別山頂上にて~雪渓訓練のため内蔵助カールへ向かう
山行報告書
日本大学山岳部
目的 | 剱岳の登頂、雪上技術、生活技術の向上 |
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山域 | 北アルプス 剱岳、内蔵助カール |
日程 | 令和元年8月7日(水)~令和元年8月15日(木) 移動1日、実働8日 |
メンバー | 4年 L新保裕也、白土朝香、田邊カレン 3年 氏神拓真、野上博史、原島千尋、山田哲平 2年 川下景正、川田真人、喜多嶋拓海、山崎颯太 1年 相澤佳霖、小口巧、柴田亮、柳元希、米山未羽 OB 賀来素直コーチ、國谷良介コーチ 計18名 |
行動報告
8月7日(水)移動日
新宿駅(高速バス)22:25, 22:40, 22:50~05:20着, 05:15着, 05:50着 富山駅
部室に集合し新宿駅に移動、3つの高速バスに分乗し出発した。予定通り出発、到着した。
8月8日(木)入山日 晴れ
富山駅(電車)07:04~08:16立山駅(ケーブルカー)08:40~08:47美女平(バス)09:00~10:00室堂10:20~11:20雷鳥沢キャンプ場~13:40剱御前小舎~14:40剣沢BC
計画通り富山駅を出発し、遅れることなく室堂に到着した。先乗りして剣岳周辺で登攀をしていた賀来・國谷コーチ、野上、喜多嶋、山崎の5人に室堂まで迎えに来てもらい、共同装備を振り分け直し出発する。雷鳥沢で減った分の水を補充し、剱御前小舎を目指し登り始める。登り始めて1時間ほどで小口が遅れ始め、反応も鈍くなっている。熱中症が疑われたため、スポーツドリンクを飲ませ、股や首を水筒や濡れタオルで冷やし荷物を減らした。
しばらく休憩し、ゆっくり登らせるために田邊と山田を一緒に残し、本隊は出発する。小舎の手前で小口達は本隊に追いついた。小口は回復している様子である。川田がバテ気味なことが気になるが、なかなか良いペースで進み剣沢BCに到着した。BCで荷物を整理した際、スノーバーを1本部室に忘れてきたことが判明した。
8月9日(金)雪上訓練 晴れ 10℃
剣沢BC 04:50~06:30別山~07:25内蔵助山荘07:45~08:10内蔵助カール12:30~15:30剣沢BC
内蔵助カールで雪訓を行うため出発する。天気も良かったため計画通り別山に寄って写真を撮ってから向かうことにする。内蔵助山荘で雪訓の装備を装着したが、1年生の準備は遅い。2年生の指導の声も少なく出発が遅れた。
内蔵助カールは昨年より雪がある。上部を確認し落石が少なそうな場所で、FIX訓練から開始する。2年生がリード、ビレイを行い、1年生が通過を行った。2年生同士の話し合いが少なく、あまりスムーズにロープを設置できていない。1年生の通過もインクノットができなかったり、掛けかえが遅かったりしスムーズとは言えない。2時間で2~3ピッチしか張れなかった。続いて歩行訓練を行う。方向転換に手間取る1年生がいた。1時間ほど行った後、滑落停止訓練に移る。雪上で初めて行う者もおり、完成度にバラつきがでている。1時間もしないうちに時間になり、内蔵助カールから撤収した。
別山の手前で相澤が高度障害と見られる症状を訴える。ふらつきがひどいため空荷にし、新保・山田が付き添ってゆっくりBCへ向かうことにする。本隊は15:30頃BCに到着し、食事や天気図の用意をした。相澤たちは16時過ぎにBCに到着。相澤は依然頭痛や気分の悪さがあるようだ。また、柴田も頭痛を訴える。
8月10日(土)雪上訓練 晴れ 10℃
剣沢BC 05:50~06:20剣山荘付近の雪渓11:55~12:20剣沢BC
相澤・柴田は症状が治まらないので賀来コーチに付き添ってもらいBCに残す。1年生に疲れが見えるため、起床を1時間遅らせ、午前は雪訓で午後はレストとするため剣山荘への道中にある雪渓で訓練を行うことにした。完成度が低かったFIX訓練を重点的に行う。4時間ほど行うと、2年生は随分スムーズにロープを設置することができるようになっている。
1年生は稀にミスをする者がおり、安心はできない。残りの時間は1年生のロープワーク訓練を行う。あまり大きな雪渓ではないため、クライマーの転落を想定した訓練は行えないため、ロープワークの手順の確認を中心に行った。手順はそれなりに覚えているようだが、雪上で行う初めての支点構築には手こずっている様子だ。昼前に撤収しBCに帰幕。相澤は少し回復、柴田は復活していた。午後はゆっくりと過ごした。午後は次々とテントが増えていき、夕方にはテントサイトを埋め尽くす程の数になっていた。
8月11日(日)雪上訓練 晴れのち霧 9℃
剣沢BC 04:50~内蔵助山荘07:40~07:55内蔵助カール~10:40内蔵助山荘~13:20剣沢BC~13:45剣山荘付近の雪渓~15:40剣沢BC
相澤は症状が治まらないので賀来コーチに付き添ってもらいBCに残す。別山は巻き内蔵助山荘に直行する。午後から雷の予報だったため、滑落停止とロープワークを行うことにする。滑落停止では、米山は緩斜面ではできるようになった様子で、それ以外の1年生は確実に止められるようになっている。ロープワークはボディビレイでクライマーの転落を止める練習を重点的に行う。昼前に撤収しBCに帰幕したが、BC周辺は天気が持ちそうなので昨日の雪訓地点の雪渓に移動し、ロープワークの手順確認を行った。相澤はBC付近で歩行とFIXは訓練を行った。16時頃から霧に覆われ、時折小雨も降った。
8月12日(月)剣岳アタック 晴れ 11℃
先発隊(喜多嶋-氏神-小口-山田-白土-川田-米山-田邊-國谷C)
剱沢BC 03:55〜04:35剣山荘〜05:08一服剱〜06:19前剱〜08:49剱岳〜10:30前剱〜12:25一服剱〜12:55剣山荘〜13:32剱沢BC
夜明け前にヘルメットを着用し出発する。BCから別山尾根を眺めると既にちらほらと登山者のヘッドランプの明かりがあり混雑が心配だ。剣山荘手前で早速トップ喜多嶋がルーファイミスをしそうになりもたつく。剣山荘に到着後、例年通りハーネスを着用し、一服剱手前の鎖場から鎖にセルフビレイを取りながら進んで行く。1年生は掛けかえ等問題なくできているが米山の声が小さすぎることが気になった。
前剱過ぎの横ハシゴでは喜多嶋・氏神がロープを設置するが少々時間がかかる。1年生2人は苦戦すること無く通過し順調に進む。カニのタテバイでは10分ほど前の登山者の通過を待機する。タテバイ通過後米山が遅れ始めるがよく頑張っていた。山頂に到着し、記念撮影や休憩をした後下山を開始する。途中、ヨコバイ過ぎの梯子と平蔵の頭の登り返しにロープを設置した。今度はスムーズである。他の登山者に道を譲りながら登りと同様鎖にセルフビレイを取り慎重に進む。問題無く帰幕すると賀来コーチからなんと「タピオカいちごミルクティー」とコーヒーゼリーの差し入れを頂き、一同大はしゃぎであった。
(先発隊報告者:田邊カレン)
後発隊(山崎-野上-柳-川下-柴田-原島-新保)
剱沢BC 04:40〜05:10剣山荘~05:35一服剱〜06:32前剱〜09:50剱岳〜11:35前剱〜13:10一服剱〜13:40剣山荘〜14:20剱沢BC
先発隊から30分空けて出発する。テントでは平気そうだったため、剣山荘までは相澤も一緒だったが、ふらつきがあり気分も悪いようなので残念だが賀来コーチと一緒にBCへ戻ってもらう。
一服剱の手前から鎖が出始める。鎖にセルフビレイしながら通過していく。1年生は手間取ることなく通過ができている。前剱過ぎの横ハシゴにはパワーロープを張った。野上・山崎に張ってもらったが、スムーズに設置してくれた。タテバイでは15分ほど待つ。1年生はへばることなく登ってくれ、剣岳の頂上に到着した。休憩後下山開始。ヨコバイで20分ほど順番待ちをする。ヨコバイ過ぎのハシゴ、平蔵の頭のトラバースにはパワーロープを張った。ここも2人は手早く設置することができていた。1年生はしっかり歩けており、順調に下ってBCに到着できた。帰幕後、賀来コーチから頂いたタピオカミルクティーに群がり、あっという間に吸い尽くした。
8月13日(火)雪上訓練 晴れ 10℃
剣沢BC 04:50~内蔵助山荘07:40~08:05内蔵助カール~12:30内蔵助山荘~14:50剣沢BC
内蔵助カールで雪上訓練を行うため出発する。今日は回復傾向にある相澤も一緒である。順調に内蔵助カールに到着し、訓練を開始する。しかし相澤はやはりしんどいようで別メニューで休み休み訓練を行うことにする。滑落停止から訓練を開始する。1年男子は確実に停止できるようになっているため、歩行訓練に移る。
米山のみ滑落停止を続けることにしたが、少しすると訓練中にピッケルから手を放してしまい額にピッケルがぶつかってしまった。若干の腫れと頭痛があるため、コーチに付き添ってもらい内蔵助山荘でしばらく様子を見てもらうことにする。1年男子は歩行訓練後ロープワーク、FIX訓練を行い、完成度を高めている。相澤は歩行訓練と滑落停止を行うことができた。滑落停止は形になっている。訓練を終え、内蔵助山荘に移動する。山荘にて米山たちと合流した。米山は回復したようだ。ふらつきがある相澤は空荷にし、BCへ帰幕した。
8月14日(水)雪上訓練 晴れ 9℃
剣沢BC 04:50~内蔵助山荘07:40~08:05内蔵助カール~13:00内蔵助山荘~15:10剣沢BC
明日の午前中まで好天が続く予報のため、今日も雪上訓練を行うことにする。内蔵助カールを目指し出発したが、剱御前小舎で相澤が気分の悪さを訴えたのでコーチに付き添ってもらいBCへ戻す。今日は、1年男子は歩行、米山は昨日の続きの滑落停止から訓練を開始する。1年男子はしっかり歩けている印象を受けた。米山は急傾斜地でも滑落停止ができるようになった。滑落停止の後は歩行、ロープワークの順に行った。歩行は戸惑うことなく方向転換ができており、ロープワークも問題なくクライマーの転落を止められている。
1年男子は歩行訓練終了後、FIX訓練に移った。2年生が中心になり、1年生も通過だけでなくFIX工作の練習も行うことができた。1年生はやることが一気に増え混乱したのかミスが目立つのが気になるところではある。しかし、全体的にかなりスムーズにロープを張れるようになっており成長を感じる。昨日より30分長く訓練を行いBCに帰幕した。
8月15日(木)下山日 晴れ 13℃
剣沢BC05:05~06:30剱御前小舎~08:30雷鳥沢キャンプ場~09:30室堂
5時発の予定でテント撤収・パッキングをして間に合うことができたが、米山がザックを背負うのに手間取り結局出発が遅れる。相澤は大事をとってほとんど空荷にした。剱御前小舎まで順調に登る。下り始めてからの米山のふらつきがひどいため、荷物を少し減らす。その後は順調に雷鳥沢キャンプ場に到着し、休憩の後出発。徐々に風が強くなってくる中、室堂に到着した。風呂に入り全員で富山駅まで移動後解散した。
ふりかえって
例年より天気に恵まれたため、みっちりと雪上訓練を行い積雪期登山に向け技術の完成度を高めることができた。2、3年生が部会や準備会でロープワークや歩行の指導をしっかり行ってくれた賜物だと思う。
技術は向上したが、1年生は返事・反応が未だ悪く、よりリスクが増える積雪期登山に安心して連れていけるのか不安が残る。また、2年生の指導・確認不足も不安要素だ。2年生がしっかり指導してくれないと1年生はいつまで経っても成長できない。1,2年生には気持ちを入れ替えて次回合宿に望んでもらいたい。
3年生は全体をよく見ているし、また1,2年生個々人のフォローもきめ細かくできていた。
2年生をどこまで成長させられるかが今後重要になりそうだ。
(報告者: 新保裕也)