2月9日 入山1日目、最初のピークである蓼科山に到着する
2019年度 2月合宿報告書
日本大学山岳部
目的 | 積雪期縦走経験を積む、リーダーシップ・メンバーシップの向上 |
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山域 | 八ヶ岳 蓼科山~美濃戸口 |
期間 | 令和2年2月9日(日)~令和2年2月14日(金) 実働5日、停滞1日 |
メンバー | 4年 CL福島端流、白土朝香 3年 氏神拓真(10日下山)、原島千尋(10日下山)、野上博史 2年 山崎颯太 1年 小口巧(10日下山)、柴田亮 計8名 |
行動報告
2月9日(日)入山日 霧時々晴れ -15℃ 積雪115cm
女神茶屋06:15~10:17蓼科山~13:05大河原峠CS1
早朝、白樺湖畔の啄木鳥山荘から車で女神茶屋へと移動する。登山口に到着してすぐ、1年生の米山から体調が優れないと報告を受ける。前日から調子が悪く、吐き気があるということなので、残念だが合宿には参加させないことにした。米山が不参加となったので、共同装備を減らす作業を急遽行って出発をする。
出発時は雪が降り続いていたが、2時間程で霧に変わり、標高が上がるごとに晴れてきた。積雪は70cm程で他の登山者によるトレースがくっきりとあった。2回目の一本時に、4年生の川村が首の痛みを訴える。首の状態から今後の行動は厳しいと考え、急遽大谷監督と4年生の田邊の3名で途中下山してもらうことにした。再度人数が減ったので、共同装備を減らして急ぎ再分配する。その後、メンバーが8名となったが、蓼科山の登りを順調に登っていく。山頂に到着後、写真撮影を行う。他の登山者は4、5人程いた。
山頂から蓼科山荘までの下りは、ルートファインディングに注意しながら進む。この頃から天気はだいぶ回復し晴れわたってきた。山荘から大河原峠までは緩やかな下りが続き、計画よりも早く本日の幕営地である大河原峠CS1に到着した。時間があったのでテント設営後に1年生のロープワーク訓練を行う。1年生の小口は下りの際に膝の痛みを訴えていたので、明日は装備の量を減らしていくことにする。
2月10日(月) 晴れのち風雪 -17℃ 積雪105cm
大河原峠CS1 05:00~05:45双子山~06:30双子池ヒュッテ~09:27北横岳~09:45北横岳ヒュッテ~11:00雨池峠CS2
朝起きると星空と月の光が夜明け前に輝いていた。凍える寒さの中で撤収を行い、時間通りにCS1を出発する。昨日と同様に、出発してすぐに先行トレースがあり、順調なペースで登っていく。その後も計画より早いペースで進んでいく。北横岳の登りでは、1年が頑張って登っている。頂上に着いた頃には雲が出始めており、天気が悪化し始めてきていた。北横岳ヒュッテを過ぎてからは、多くの登山者とすれ違った。
雨池峠CS2に当初の計画予定よりもだいぶ早く到着したため、この日中に氏神、原島、小口の途中下山組3名をロープウェイで下山させることにした。途中下山組に持って帰らせる装備を割り振り、短い間だったが雨池峠CS2で別れる。入山2日目で早くも5名だけとなってしまい、寂しい気もするが、残った部員は皆今のところ元気いっぱいなので、まあ大丈夫だろう。夕方には天気が回復して星が見える。明日に備えて夕食を取り就寝する。
2月11日(火)快晴 -19℃ 積雪100cm
雨池峠CS2 05:00~05:55縞枯山~06:30茶臼山~07:30麦草峠~09:30高見石小屋~11:15中山峠~11:30黒百合ヒュッテCS3
この日は今合宿一番の晴天だ。月下の中、撤収を行い出発する。縞枯山に到着すると、遠くの北アルプスが朝焼けに染まっていくのが綺麗に見える。茶臼山で日の出を迎えるとその幻想的な美しい光景に皆感動した。この日も行動計画より早いペースで、淡々とアイゼンをきめながら進んでいく。1年生の柴田は、時々重たいザックに苦戦しているようだが、頑張ってついてきている。予定より早く、昼頃に黒百合ヒュッテCS3に到着する。2年生の山崎が靴擦れの痛みを訴えてきたので、患部を確認すると出血があった。清潔にして消毒を済ませる。今合宿は、2月とは思えないほど天気が良く、気温が高い。
2月12日(水) 晴れのち曇り -9℃ 積雪100cm
黒百合ヒュッテCS3 05:30~06:45東天狗岳~07:30根石岳~08:30夏沢峠~09:45硫黄岳~11:20赤岳鉱泉~12:20行者小屋BC
早朝、東天狗岳の登りを日の出前に通過するのは危険と考えたので、出発を30分遅らせることにした。森林限界手前で目出帽とヘルメットを着用する。風が強いが、気温はそこまで低くない。頂上に着くと、ちょうど日の出が顔を出していた。まさに絶景だ。下りでは鎖や梯子があり、慎重に通過する。根石岳までは風がとても強く、身体が煽られる。
硫黄岳の登りに入ると、やはり風が強いが、気温が高いので逆に暑く感じるほどだ。晴れ渡る硫黄岳に登頂する。気温が高いので、赤岩の頭では雪崩に気を付けながら通過する。とてもじゃないが、2月の気温ではないくらい暑い。 行者小屋BCに到着すると、他の登山者が多くおり、その中には他大大学山岳部の学生もいた。明日は悪天候のため、停滞することにした。
2月13日(木)停滞 風雪時々雨のち曇り -2℃ 積雪105cm
行者小屋BC 06:00~(停滞)~12:30~(BC付近で訓練)~15:30訓練終了
朝から風が強く、雨や雪が降ったりやんだりの荒れた天気である。午前中をテント内で過ごした後、昼頃から天気が回復してきたので、BC付近で搬送訓練とロープワークの確保訓練を行った。1年生の柴田は一通り出来るようになっていた。訓練終了後、夕食、反省会、スペシャル食を食べ、明日の周遊(赤岩の頭~赤岳)アタックに備え、就寝した。
2月14日(金)下山日 晴れ時々曇り -8℃ 積雪105cm
行者小屋BC 04:00~04:40赤岳鉱泉~06:20赤岩の頭~07:00硫黄岳~08:15横岳~09:30地蔵の頭~09:55赤岳~11:00行者小屋BC 12:15~14:15美濃戸山荘~15:15美濃戸口
昼前から雲が出てくる予報だったため、出発を1時間早めることにした。出発して早々にルートを間違えて地蔵尾根に入ってしまう。すぐに気が付けたから良かったものの、無駄な時間と体力を消費してしまった。赤岳鉱泉からの登りは順調なペースで進み、日の出頃に赤岩の頭に到着する。これから周遊する稜線の山々が朝日に照らされていく様はとても美しい。このような景色を見る度に山をやってきて良かったと思える。
硫黄岳に到着するとそれほど風は強くない。その後も良いペースで進んでいく。横岳の頂上手前の鎖場がこの日の核心だった。鎖にFIXしながら慎重に通過する。途中、鎖がない梯子にスリングを伸ばして固定する。今回の周遊ではロープは一度も出さなかったが、奥ノ院~地蔵の頭間では、人数が多い場合や雪質によっては必要と感じるところが何箇所かあった。横岳頂上で他大学のワンダーフォーゲル部とすれ違った。他の登山者はおらず、比較的スムーズに通過することができた。気温も暖かく、風も大して強くなかった。
予定よりも早く赤岳の頂上に到着する。富士山が綺麗に見え、圧巻の景色に興奮を隠せない。写真撮影を行い、文三郎尾根から下降する。途中、赤岳主稜西壁の取り付きの位置を野上、山崎が1年生の柴田に教えていた。是非とも今後チャレンジしてもらいたい。あっという間に行者小屋BCに到着する。到着時間が午前中だったことと、皆まだまだ動けるということだったので、そのまま撤収して美濃戸口に下山することにした。すぐに撤収を行い、3時間程かけて美濃戸口に到着して2月合宿を終えた。
振り返って
今回の合宿は、序盤にメンバーの調整があり、装備の割り振りをし直すなどの出来事があったが、残ったメンバーで上手く合宿をやり抜くことができた。朝の撤収が遅れたことはなく、冬山合宿の反省を改善できていたが、ルートファインディングのミスや地形概念の把握などでまだ細かい反省点はある。1年生の柴田は重たい装備を持ちながら最後まで頑張って歩き抜いてくれた。合宿期間を通して好天に恵まれたということも大きい。途中から5人と人数は少なかったが、今回の経験を後輩たちにも伝えていくことが重要である。本合宿後、今年度最後の春山合宿に向けて準備とトレーニングを継続してやっていきたい。
(報告者:福島端流)
2月合宿に寄せて
今年の2月合宿も結果的に八ヶ岳に入山することになった。毎年同じ山域でほぼ同ルートを採用しており“また今年もか”と思う部分も少なくないが、それでも肯定的に捉えている。昨年は春山合宿に北海道中央高地全山縦走と言う計画を控えていたので、歩荷力やメンタル度合をはかると言う意味合いもあり蓼科山~編笠山までのほぼ完全な全山縦走を行った。
今回は少し短い蓼科山~赤岳までの計画としたがメンバー構成上妥当な計画だと考えている。八ヶ岳は位置的に天候が比較的安定していること、遮る山も周りになく耐寒訓練も経験できること。トレースが無ければ北部はルートファインディングと若干のラッセルが要求され、南部は行者小屋や鉱泉にBCを設ければ、天候を見極めつつ良い状態で行動ができる。特に赤岳核心部はアイゼンワークやザイルを使ったfix通過などが、サブザック行動で余裕をもって行うことができる。
昨年末の冬山合宿は中崎尾根から槍ヶ岳をピストンで登った。出来れば縦走形式で普段の力を発揮したいところだったが、授業日程の関係、メンバー構成、南アの台風の影響等々…を検討した結果、槍ヶ岳になった。今年も2月に八ヶ岳に入山したのも、冬山合宿では出来なかった分をしっかり縦走形式の合宿で仕上げることを目標としたからだ。重荷を背負って歩く、次の天幕地で設営する、また歩くそして設営する。積雪期の縦走に必要なフィジカルと生活技術を養える学生登山のエッセンスが詰まっていると考えている。
今年は例年に比較して天候が厳しくなることもなく、期間全般を通して穏やかだったようであるが、2月の八ヶ岳縦走は決算合宿である春山合宿を前に最終的なチェックと確認を行うことができる。どの山域であれ長期縦走形式の春山合宿を年度目標に据えている当部にとって、やはりこの時期にとって最適な山域ということになるのではないか。
(監督:大谷直弘)