくは左側が切れ落ちているが、右手は緩く登山道もしっかりしているので薄暗くても問題ない。少し開けて火山礫の積もった大きな斜面を登ると十勝岳に着く。生憎のガスだが、一瞬の晴れ間にトムラウシを臨むことが出来た。十勝岳から火山礫の斜面を下りきると、美瑛岳までは岩混じりの細い稜線が続く。
美瑛岳からの下りで喜多嶋が転倒し指を切ったので、治療をして進む。美瑛富士は美瑛富士分岐に荷物をデポして登った。美瑛富士避難小屋からは、ガスで景色の無い中で単調な登りがオプタテシケまで続き退屈であった。オプタテシケからの下り始めは切れた稜線歩きで緊張が走る。双子池キャンプ地まで長い急斜面を慎重に下り皆疲れ気味であった。
17時頃から雨が降り始めた。明日の藪漕ぎを思い憂鬱になる。キャンプ地の水場は涸れていた。台風が近づいてきている。計画では明日のテン場は南沼キャンプ指定地だが、念のため小屋のあるところで台風をやり過ごしたい。明日はヒサゴ沼避難小屋を目指し、出発を1時間早める。
9月4日(火) 小雨 9℃
双子池キャンプ地CS2 03:35~05:55コスマヌプリ~09:40三川台~12:05トムラウシ山~15:20ヒサゴ沼避難小屋CS3
小雨の中出発する。背丈以上の濡れた笹藪にぬかるんだ足下で朝から気分が悪い。もはやただの獣道を水と泥で全身ぐちゃぐちゃになりながら1時間歩くと、一旦藪漕ぎが終わりまともな登山道になった。5時半頃から風が強くなり始めるが、三川台まではほとんどが背の高いハイマツの中を歩くため影響は小さかった。三川台手前で再び笹藪と格闘し、三川台に出ると途端に風に煽られた。濡れた体に強風は応える。
三川台からは平坦な道をハイペースで進み、トムラウシに登る。トムラウシ山頂からの展望は無いので写真を撮ったらさっさと下り始める。北沼からしばらく歩くと、日本庭園と呼ばれる沼と巨岩の地帯に差し掛かる。晴れていれば綺麗なのだろうが、今日の滑りやすい岩とぬかるんだ泥は不快でしかない。ヒサゴ沼への分岐からも巨岩帯は続き、足を滑らせないよう慎重に歩く。沼手前の雪渓を下り、大きな沼のほとりを半周すると小屋に着いた。
小屋の外から2階の冬季入り口へ上がるハシゴは、上部が外れかけておりワイヤーで補強されていた。広く平らで快適そうなテン場に設営する。 明日は台風の為、停滞とする。
9月5日(水)停滞 雨のちくもり
夜中、雨と風が強くなかなか眠れなかった。快適そうなテン場は水はけが悪く、朝起きるとテントは水上に建っていた。雨が降ったり止んだりの天気で、乾かし物をして過ごす。夕方雨が止んだ。1日休み、昨日の疲れを取ることができた。
9月6日(木) 晴れのちくもり 9℃
ヒサゴ沼避難小屋CS3 04:55~06:05化雲岳~07:05五色岳~09:05忠別岳~12:05白雲岳避難小屋12:30~13:25白雲岳~14:15白雲岳避難小屋CS4
明け方地震があったようだが全く気が付かなかった。台風が置いていった風はまだ強いが、久々の晴れた山歩きは気持ちが良い。途中、忠別岳避難小屋に寄り、小屋の様子を見ておく。冬の悪天時、広い雪原の中からこの小屋を見つけるのは難しいだろう。
忠別岳の登り以外は大きな起伏も無くハイペースで進み、白雲岳避難小屋に到着する。白雲岳避難小屋は管理人がおり、きれいに整備されたテン場があった。天幕費は一人300円だった。水場は水が流れていた。
テント設営後、白雲岳に登る。山頂は文字通り白い雲の中だったが、一瞬の雲の切れ間に歩いてきた雄大な景色が見え歓声が上がった。白雲岳アタック後、ラジオで今朝の地震の深刻さを知り、下山後が不安になる。今日のルート上には地震による登山道の崩壊などは無かった。
9月7日(金)下山日 くもりのち晴れ 7℃
白雲岳避難小屋CS4 03:50~05:30北海岳~07:15旭岳~09:15北鎮岳~10:50黒岳~12:50層雲峡
昨日に引き続きまだ風が強い。北海岳に登るとバランスを保つのがやっとなほど風が強くなる。旭岳を目指していると徐々に風が弱まってきた。山頂までの急斜面を登っているうちにガスに覆われてしまったので、山頂で少しガスが切れるのを待つことにする。幸い数分で雲が流れてトムラウシ、十勝岳の方まで眺めることができた。
旭岳を下り、黒岳を目指していると今山行一番の晴れ模様となり、幻想的な御鉢平を見ることができた。黒岳山頂に着くとロープウェイ側から続々と登山客が登ってきた。紅葉にはまだ早いのが残念だが景色を楽しんでから、急な階段状の登山道を下っていく。
7合目の登山事務所で地震による登山道の影響を尋ねると、5合目からは通行止めだと言われる。しかし、地震の影響ではなく、一昨年の大雨で1~3合目間で大規模な崩落があった為らしい。一応歩いている人もいて自己責任とのことだったが、この大地震でどうなっているかわからないので5合目からロープウェイで下山することにする。
ふりかえって
ロープウェイの使用で最後まで歩き通すことができなかったのは残念だが、富良野岳から黒岳まで3月に計画しているルートのほとんどをトレースし、偵察の目的は果たすことができた。また、ルート上のすべての避難小屋に寄り、状況を確認できたことも良かった。今回の偵察内容から対策を練るとともに、春山合宿まで残り数回の合宿で部員の体力、技術を向上し、万全の状態でこの山に戻ってきたい。
(報告者:國谷良介)