12月29日 快晴の下、槍ヶ岳頂上に立つ
2019年度 冬山合宿報告書
日本大学山岳部
目的 | 槍ヶ岳の登頂 リーダーシップ・メンバーシップの向上 |
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山域 | 北アルプス 槍ヶ岳 中崎尾根 |
日程 | 令和元年12月26日(木)~令和元年12月30日(月) 移動1日、実働4日 |
メンバー | 4年 CL福島端流、白土朝香、田邊カレン 3年 氏神拓真、野上博史、原島千尋、村上洋道 2年 川下景正、喜多嶋拓海、山崎颯太 1年 柴田亮、中野聡士 OB 國谷良介コーチ 計12名+OB1名 |
行動報告
12月26日(木)移動日 曇りのち雨 2℃
新宿駅(高速バス)11:55~15:00松本駅17:00~18:50新穂高温泉
バスタ新宿から松本駅まで高速バスで移動する。松本で早めの夕食をとり、新穂高温泉まではマイクロバスで移動する。到着後、登山指導センター前にテントを張って就寝する。ここで、V8テントのフライシートを間違って持ってきてしまったことが判明する。テントチェックの際に一緒に間違えて入れてしまったようだ。明日穂高平にデポすることにする。夜中から雨が降り続いており、初日からテントが濡れてしまう。
12月27日(金)入山日 風雪 0℃ 積雪70cm
新穂高温泉05:00~07:00穂高平~08:30白出沢出合~12:00滝谷出合~14:50槍平CS
早朝になっても雨はやまない。新穂高温泉から入山し、2時間程で穂高平に到着する。気が付くと雨は雪に変わっていた。穂高平小屋でフライシートをデポする。白出沢出合までの林道は順調なペースで進むが、登山道に入ってからは、枝をよけたり穴にはまったりと隊のペースが落ちる。標高が上がるにつれて風雪も強まってきた。チビ谷と滝谷出合では、雪崩に注意を払いながら迅速に通過する。疲労からか、滝谷出合からの登りで1年生が遅れ始める。登りの途中、後ろから来た1名の登山者と合流する。お話ししたところ、明日同じ中崎尾根に登るという。
計画予定よりもだいぶ遅れて槍平CSに到着し、整地をして風防を作成する。積雪は腰下ほどである。中崎尾根側からの雪崩を避けるため、小屋の北側にテントを立てる。先程合流した登山者を含めて3名程が避難小屋に泊まっていた。入山日から長時間行動になってしまい、隊員にも疲労の様子が窺がえる。
12月28日(土)快晴 -12℃ 積雪90cm
槍平CS 06:36~10:45奥丸山分岐~11:15 P2388手前AC 11:45(偵察隊)~13:15ルート工作地点取り付き~15:00 P2388手前AC
早朝撤収を行うが、テントポールとテント本体が凍ってしまい1年生のパッキングにも大幅な時間がかかってしまう。また、ビーコンチェックの際、2年山崎のビーコンが発信モードにならないという故障が見つかる。大谷監督とリーダー会で話し合った結果、山崎と國谷コーチのビーコンを交換してそのまま行動することにする。そうこうしているうちに出発が1時間半も遅れてしまう。
中崎尾根の取り付きには、赤布が何箇所かあったためルートを迷わずに済んだ。この日は、昨日と打って変わって快晴で、遠くに目標の槍ヶ岳山頂が見える。中崎尾根の登りでは、またしても1、2年生が雪にはまったり、ザックを背負うのに時間がかかったりとペースが上がらない。膝下から腰までのラッセルが続く。奥丸山分岐手前のトラバースでは雪崩に気を付けながら迅速に通過する。中崎尾根の稜線に上がって少し進んだところで、一昨年と同じP2388手前の平らな雪面にアタックキャンプを設営する。ここで2年喜多嶋が腰痛を訴えたため、湿布を貼って安静にさせる。
ルート工作のリミットが過ぎていたので工作はできないが、工作地点の取り付きまで福島、野上、氏神、國谷コーチの4名で偵察しに行くことにする。ACから途中赤旗を立てていきながら2時間程で取り付き地点に到着する。上部までどのようにロープを張るのか観察しながら話し合う。帰りは行きのトレースのおかげもあり1時間ほどでACに到着する。
当初の計画では、千丈乗越までルート工作をした状態でしかアタックしないと決めていた。ただ、31日から冬型の気圧配置による悪天候が長く続くという予報があり、明日の29日が今合宿で最も登頂に適した天気であると考えた。悩み抜いた結果、当初の計画を変更してルート工作を行いながら明日アタックすることにした。それに伴って千丈乗越と槍ヶ岳山荘通過時のリミットを設定する。この日も私たちの他に3パーティーほど中崎尾根で天幕していた。明日のアタックに備えて夕食後、すぐに就寝する。
12月29日(日)アタック日 晴れのち曇り -6℃ 積雪120cm
P2388手前AC 04:00(工作隊),04:30(本隊)~05:00(工作隊),06:00(本隊)ルート工作地点取り付き~08:15千丈乗越~09:15(工作隊),09:40(本隊)槍ヶ岳山荘~12:00槍ヶ岳~14:00槍ヶ岳山荘~15:00千丈乗越(回収隊)~16:20(ロープ回収終了)~16:40(本隊),17:15(回収隊)P2388手前AC
早朝、星空が見えるほど快晴のアタック日和だ。朝になっても喜多嶋の腰痛は治らないため、國谷コーチと共にステイしてもらうことにした。とても残念である。工作隊の福島、氏神が本隊よりも30分早く出発する。登っている途中、後ろから多くのヘッドライトが見える。私たち以外にも多くの登山者が槍ヶ岳登頂を目指しているようだ。昨日のトレースがしっかりと残っていたため、1時間程で赤旗を立てていた取り付き地点に到着する。ここでワカンをデポし、アイゼンに付け替える。日はまだ明けず暗いが、早速1ピッチ目のFIXロープを福島が張る。1ピッチ目を張り終えるところでちょうど本隊が取り付き地点に到着する。
後ろからも他の登山者が来ており、同じルートをなりふり構わず登ってくるため、我々のFIX通過に時間がかかってしまった。1ピッチ目の通過中に、氏神が2ピッチ目のナイフリッジにFIXロープを張る。その後、1ピッチ目のロープを回収し、全員が無事に千丈乗越まで通過する。行動計画よりも1時間ほど早く通過することができた。千丈乗越から先は、西鎌尾根のルート状況と大槍の工作のため、福島と村上で先行しながら進む。雪質的に西鎌尾根はロープを出さなくても通過可能と判断する。
槍ヶ岳山荘に到着するとすでに20名程の登山者たちが大槍に登ろうとしていた。何ともタイミングが悪い。福島と村上の2人で先にロープをセットしに出発する。案の定、上り下りする他の登山者を待つことになり、通過とロープの設置にかなりの時間がかかってしまう。梯子と鎖が出ていない箇所にスリングやロープを合計5箇所に設置する。慎重に通過しながら、山荘から2時間半かかるも念願の山頂に登頂する。360度の絶景に皆笑顔が溢れる。写真撮影を行い下降開始する。またしても1パーティーの通過を待ったことで時間がかかってしまった。下降も福島と村上でロープを回収していく。山荘に戻ってきた時にはすっかり行動時間に遅れが生じてしまっていた。
山荘から西鎌尾根の下りでは、アイゼン歩行に気を付けながら進んでいく。雪質と斜面の状態から、飛騨沢側の雪渓斜面からそのまま中崎尾根に下降できると判断する。残置していたナイフリッジのロープは福島、野上、山崎の3名で回収し、他のメンバーは千丈乗越からではなく、飛騨沢側の雪渓斜面から下降させることにした。全員での懸垂下降は大幅な時間がかかることが予想されたこともこの決断に至った理由である。ロープ回収後、懸垂下降で取り付き地点に下り、デポしていたワカンも回収する。日が暮れる直前の17時頃にACに到着する。テントで待っていた國谷コーチと喜多嶋からとても美味しいお汁粉を御馳走していただいた。とても長い1日であったが、達成感に満ち溢れていた。皆寝不足気味であったため、明日の出発を1時間遅らせることにした。
12月30日(月)下山日 雪のち雨 -4℃ 積雪130cm
P2388手前AC 06:10~06:50奥丸山分岐~07:45槍平~08:50滝谷出合~10:08白出沢出合~11:00穂高平~11:50新穂高温泉
朝起きると雪が降っていた。出発してすぐの奥丸山分岐で、トラバースルートに雪崩の危険がないか先行確認する。斜面の状態とトレースで踏み固められていたので通過可能と判断する。その後は順調なペースで中崎尾根を下降し槍平に到着する。槍平から先の滝谷出合とチビ谷でも、雪崩に細心の注意を払いながら迅速に通過する。白出沢出合でアイゼンを外し、そこから1時間半ほどで新穂高温泉に到着する。すっかり雪は雨に変わって全身ずぶ濡れだが、冷えたからだに温泉は格別だった。
振り返って
今回の冬山合宿では、目標としていた槍ヶ岳の登頂を達成することができ素直に嬉しい。だが、2年喜多嶋が腰痛のため登頂することができなかったのは、隊としても、経験値的にも非常に勿体なかった。また、時間遅れやパッキングの遅さなどの細かい反省点は多くあり、一つ一つの遅れが行動計画の遅れに繋がってしまっている。その結果、ルート工作を行うことができないままアタックということになってしまった。
アタック日に関しては、槍ヶ岳山荘までは計画時間よりも早く行動することができていた。ただ、大槍のアタックでは他の登山者が20名程もいた為、大幅な時間をかけてしまった。1,2年生にとっては長時間行動や危険箇所での通過など、貴重な経験になったと感じる。3年生もルート工作でのロープの設置や支点作成などは良い経験となったはずだ。今回の経験や反省点を改善していき、次の2月合宿、春山合宿と繋げていきたい。
初冬合宿に引き続き、國谷コーチには大変お世話になりました。國谷コーチから指摘していただいた助言を今後の活動に生かしていきたいと思います。お忙しいところ、誠にありがとうございました。
(報告者:福島端流)
槍ヶ岳頂上の記録映像