9月4日:最終ピーク:大無間山(2329m)。
2016年度夏合宿南アルプス全山縦走報告書
日本大学山岳部
目的 | 南アルプス全山登頂 |
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山域 | 南アルプス 夜叉神峠~田代 |
日程 | 平成28年8月20日(土)~9月4日(日) 移動1日、実働13日、停滞2日 |
メンバー | 4年 CL水越健輔 3年 高根澤亮太 2年 荒井暢之、國谷良介 1年 新保裕也、福島端流 計6名 |
8月20日(土)移動日
新宿18:35~20:45甲府駅(ステビバ)
多くの部員が見送りに来てくれる。川村、近藤、田邊は新宿まで見送りに来てくれ、差し入れまで用意してくれていた。これは頑張っていかなければと気合が入る。甲府駅到着後、夕食を済ませステーションビバークする。暑さと喧騒でなかなか眠れなかった。
8月21日(日)入山日 晴れ後くもり 21℃
甲府駅04:35~05:47夜叉神峠~11:30南御室小屋~15:30鳳凰小屋CS1
全員寝不足のせいか、なかなかペースが上がらない。荒井を中心に新保、福島が元気を出しながら歩いている。薬師岳、観音岳とピークを踏み、鳳凰小屋に到着する。
8月22日(月)停滞 雨 13℃
昨晩は雨が降ったり止んだりの天気であった。台風9号の影響で停滞とする。午前9時頃から本降りの雨となる。
8月23日(火)晴れ後雨 14℃
鳳凰小屋CS104:50~05:45地蔵岳~10:30早川尾根小屋CS2
午後から天気が悪くなることが予想されるので、本日の行動は早川尾根小屋までとする。白鳳峠、広河原峠は冬季には天幕可能。13時過ぎから雷が鳴り出し、雨が降り始める。
8月24日(水)晴れ後雨 13℃
早川尾根小屋CS203:50~09:00仙水峠~11:45甲斐駒ヶ岳~14:00仙水峠~14:45仙水小屋CS3
昨夜の雨も朝には止み、晴れている。アサヨ峰前のピーク2553付近、栗沢山前は冬季に天幕可能そうだ。栗沢山前に天幕する場合南西側からの風には注意。仙水峠に不要な荷物をデポし、甲斐駒ヶ岳にアタックする。甲斐駒ヶ岳アタック後、仙水峠に到着する頃には雨が降り出す。
8月25日(木)晴れ後雨 13℃
仙水小屋CS303:50~04:25長衛小屋~09:00仙丈ヶ岳~12:30高望池CS4
大仙丈ヶ岳の登りは冬季、強風時は注意。またホワイトアウト時、大仙丈ケ岳過ぎのピーク2755から三峰川への尾根に迷い込まないように注意。徐々に疲れも溜まり始めているので、本日は高望池までとする。水場の水は出ていた。14時30分頃から今日もにわか雨が降り出す。
8月26日(金)晴れ後くもり 12℃
高望池CS403:50~09:05三峰岳~10:05間ノ岳~11:30北岳山荘CS5~12:40北岳~13:40北岳山荘CS5
三峰岳前に1カ所3~4mほどのクサリ場があり、冬季には雪の付き方によっては注意する必要があるだろう。北岳山荘到着後、テントを設営し北岳にアタックする。空荷だと皆元気いっぱい、あっという間に頂上に到着する。残念ながらガスのなかであったが、日本第2の高峰に1年生は嬉しそうだ。
8月27日(土)くもり後雨 12℃
北岳山荘CS503:50~06:05ピーク2813~07:35農鳥岳~11:05熊ノ平小屋CS6
朝焼けの美しい富士山を眺めながら歩いていく。農鳥小屋前の三国平との分岐であるピーク2813に不要な荷物をデポして、農鳥岳にアタックする。農鳥岳へは細かい起伏の岩稜を進んでいく。途中でヘルメットを着用する。農鳥岳アタック後、徐々に雨が降り出し始め、熊ノ平小屋に到着する頃には本降りとなった。迷走台風10号の湿った空気の影響でここのところ毎日、ぐずついた天気である。
8月28日(日)くもり後雨 13℃
熊ノ平小屋CS603:50~08:50塩見岳~12:40三伏峠小屋CS7
熊ノ平小屋から15分ほど登った草地は天幕可能そうだ。安部荒倉岳~北荒川岳間も冬季にはいくつか天幕できそうな箇所がある。北俣岳分岐前のガレの縁は、冬季や強風時には注意しなければならない。塩見岳の下りは落石の危険があり、ヘルメットを着用する。三伏峠小屋に到着すると、ちょうど雨が降り始める。
8月29日(月)停滞 風雨後くもり 13℃
迷走台風10号がいよいよ日本に上陸したため、昨晩から風雨となった。午前10時頃から雨は止み始めたが、依然風は強い。
8月30日(火)雨後くもり 13℃
三伏峠小屋CS704:50~07:00小河内岳~10:20高山裏避難小屋CS8
雨のなか出発する。新保は膝が痛いということなので、荷物を軽くする。新保の膝も考慮して、高山裏避難小屋で行動を終える。午後には天候が回復してくる。
8月31日(水)くもり後晴れ 11℃
高山裏避難小屋CS805:50~08:30前岳~09:40悪沢岳~10:45前岳~11:50荒川小屋CS9
朝はガスに覆われ、風が強い。前岳手前のガレの縁は注意。前岳に不要な荷物をデポして悪沢岳をピストンする。ピストン中にガスが晴れ始め、悪沢岳がその雄姿を現し、歓声が沸く。悪沢岳頂上では、台風一過の青空が広がり久々の晴れの頂上を楽しめた。いつの間にか富士山が近づいており、縦走のやる気も増してくる。荒川小屋では久々の青空の下装備を乾かして過ごす。新保の膝はテーピング、アイシング、荷物軽減のおかげか良くなってきているようだ。夕方、食当中の福島が軽い火傷を負ってしまったので、応急処置を行う。
9月1日(木)晴れ 9℃
荒川小屋CS903:50~06:10赤石岳~07:55百閒洞山の家~12:30聖岳~14:25聖平小屋CS10
福島の火傷は痛みも無くなり、回復している。朝はガスに覆われ、風も強いため体感温度はかなり低い。出発後しばらくすると、國谷が転倒して眉間の辺りを切ってしまう。応急処置をして再出発する。小赤石岳から赤石岳間は、冬季は東側に雪庇が張り出すだろう。聖岳の登りはガレの縁や急坂などで、冬は時間がかかりそうな気がする。また小聖岳へのやせ尾根は冬季には注意が必要。この辺りは冬には縦走の核心となりそうだ。今日は長い行程であったが、良いペースで聖平小屋に到着する。昨日の福島の火傷に始まり、疲れが出始めたのか気が抜け始めたのか、緊張感が薄れ始めている気がした。ちょうど読んでいた植村直己さんの著書『青春を山に賭けて』に「百里の道は九十九里をもって半分とする」という諺が出てきた。ゴールの見え始めた今の我々にぴったりの言葉であり、再度全員の気を引き締め直す。
9月2日(金)晴れ 9℃
聖平小屋CS1004:25~07:30茶臼岳~11:20光岳小屋CS11~12:00光岳~12:10光岳小屋CS1
朝からよく晴れている。茶臼岳ではやっと大無間山までの稜線が姿を現したが、まだ先は長そうだ。光岳小屋まで広い尾根が多く冬にテン場になりそうな箇所はいくつかあった。光岳小屋にテントを張ってから、光岳頂上へ向かう。光石まで足を延ばして、帰幕する。今合宿3度目の台風、台風12号が接近しており、どうにかあと2日もってくれるよう祈るばかりである。
9月3日(土)晴れ時々くもり 10℃
光岳小屋CS1103:50~05:30百俣沢の頭~08:00信濃俣~12:40大根沢山~14:10アザミ沢のコルCS12
暗いうちに光岳小屋を出発する。百俣沢の頭までで、広い地形と暗いうちの行動のためかリングワンデリングしてしまう。コンパスと地図をもう一度よく確認しながら進む。しばらくすると百俣沢の頭の標識に辿りつく。信濃俣の頭からはやせ尾根がしばらく続く。やせ尾根も少なくなってくると信濃俣に到着する。信濃俣過ぎとピーク1913付近は天幕できそうだ。大根沢山の登りは急でなおかつ長い。大根沢山の最初の登りは特に急登でガレていたので、ヘルメットを着けた。全体的に目印のテープは多く、順調にアザミ沢のコルに到着。テン場は正確にはコルではなく、コルを上がった先である。V6以上の大きさのテントを張るのは厳しいだろう。V61張り、2人用テント2.3張り程度のスペースであったと思う。
9月4日(日)下山日 くもり 12℃
アザミ沢のコルCS1203:50~06:00三方嶺~07:00大無間山~08:35小無間山~11:15小無間小屋~13:10田代
台風12号が心配であったが、朝はくもりである。ここから先も目印のテープが思いのほか多いので、迷わず進んでいける。三方嶺では一瞬の晴れ間に虹が見え、「僕たちを祝福してくれている!」と荒井が言っている。まだ終わっていないが、確かにそんな気もして少し感動する。三方嶺手前には天幕出来そうな箇所が1カ所ある。三方嶺からはより道が分かりやすくなるが、油断せずにコンパスと地図を良く見ながら進み、ついに最終ピークである大無間山に到着する。大無間山頂上、中無間山過ぎ、小無間山はテントが張れそうだ。問題視していた小無間山過ぎの崩壊地に到着。基本的に道はあるが、油断すれば下まで落ちてしまう箇所もあるので要注意である。比較的しっかりしたトラロープがあるので、それを利用して進む。このトラロープがなければ、ザイルは出さなければならないだろう。続く鋸場は想像していたより問題ない。多少細い箇所もあるが、冬にザイルを出すかどうかは微妙なラインだろう。緊張を要する箇所も抜け、小無間小屋に到着する。あとはひたすら下って、田代に下山する。田代に到着するとにわか雨が降り出してきた。「祝福の雨だ」と、皆笑顔である。一回り成長した顔が頼もしい。
総括
今合宿は2週間という長い期間であり、一番心配していた点は下級生の体力、精神面が耐えられるかどうかであった。しかし、そういった心配を見事に払拭してくれた。時に悪天や停滞で気が沈むこともあったかもしれないが、毎日元気に楽しみながら乗り切ってくれた。毎日を元気に楽しみながら乗り切ることが出来たのは、確かな生活技術のおかげであると考えている。現に食事の失敗や撤収遅れなどは一度も起きていない。基本的なことでありながら、非常に重要なことを毎日確実にこなしていける能力をメンバー全員が持っていた。この基本的な能力に加え、メンバーがそれぞれ持っている明るさ、苦難に耐える気力で乗り切ったという感じの合宿であった。あとは冬山に向けた技術向上、体力強化である。
(報告者:水越健輔)