2023/8/6 富士ノ折立にて
山行報告書
目的 | 雪上歩行技術の向上、夏山生活技術の向上、ロープワークの技術向上 リーダーシップ・フォロワーシップの向上 |
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山域 | 北アルプス 雷鳥沢・剣沢定着 |
期間 | 令和5年8月4日(金)~令和5年8月14日(月) 移動1日、実働9日、停滞1日 |
メンバー | 3年 CL三橋 壌二(8/10~8/14) 2年 田畑 天 1年 曹 婉婷(8/4~8/9)、鈴木大翔、黒木佳太(8/4~8/10)、三角海七渡 OB 賀来素直HC(8/4~8/10)、村上洋道C(8/8~8/9)、國谷良介C(8/9~8/14)、米山未羽C(8/9~8/14) 学生6名+OB4名 計10名 |
行動報告
8月4日(金) 移動日 晴れ 30℃
部室21:00~バスタ新宿(夜行バス移動)22:25~05:30富山駅
途中入山の三橋主将を含めた参加部員全員が17:00に部室へ集合し、装備等の最終チェック、部室の清掃を行なった。バスタ新宿で賀来HCと合流し、三橋主将に見送られ富山駅へと出発した。
8月5日(土) 入山日 晴れ 22℃
富山駅06:00~07:14立山駅〜10:00室堂10:20~11:30雷鳥沢BC
予定通りの時刻に富山駅へ到着。一年生は全員、夜行バスでの就寝が初めてであり、あまり眠れなかったようだ。
電鉄富山駅では計画よりも早く、乗り換えのない06:00発の電車に乗車した。立山駅から室堂までの便が大変混雑しており、計画の07:20発のチケットを購入する事が出来ず、09:00発の便となってしまった。事前予約は必須である。午後からの雨予報もあり、雷鳥沢への到着時刻に心配したが快晴の中、室堂に到着。パッキング、体操を行い、慎重にゆっくりと雷鳥沢へと向かう。
重いザックを初めて背負う部員もいる中、バテてしまう部員もおらず安心した。雷鳥沢も大変混雑しており、テントの設営場所に苦慮したが水捌けの良さそうな場所を選び、スムーズに設営からテント内整理を行う事ができた。 炊事、天気図まで時間ができたので、賀来HC指導の下、ロープワーク訓練を行なった。エイトノット、懸垂下降、ロープの畳み方など基礎を中心に理解を深める事が出来た。
明日は午後から雷雨の予報が出ているため、出発時刻を早めたうえで真砂岳までの周遊を行うこととする。
8月6日(日) アタック日 晴れ 20℃
雷鳥沢BC04:25~06:00一ノ越06:25〜07:30雄山07:45〜08:15大汝山08:25〜09:00富士の折立09:15〜10:20真砂岳〜12:25雷鳥沢BC
全員03:00に起床、04:30に雷鳥沢を出発する。一ノ越までの道中ではガレ場等があり、落石や浮石に注意しながら通過。06:00に一ノ越へ到着すると、一年の曹が靴擦れを訴えた為、応急処置を施した上で、全員ヘルメット、サングラスを着用し出発。傾斜のある岩と砂利の斜面を、引き続き落石や浮石に注意しながら、07:30に雄山の頂に立つ事ができた。初めて標高3,000m近い場所に来る者もおり、荘厳な後立山連峰の山影や美しい雲海に感動している様子であった。
記念撮影後は足早に雄山を後にし、08:15に大汝山に到着、黒部湖を綺麗に望める小さなピークで一本を取った。次第に登山客も増えていき、富士の折立では道を譲り合いながらの行動となり時間を要してしまった。また、曹が膝の痛みを訴えたため、賀来HCにアンザイレンを行って頂きながら行動する。10:20に真砂岳に到着した後、大走り経由で12:25、雷鳥沢へ帰幕した。
明日も午後から雷雨予報とのことで、本日同様に出発時刻を早めることとする。
8月7日(月) 訓練日 晴れ 23℃
雷鳥沢BC04:30〜06:50内蔵助山荘〜07:00内蔵助カール〜10:50内蔵助山荘〜12:50
雷鳥沢BC
全員03:00に起床、04:30雷鳥沢を出発する。曹は、前日からの膝の痛みを考慮し、空荷での行動とした上で、慎重にゆっくりと大走りを通過。07:50に内蔵助山荘に到着、トイレ休憩と雪上訓練用に装備、レイヤリングを整えて、08:00内蔵助カールに到着。例年と比べ、かなり雪が溶けており、岩肌が見えている場所が多く、訓練場所の選定に苦慮したが、落石の危険が少ない場所で訓練を開始。直登、直下降、斜登行、トラバース歩行、ダイヤモンド歩行など歩行訓練をメインに行った。
直登・直下降では鈴木と曹の二人は初夏合宿で経験済みであったが、まだ荒さが残っ ており、復習と反復練習を行なった。また黒木と三角は初めての訓練で転倒を繰り返しており、苦戦している様子であった。後半では馴れ始めた様子を見せており、全員が成長を見せていたので良かった。また、午後からの悪天を考慮して10:00に下山を開始し、13:00に雷鳥沢へ到着した。
8月8日(火)訓練日 晴れ 23℃
雷鳥沢BC〜08:55内蔵助カール10:15〜内蔵助山荘11:15〜13:55雷鳥沢BC
前日から風邪気味であった黒木が喉の痛みを訴えた為、田畑と共に休養停滞となり、鈴木、曹、三角は賀来HCと計画通り内蔵助カールでの雪上訓練となった。訓練隊は08:55に内蔵助カールへ到着し、バケツ掘り、直登、直下降、スノーバーを
使った支点構築等の訓練を実施。その際、直下降時に曹が転倒し、尾骶骨を負傷。曹を空荷にし、全員で下山となった。また、本日入山の村上コーチが雷鳥沢へ到着し、訓練隊の元に向かって頂いた。村上コーチと本隊が真砂岳で合流した後、負傷した曹と慎重に下山、13:55に雷鳥沢へと帰幕した。
曹の尾てい骨の痛みは時間とともに強くなっていったため、明日に村上コーチとともに下山することに。その上で、部員の休養もかねて明日は停滞日とする。
8月9日(水)停滞日 晴れ 24℃
雷鳥沢07:55〜室堂〜11:40雷鳥沢
曹の見送りに、全員で雷鳥沢を07:55に出発する。途中、ミクリガ池温泉にて國谷コーチと米山
コーチと合流。室堂で曹を見送り、雷鳥沢へと帰幕した。
帰幕後は少し休憩を挟み、テント近くの橋でロープワーク訓練を行った。送り出しや引き上げのビ
レイ、懸垂下降、トラーバースを想定したFIX通過訓練などを実施。途中、クローブヒッチ等の基礎的な結びをミスしている部員もおり、改めて訓練不足を痛感した。
明日は予定通り、剱岳アタックを視野に剣沢へ上がることとする。
8月10日(木) 移動日 晴れ 23℃
雷鳥沢BC06:15~08:00剣御前小舎~08:40剣沢BC
起床後に撤収をしていると、黒木が喉の痛みの悪化を訴えたため、急遽、賀来HCと共に下山とする。田畑、鈴木、三角、國谷コーチは06:15に先行して雷鳥沢を出発し、米山コーチは本日入山の三橋主将と合流後に追って剣沢に向かうこととなった。
雷鳥坂では中腹まで比較的登りやすい斜面が続き、浮石に注意しながら比較的良いペースで登ることができた。後半からは斜面のある砂利道を慎重に通過し、08:00に剣御前小舎へ到着。稜線では風が強く、寒さを感じた。剣沢への下りでは、転倒に注意しながら、08:40に剣沢キャンプ場へ到着。風が強く、物が飛ばされないよう注意しながらの設営となるも、スムーズに行うことができた。
10:30、近くの雪渓にて直登、直下降等の歩行訓練、FIX通過訓練を実施。傾斜が緩いこともあり、皆上手く歩行を行う事ができていた。三橋主将と米山コーチの合流後は剱岳アタックを意識した通過の掛け替えの訓練を行い、14:20帰幕の途に着いた。
(報告者:田畑天)
8月11日(金) アタック日 晴れ 22℃
剣沢BC2 04:33~05:05剣山荘~05:35一服剣~06:30前剣~09:05剣岳09:30~11:40前剣
~12:40一服剣~13:05剣山荘~13:30剣沢BC2
朝の食当に時間がかかり、出発が3分遅れる。日の出時刻は04:50頃とのことであったが、すでに明るくヘッデンは不要であった。05:05に剣山荘へ到着、ヘルメットとハーネスを装着して出発する。浮石や落石に細心の注意を払いながら登っていき、落石を起こすことなく前剣へ到着する。
前剣からは剣岳山頂がよく見え、皆、感動の声を上げる。地形の同定や記念撮影をして、出発する。前剣過ぎの梯子は、國谷コーチと米山コーチにロープを張っていただき安全に通過する。通過後は鎖にFIXを行いながら進む。皆、掛け替えは問題もなく、お互いに声掛けもできていた。08:20にカニのタテバイへ到着し、一区間一人ずつで通過していく。高度感があり足がすくんでしまうが、とても刺激的であった。難所のタテバイを通過し、山頂まで気合を振り絞って登っていく。
09:05に山頂へ到着し、各自で地形の同定や記念撮影を行う。
09:30に山頂を後にする。30分ほどするとカニのヨコバイへ到着する。カニのヨコバイは、フットホールドがわかりづらく、隊員同士でホールドを教えあいながら進んでいく。平蔵小屋跡手前の梯子、平蔵の頭の登り返しでは、再度、ロープを張っていただいて通過する。一服剣から剣山荘までの下りでは、何度か転倒をしてしまった部員がいたが頑張って進む。13:30に剣沢BCへ到着。山の日ではあったものの、予想していたほどの混雑はなく快適であった。
8月12日(土) 訓練日 晴れのち雨 24℃
剣沢BC2 05:25~06:05剣御前小屋~06:35別山~07:20内蔵助山荘07:40~07:55内蔵助カ
ール13:55~14:10内蔵助山荘~15:05剣御前小屋~15:40剣沢BC2
13日以降の天候悪化の可能性を考慮して出発を30分早める。予定時間より早くBCを出発し、剣御前小屋へ向かう。立山三山周遊の際に別山を踏んでいないということで、本日は別山山頂を経由していくこととした。06:35に別山に到着し、記念撮影を済ませて出発する。07:20に内蔵助山荘へ到着し、雪上訓練装備に着替えて出発する。数日前に来た時よりも雪の量が明らかに減っており、緩斜面で訓練を行うことに。直登、直下降、トラバース歩行から始めるが、一年二人は緩斜面ということもあり、あまり練習になっていないようであった。
そのため、ダイヤモンド歩行、滑落停止を行い、まだまだ反復練習が必要だと感じる。歩行訓練を2時間ほど行った後、ボディビレイの訓練を行う。掛け替えは問題なくできていたが、クライマーの墜落を上手に止めることが難しいようだ。練習あるのみということで、1時間ほど続けると二人とも何とか形にはなった。最後にFIX工作・通過訓練を行うことにした。FIXを2ピッチ張るが、1時間を要してしまう。雪が固いこともあるが、一つ一つの動作のもたつきが目立ってしまった。特にFIX工作までの準備に手間取ってしまった。
そうこうしているうちにガスってきてしまったため、本日はこれで訓練終了として急いで撤収をする。帰り道では、別山の巻き道を通ったためか一時間半ほどで帰幕する。
8月13日(日) 訓練日 晴れ 24℃
剣沢BC2 05:00~05:40巻き道分岐~06:40内蔵助山荘06:50~07:05内蔵助カール11:45~
12:10内蔵助山荘~12:50巻き道分岐~13:30剣沢BC2
本日は午後から雷雨の可能性があるとのことで、出発を1時間早め、剣御前小屋経由ではなく巻き道分岐まで直接登っていくこととした。そのおかげか1時間半強で内蔵助山荘へ到着し、訓練装備に着替えて出発する。本日は、弱点であるFIX通過訓練を重点的に行うということで、カール下部から上部までFIXを連続で張っていくこととした。昨日同様、三橋が最初にFIX工作を行っていくが、途中でバイルが折れてしまう。気づかないうちに柄の部分でスノーバーを埋めてしまっていたらしい。どうしようもないため、國谷コーチのアックスをお借りしてFIXを張っていくことに。途中途中、1年生が引き上げや送り出し時のビレイを担当しながら行っていく。
部会でもあまり練習ができていないこともあり、ぎこちなくはあったが全力で頑張っていた。結果的に、5ピッチ分のFIXを張り、3時間10分かかってしまった。昨日同様、雪が固いこともあるが、隊で意思疎通が取れていなかったり、体力不足による速度低下が大きな原因と考えられる。その後は、滑落停止とボディビレイの訓練を行う。二人とも滑落停止は上手にできていた。ボディビレイについては、三角が肩がらみがうまくできていない様子であり、何度も練習を繰り返す。
12時ころになると、雲行きが怪しくなってきたため訓練終了とする。帰り道も行きと同様に、巻き道分岐から剣沢に直接向かうことにした。
15日には台風が本格的に上陸するとのことで、明日の下山を決定する。
8月14日(月) 下山日 晴れ 19℃
剣沢BC2 05:50~06:50剣御前小屋~08:00雷鳥沢キャンプ場~08:45室堂
朝は1年生二人に食当を行ってもらった。二人で協力しながら効率的に動いており、時間には余裕を持って行動できていた。出発準備をしていると、三角が熱があるということで風邪薬を服用し荷物を減らす。三角の体調を考慮してゆっくり歩を進める。三角は、薬のおかげか次第に体調も良くなり、トレッキングポールの使用感に感動すらしていた。
08:00に雷鳥沢キャンプ場へ到着する。台風の影響か、テントはまばらであった。室堂まであともう少しということで、最後の気力を振り絞って歩く。08:45に室堂へ到着し、合宿終了とする。
(報告者:三橋壌二)
ふりかえって
今合宿では、怪我や風邪により途中下山をする部員が発生してしまった。皆で合宿を完遂できずに残念である。しかし、そうした状況でも隊で結束して行動することができて良かった。次合宿は、後半縦走である。この合宿で培った技術や体力、メンバーシップを糧に成功につなげていきたい。
忙しい中参加してくださったコーチの皆様、合宿直前に急遽隊を任せることになってしまった田畑部員に、感謝したい思います。ありがとうございました。
(報告者:三橋壌二)