雪上訓練の様子
2013年度GW合宿
日本大学山岳部
場所 | 北アルプス 劒岳 |
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期間 | 平成25年度4月29日(月)~5月5日(日) |
メンバー | 3年 CL山浦祥吾 2年 賀来素直・金原守人・須郷直也・宝迫哲史 OB 飯田祐一郎・関洸哉 |
行動
4月29日(月)移動日
新宿22:30~富山駅05:30
4月30日(火)富山駅〜室堂〜剣御前小屋〜劔沢BC1 風雪 0.1℃
室堂09:30〜10:30雷鳥沢直下11:00〜14:30劔御前小屋14:30〜15:50劔沢BC1
室堂に到着すると天気は既に荒れていた。すぐに身支度を済ませ、とりあえず雷鳥沢を目指す。野営場には5張ほどテントがあったが、ホワイトアウトで視界は20mくらいだろうか。この合宿中は終始膝下ラッセルほど、常にログを確認させ沢の中心に入り込まぬよう慎重に歩く。実際は赤旗が野営場から劔御前小屋まで奇麗にのびていた。劔御前小屋で警備隊から今後も天候は芳しくないこと、近辺の北斜面は雪崩の危険性がある、といった情報を仕入れBC1を目指す。ここでも確実にコンパス、地図の使い方を教え進ませる。劔沢には誰もおらず、残雪は5、6m、トイレの場所が奇麗に掘られていた。到着するや否や須郷が銀マットを飛ばされる。明日は午後から荒れるようだ。
5月1日(水)雪上訓練 風雪 0.0℃
劔沢BC105:15〜05:45雪上訓練開始06:30〜11:00雪上訓練終了11:15〜12:00劔沢BC1
朝、劒岳が奇麗に見える。剣山荘より北に500mあたりの斜面を雪訓場に選び、歩行訓練を90分、8の字歩行を90分と3時間歩き続けさせた。全員で滑落停止を練習、歩行訓練で耕した所より下はなかなか止めるのが難しい。皆、形は出来ているが、練習中、まず金原が止まらず20mほど滑り続ける。山浦、関OBで止めにかかった所、2人共2、300mほどだろうか、滑落する。金原は結局止まったようだった。沢下で下級生でなくてよかったと2人で話している最中、賀来、宝迫、それを止めようとした飯田OBが落ちてくる。皆アイゼンをしていないので大きな怪我はないようだ。山浦がアイゼンを取りに登り賀来、宝迫に装着させ登り返す。金原、須郷が待つ雪訓場につく頃には天気はさらに荒れ始め、BC1に帰ることにする。BC付近でもう一度滑落停止、グリセードを練習し終了した。
5月2日(木)雪上訓練 風雪 –4.0℃
劔沢BC105:10〜05:45雪訓場06:00〜15:30劔沢BC1
依然風は強く、時折太陽が顔見せるがすぐに隠れてしまう。今日は場所を替え、別山から北にのびる尾根斜面で行う。到着後すぐに支点構築、各種ビレイの練習を3時間ほど行う。その後、FIX工作4ピッチ、スタカット4ピッチそれぞれ時間をかけ丁寧に教える。さらに1本支点や土嚢袋を使った支点を交え懸垂下降を行い帰幕する。帰幕するとテントが5張程増えていた。天気は回復に向かいそうだった。
5月3日(木)劔沢BC1〜一服劔〜劔沢BC1 くもり –3.0℃
劔沢BC107:00〜08:00一服劔08:10〜13:00劔沢BC113:30
4時出発の予定であったが朝一天気は荒れていて出発に踏み切ることが出来ず6時出発に切り替える。しかし、OBとのシーバー交信などの準備で出発が遅れ結局7時発。天気は落ち着き始める。8時に一服劔に到着するが前劔の雪のつき方や隊員の歩行能力からリミットに間に合わないことは明白であったため下山を決定。下山中、稜線上にFIXを5ピッチ張らせ、さらにグリセードを練習、BCまで全力を出させる。午前中は晴れていたが次第にガスってきた。BCに帰るとテントが20張以上に増えている。関OBに手伝ってもらい雪洞訓練を始める。17:00頃雪洞は完成し、2年生は全員雪洞で就寝する。夜は合宿中1番の風が吹き荒れ山浦の寝ているV6のポールが折られた。雪洞は快適であっただろう。明日は就寝の遅れ、雪洞就寝、明日の日程などから6時出発とする。
5月4日(金)劔沢BC1〜くろゆりのコル〜劔御前〜劔御前小屋〜雷鳥沢野営場BC2 くもり 気温不明
劔沢BC108:00〜09:00剣山荘09:15〜15:00劔御前15:10〜15:50劔御前小屋16:00〜17:00雷鳥沢野営場BC2
食当の不手際、金原が飛ばされた銀マットを追いかけて3、40分戻ってこないといった失態が続き出発は8時となる。宝迫のペースが上がらないため、他3名を関OBにお願いし先にザイルを張ってもらう。山浦、宝迫が稜線上の岩峰に到着するころ、金原のリードによって岩稜帯にFIXが張られていた。支点、ザイルさばきから成長がうかがえたので嬉しかった。全員の通過は待たず、2ピッチ目は山浦がザイルを張る。アイスバーンのトラバースが30m、最後10m程の雪壁であった。宝迫の荷物を分けさせ、全員ユマールで通過、ルンゼ帯を登り稜線に出た。風は吹き荒れ視界は10m程。ホワイトアウトナビゲーション技術の練習には恰好のシチュエーションであった。今度はコンパスに頼り過ぎ、地形やトレースをあまり考えていないことを指摘する。劔御前小屋から一気に雷鳥沢を下ると野営場には50張ほどのテントで溢れかえっていた。
5月5日(土)雷鳥沢野営場BC2〜雄山〜別山〜雷鳥沢野営場BC2〜 晴れ
雷鳥沢野営場BC205:00~07:15一の越山荘07:25〜08:00雄山08:10〜10:30別山11:00〜12:00雷鳥沢野営場BC2〜14:00室堂
朝から最高に晴れていた。宝迫は体調不良のためテントキーパーとする。一の越山荘からメットを着用させ、アイゼンはザクザクと決まり頂上まで一気に上がる。稜線上は危ない所は特になかったがとにもかくにも人が多く、トラバースのすれ違いは巻き添えが怖かったため先に譲らせた。全員よく歩けており、別山で写真をとりBC2に帰幕し撤収する。室堂までは合宿を通して体力不足は明らかだったので、搬送訓練やラッセルをかねて3往復する。富山から近日中に帰京出来るバスがなく新幹線で帰京した。
総括
現状把握に関して、十分把握出来る充実した山行であったように思う。また、それに対し私の予想は大きく外れてはおらず彼らの力に対して程よい雪上訓練、課題、そして悪天候の経験をすることが出来たと思う。しかし、気がかりなのはやはり体力不足であって今後、常に体力強化は念頭に置いておかなければならないと感じた。リーダーシップ・メンバーシップに関して、これも少し前進したように思う。テント内や反省会中も頻繁に意見交換をしている姿も見受けられた。登攀技術向上に関してはこれからの復習次第であろう。全員センスは悪くないと感じている。これからもっと入出力を繰り返せる個人山行を行っていければ自ずと成果は出てくると期待できる。ともあれこの山行をきっかけに山を登る楽しさを感じさせることが出来たのであれば幸いである。また、後輩の訓練に尽力してくださったOBに感謝したい。
報告 山浦祥吾