2月5日 八ヶ岳 赤岳登攀

2月5日 アイスクライミングの練習~南沢小滝の裏で記念撮影

山行報告書

日本大学山岳部

目的 積雪期登攀経験を積む
来年度以降に向けた積雪期登攀ルートの偵察
山域 赤岳 阿弥陀岳
日程 令和2年2月4日(火)~令和2年2月8日(土)
実働5日
メンバー 3年 野上博史
2年 山崎颯太
OB L.賀来素直コーチ、横山コーチ(6日下山)
計4名

行動報告

2月4日(火) 入山日 快晴 気温9℃

西小山駅08:00〜10:32美濃戸口11:13~12:21赤岳山荘〜15:55行者小屋BC

西小山駅に集合し、横山コーチの車に乗せていただき、美濃戸口へと向かう。美濃戸口に到着し、八ヶ岳山荘にご挨拶をした後、準備を整え出発する。ザックが43kgほどの背の高いザックになったが、歩くペースを落とし行者小屋BCへと歩みを進める。行者小屋BCまで少しとなったところで、今回の登攀対象である赤岳と阿弥陀岳が姿を現し、その美しさに心躍る。行者小屋BCに予定より55分ほど遅く到着し、テントを設営した後すぐに食事をとった。

明日の天気は、寒冷前線の影響で午前中から霧が出て、風雪になる予報のため、登攀はせず、南沢小滝においてアイスクライミングを実施することとした。また、日の出である06:30に空模様を確認し、出発することにする。

2月5日(水) 曇り後雪 気温-14℃

行者小屋BC06:40〜07:50南沢小滝~12:25撤収完了〜13:30行者小屋BC

朝起きると行者小屋付近では風は感じられなく、一面の曇り空であった。前日決めた通りに、南沢小滝へ向かう。南沢小滝に到着すると、滝の左側から歩いて上部に上がり、氷壁の左側に1本ロープを垂らした。アイスクライミングが初めての山崎に装備の注意事項や、登り方を指導した後、何本かアイスクライミングを楽しんだ。そして、休憩を挟んだ後、山崎にアイススクリューの打ち方、2点から支点を作成するにあたっての注意事項、アバラコフの作成方法を指導した。最後に数本アイスクライミングを登った後、撤収し行者小屋BCへ帰幕した。

アイスクライミングが初めてであった山崎は、最初ぎこちなく登っていたものの最後の方になるとある程度スムーズに登れていた。明日の天気は西高東低の冬型の気圧配置のため、気温が下がり、風が強い。その為、今日に引き続き南沢小滝においてアイスクライミングを行うこととする。

2月6日(木) 曇り後晴れ 気温-16℃

行者小屋BC06:35〜07:28南沢小滝~14:07撤収完了~15:06行者小屋BC

昨日と同様、南沢小滝へと出発する。南沢小滝に到着すると、氷壁の右側にロープを垂らし、アイスクライミングを行った。今日は途中お湯を沸かしコーヒーを飲みながら、ひたすら登り込んだ。山崎、野上ともに昨日からのアイスクライミングともあり、大分スムーズに登れるようになった。

14:00頃に撤収を完了させ、登山道まで戻った後、とても残念であるがお仕事の都合で帰られる横山コーチとお別れし、野上、山崎、賀来コーチは行者小屋BCへと帰幕した。明日は、冬型の気圧配置が緩み、風が落ち着く予報。その為、赤岳西壁主稜へのアタックを決定する。装備を確認し早々と就寝した。

2月7日(金) 赤岳西壁主稜 快晴 気温-15℃

行者小屋BC04:52〜06:53取り付き~12:17赤岳山頂~13:20行者小屋BC

朝起きると不気味に感じるまでの無音で、空には一つも雲がない。真っ暗な中出発する。文三郎尾根を速すぎるペースで登っていき、賀来コーチから注意される。標高約2650m地点の文三郎尾根から赤岳西壁主稜の取り付きまでのトラバースは、賀来コーチがフリーで60mいっぱいに張り、そこから登攀を開始した。トラバースの際の途中支点、終了点ともにスノーバーでとった。雪質は深いモナカ雪でいやらしく、斜度も急であるため、ロープは張るべきであろう。登攀は、賀来コーチがトップで、野上と山崎がフォローの三角で登る。

1ピッチ目 リード:賀来コーチ
1ピッチ目開始地点に残置の捨て縄があったが、トラバースの終了点から登攀を開始する。序盤の核心のピッチ。チムニーを登り、予定より短く15m程でこのピッチを切る。最終支点はピナクルから取った。事前調査で苦戦するであろうと思っていたピッチであったがスムーズに登る。

2ピッチ目 リード:賀来コーチ
1ピッチ目に引き続き序盤の核心のピッチ。1ピッチの終了点のピナクルから正面に見える岩壁を右から回り込んで登る。1ピッチ目を短めで切ったので、このピッチは長めの40m程ロープを出す。途中本来の1ピッチ目終了点であるところに、残置の捨て縄がかかっていた。2ピッチ目は屈曲が大きくなるのでアルパインヌンチャクを伸ばして使うなど対策が必要だ。終了点にはボルトがある。

3ピッチ目 リード: 賀来コーチ
斜度が緩い雪稜を登攀する。スノーバーが入りそうにないほどの積雪状況であり、途中支点はなしで25m程ロープを出す。終了点の支点はピナクルからとった。

4ピッチ目 リード:賀来コーチ
3ピッチ目と同様に斜度が緩い雪稜を登攀する。途中支点には残置のハーケンがある。50m程ロープを出す。終了点はボルトが1つ打ってある。4ピッチ目終了点から5ピッチ目の取り付きまでは、ロープを一度束ね、フリーで50m程歩く。このフリーで歩く区間は一定のアイゼンワークが身についているなら、問題ない。5ピッチ目取り付きにはボルトが打ってあり、分かりやすい。

5ピッチ目 リード: 賀来コーチ
5ピッチ目のビレイポイントから左側に懸垂下降用と思われるスリングが垂れているが、登攀ルートは直上するのが正しい。傾斜が急な岩場登り。30m程ロープを出す。上部の核心のピッチであるが、スムーズに登攀する。

6ピッチ目 リード:賀来コーチ
前半は文三郎尾根側に切れ落ちた雪稜の登攀である。後半はチムニー状の5m程の岩場を登攀する。終了点にはボルトがある。50m程ロープを出した。後半のチムニー状の岩場の前でピッチを切ることも可能だ。

7ピッチ目 リード:賀来コーチ
再び傾斜が緩くなり、35m程の雪稜を登攀する。終了点の支点はピナクルからとる。ロープを束ね、ザックに収めた後、20m程雪稜を歩き、一般登山道に合流し赤岳山頂へ達する。

赤岳頂上山荘で休憩した後、赤岳の山頂に立つ。赤岳山頂からは澄み渡る青空と北アルプス、中央アルプス、南アルプス、富士山と全てが見渡せる絶景だ。記念撮影を終え、文三郎尾根を下降する。赤岳の下降も急なため注意が必要だ。下降中は右手に登攀した西壁主稜と左手に明日行く予定の、阿弥陀岳北稜が鮮明に見え、登攀するイメージを膨らましていた。

行者小屋BCに到着すると、みんなで握手を交わし、喜びを分かち合った。夕飯前には賀来コーチがチーズフォンデュを振舞って下さり、最高に美味しかった。明日は、気圧の谷が通過する為、稜線上で風が強まる予報であった。その為、残念であるが阿弥陀岳北稜の登攀は諦めて下山することにする。

2月8日(土) 下山日 曇り 気温-10℃

行者小屋BC07:40〜09:40赤岳山荘~10:54美濃戸口

テントを撤収し美濃戸口へ下山する。入山時と変わらず、背の高いザックとなり重かったが特に問題なく下山していく。途中、土曜日ともあって多くの登山者とすれ違った。下山した後、美濃戸口からバスで茅野駅へと向かい、大谷監督と待ち合わせ天幕懇親会へと向かう。明日からは2月合宿(蓼科山~赤岳縦走)である。気合を入れなおす。

ふりかえって

今回は私個人としても初めての積雪期の登攀となった。そこには、無積雪期にはない制約、主に気象条件との闘いがあった。また、オーバー手袋を付けての登攀と新しく経験したことも多くある。この経験を部に還元できるようにしたい。赤岳西壁主稜は一度1パーティーに追い抜かれたのみで、終始自分たちのペースで登攀することができた。また、今回はフォローでの登攀であった。次回登攀する際はトップで行きたいと思う。

行者小屋から見える八ヶ岳の稜線には魅せられるものがある。見ていて飽きることはない。次はどこに登攀しに行こうか。2年生の山崎もよく頑張って山行をやり切ってくれた。今後の成長を大いに期待する最後にお忙しいなか本山行に参加しご指導を頂いた、賀来コーチと横山コーチに心よりお礼申しあげます。誠にありがとうございました。

(報告者:野上博史)

2月4日 美濃戸口からの林道は油断禁物。アイゼンを着用します。

美濃戸山荘付近は雪が多くなってきます

行者小屋BCに到着

2月5日 悪天のため南沢小滝でアイスクライミング訓練をします

トップロープを設置する野上部員

アイスクライミング初体験の山崎部員

野上部員が支点構築の指導をします

南沢小滝の裏で記念撮影

2月6日 同じようにアイスクライミングからBCに帰ると夕焼けと横岳が

明日は天気に恵まれそうです

2月7日 赤岳主稜を登る準備をします

文三郎尾根から、赤岳主稜取りつきへのトラバース

1ピッチ目のチムニー

赤岳主稜後半戦、上部岩壁に取り掛かります

赤岳主稜終了点、ザイルをまとめて山頂へ向かいます

赤岳山頂でパシャリ 風がありますが良い天気です

文三郎尾根から慎重に下降します

改めて主稜取り付き点を確認

BC到着 お疲れ様でした

ごちそうの話をしながらくつろぎます ごちそうとは…

出来上がりました、チーズフォンデュです!

味のほうはご愛嬌です

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