6月4日 入山初日、河童橋から横尾へ向かう~学生が背負うのは合宿ご用達大容量ザック
“ガッシャーブルム”です。新緑の上高地に華やかなザックの花が咲く。大学生18人が揃って
大容量ザックを背負うと、少しシュールに映るのかもしれない…観光客の視線が注がれる。
2016年度 初夏合宿報告書
日本大学山岳部
目的 | リーダーシップ・メンバーシップの向上 雪上技術・生活技術の習得 |
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山域 | 北アルプス穂高連峰・槍ヶ岳 |
日程 | 平成28年6月3日(金)~6月10日(金) 移動1日、実働7日 |
メンバー | 4年 CL水越健輔、SL加藤純 3年 岡本碩士(6日下山)、高根澤亮太 2年 荒井暢之、國谷良介、高橋佑太、中泉雄人 1年 石川要、遠藤祐輝、川村洸斗、近藤歩、白土朝香、新保裕也、田邊カレン、福島端流、福吉晃樹、守屋勇希 計18名 |
OB参加 | 飯田祐一郎HC(8日~10日)、山浦祥吾C(8日~9日)、宝迫哲史C(3日~5日)、大谷直弘監督(6日~9日) |
行動報告
6月3日(金)移動日 新宿(高速バス)~松本駅
新宿(高速バス)①19:25、②19:55、③20:25~松本駅①22:43、②23:13、③23:43
人数が多いため3つに分かれて松本へ向かう。松本駅に到着し、就寝しようとするがダラダラと過ごす1年生が多く、さっそく2年生を指導する。
6月4日(土)入山日 松本駅(貸切バス)~上高地~徳沢~横尾BC1 晴れ+12℃
松本駅06:00(貸切バス)~上高地07:30~明神08:20~徳沢09:10~10:15横尾BC1
上高地にて1年生のレイヤリングやザックの背負い方などをよく確認してから出発。順調に横尾に到着し、テントを設営する。その後FIX訓練、1年生のロープワーク訓練を行う。今日は荒井がよく1年生の面倒を見ていた。
6月5日(日)蝶ヶ岳隊 横尾BC1~蝶ヶ岳~横尾BC1 くもり後晴れ+8℃
L水越⁻加藤-岡本-高根澤-石川-遠藤⁻川村-近藤-白土⁻新保-田邊-福島-福吉⁻守屋+宝迫C
横尾BC1 05:00~08:00蝶ヶ岳~11:00横尾BC1
昨晩は雨が降ったり止んだりしていたが、朝には止んでおり、曇り空のもと出発する。1年生は地図と周囲の地形をよく確認しながら、登っている姿が印象的であった。雪は稜線へ上がる手前にほんの少し残っているだけで、今年の雪の少なさを実感した。頂上では槍、穂高の概念を1年生に教えながらゆっくり過ごす。下山後は昨日同様にFIX、ロープワークの訓練をする。12時30分、宝迫コーチが上高地へ下山する。
6月5日(日)
槍ヶ岳隊 (槍沢往復) 横尾BC1〜ババ平〜槍ヶ岳山荘〜ババ平〜横尾BC1 霧雨後晴れL國谷-荒井-高橋-中泉
横尾BC1 04:00~05:05槍沢ロッジ~06:00大曲~09:00槍ヶ岳山荘~09:30槍ヶ岳10:05~12:00大曲~12:50槍沢ロッジ~14:00横尾BC1
霧雨の中行動を開始する。全員体調は良好で快調に進んでいく。天気は悪くなる予報であったが、槍沢ロッジを過ぎたあたりから晴れてくる。例年と比べ雪が少ないようでババ平を過ぎて夏道が出ていた。大曲を過ぎると残雪で夏道が途切れ始めたので、ヘルメット、ピッケル、アイゼンを着用し雪渓上を進む。
殺生ヒュッテからは再び雪が無くガレた夏道のためアイゼンをはずす。槍ヶ岳山荘到着後ハーネスを着用し、山頂へは声を掛け合いながら慎重に登っていく。他の登山者はおらず、天気も非常に良かったので、山頂では景色を楽しみながらのんびりと過ごした。下りは鎖にFIXしながら慎重に進む。山荘からは登りと同様にハイペースで進み、計画より2時間早く帰幕した。
(報告者:國谷良介)
6月6日(月)BC移動 横尾BC1~涸沢BC2 晴れ+5℃
横尾BC1 05:00~08:30涸沢BC2
本日帰京する岡本と別れ、定刻通りに横尾を出発。横尾から本谷橋、本谷橋からしばらく先も一切雪はなく、夏道を進んでいく。10時前に大谷監督が涸沢に到着して合流。テント内整理を終え、例年通り前穂北尾根5・6のコル下部にて雪訓を開始する。歩行、滑落停止、FIX訓練を行い、帰幕する。夕飯を食べている際に白土の体調が悪いとの報告を受け、今夜は涸沢ヒュッテに泊まらせることにする。高度障害と低体温症と思われる。
6月7日(火)雪訓 涸沢BC2~雪訓~涸沢BC2 くもり時々雨+4℃
涸沢BC2 07:00~雪上訓練~14:30涸沢BC2
水越-加藤-高根澤-荒井-國谷-高橋-中泉-石川-遠藤-近藤-田邊-福島-福吉-守屋+大谷監督
朝、白土の容体を確認しに行くと、昨晩のつらそうな状態が嘘のようにケロッと元気にしており拍子抜けしたが、大事をとって小屋で休ませておく。また新保が発熱、川村に腹痛があるため、その3人を大谷監督にお願いして、雪訓に出発する。雪訓では昨日行った歩行、滑落停止、FIXに加え、1年生のロープワーク訓練を行い、帰幕。大事を取って白土は今晩も小屋泊まりとする。明日、奥穂高岳は厳しいかもしれないが、涸沢岳には登れそうな天候だと予想し、明日の行動を涸沢岳アタックに決定する。
6月8日(水)奥穂高岳アタック 涸沢BC2~奥穂高岳~涸沢BC2 晴れ時々曇り+5℃
涸沢BC2 05:30~07:55穂高岳山荘~09:55奥穂高岳~14:10涸沢BC2
水越-加藤-高根澤-荒井-高橋-中泉-石川-遠藤-川村-近藤-白土-福島-守屋+大谷監督,山浦C
國谷、田邊、福吉に発熱があり、昨日から熱のある新保とともに4人をテントキーパーとする。白土は大丈夫そうであるため、連れていくことにする。空はよく晴れており奥穂高岳アタックに変更する。天気が良く奥穂高岳アタックへの変更も視野に入れて、もっと早い時間から起きていれば、出発を早められたとリーダーとして反省した。
白出のコルまでの雪渓上では、大谷監督、加藤にステップを切ってもらいながら進んでいく。腐り始めている雪にも助けられ白出のコルまで順調に進む。白出のコルから、水越、高根澤、高橋で先にFIXを張りに行く。最初の梯子から例年雪の残っているトラバースまで1ピッチ、頂上前の雪渓のトラバース箇所にもう1ピッチ張る。頂上はあいにくガスってしまったが、写真撮影をして早々に下山する。
頂上前のFIXを張った雪渓で山浦コーチと合流出来たため、もう一度頂上へ行く。今度は晴れのなか記念写真を撮ることが出来た。白出のコルからの下りではザイルを出して下りていき、問題なく下山する。水越、加藤は山浦コーチにご指導頂きながら、コンティニュアスの訓練をした後帰幕する。BC帰幕後、飯田ヘッドコーチと合流した。新保はまだ熱が下がらないため小屋泊まりとする。
6月9日(木)雪訓 涸沢BC2~雪訓~涸沢BC2 くもり時々雨+5℃
涸沢BC2 06:00~雪上訓練~13:30涸沢BC2
水越-加藤-高根澤-荒井-高橋-中泉-石川-遠藤-川村-田邊-福島-守屋+大谷監督,飯田HC,山浦C
熱のある國谷、新保、福吉をBCステイとする。白土は耳鳴りがするとのことで、高度障害と思われるため、白土もBCステイとする。田邊、川村は回復したため雪訓へ向かう。雪訓場へ到着後、近藤の体調が悪いことが発覚し監督とともにBCへ戻ってもらう。熱があり辛そうなため、今晩は小屋に泊まらせる。雪訓では歩行、滑落停止、グリセード、ロープワーク訓練を行う。1年生の歩行やロープワークなどはなかなか様になってきたようだ。11時頃、大谷監督、山浦コーチとともに体調の悪い新保、福吉が下山する。一通り雪訓を終え、テント内でゆっくりと楽しいひと時を過ごした。
6月9日(木)上高地下山 涸沢BC2~横尾~徳沢園~上高地
11:05涸沢BC2~12:00本谷橋~12:50横尾~14:00徳沢園~14:40明神~15:20~上高地バスターミナル(解散)
新保-福吉-大谷監督-山浦C
涸沢にて山浦コーチと雪渓訓練を10時過ぎまで立ち合う。その後、BCで待機中の体調不良の1年生2人(新保、福吉)と合流。山浦、大谷の計4人で1日早く上高地へ向けて下山する。涸沢にBCを移し後半体調を崩していた2人だが、昨日のレストで大分回復してきているのだろう、横尾まで良いピッチで動いてくれている。今回は大事を取って、先行して下したが、本当は翌10日の全員行動の中で下山させてやりたかった。全員異常なく上高地へ下山し合宿を1日先行して終了した。
(報告者:大谷直弘)
6月10日(金)下山日本隊 涸沢BC2~横尾~上高地 晴れ+4℃
涸沢BC2 05:00 ~横尾07:55~10:35涸沢BC2
加藤-高根澤-荒井-國谷-石川-遠藤-川村-近藤-白土-田邊-福島-守屋
朝の冷え込みでBC周辺の雪面が硬くなっていたので、上級生はアイゼンを付けて1年の下降を補助することにした。時間通りに撤収を済ませて涸沢を下り始める。案の定1年は時折足を滑らせるが、集中を切らさずに歩いている。入山から数日しか経っていないが、雪渓下部ではハイマツや沢の流れが見えるようになっており、少しずつ夏山の装いに変わっていくのを感じた。BC2から横尾までは慎重に通過した為に時間がかかったが、それ以降は早いペースで進み、上高地に到着する。各部員の体調に問題が無いことを確認して行動を終了した。
(報告者:加藤純)
6月10日(金)北穂東稜隊 涸沢BC2~北穂東稜~北穂高岳~涸沢BC2~横尾~上高地 晴れ+4℃
涸沢BC2 04:00 ~05:15東稜取り付き~08:30北穂高岳~10:30涸沢BC2~12:00横尾~14:30上高地
飯田ヘッドコーチ⁻高橋、水越-中泉
東稜取り付き手前の雪渓まで夏道を利用する。東稜上に上がり、北穂池側の雪渓を10mほどトラバースしてから、再度東稜上へ。ここから飯田ヘッドコーチ-高橋、水越-中泉でアンザイレンして進む。所々高橋、中泉を確保しながら進み、あっという間に北穂高岳頂上へ到着。中泉はもうこれぐらいでは何ともないようだった。高橋は終始強張った表情をしていたが、頂上でははじける笑顔を見せてくれた。2年生二人には登攀方法や危険箇所の通過技術など良い勉強になったようだ。今合宿一番の青空のもと、頂上を満喫してから北穂沢を利用して涸沢BCへ下りる。撤収作業をしたのち上高地まで下山する。
総括
今合宿は1年生全員が参加でき、雪訓も個人差はあるものの一通りやり切ることができた。近年では1年生の人数が一番多い合宿のなかで、雪訓、蝶ヶ岳、槍ヶ岳、奥穂高岳、北穂東稜と全てのメニューをこなすことができた。この第一の要因は中堅部員の活躍にあると思う。特に文登研で1週間鍛え上げられた荒井、國谷、中泉、一人で1年生の面倒をよく見ていた高橋、この4人の頑張りがあってこその初夏合宿であったと感じる。
第二の要因として、やはりOBの方々の支援があったからこそであると思う。多くのOBに入山して頂き代わる代わるご指導頂いた。まだまだ未熟なチーフリーダーは助けられたと思っております。ありがとうございました。
(報告者:水越健輔)
初夏合宿を終えて
10名の新人を迎え、2016年度の初めである初夏合宿がスタートした。昨年ほどではないにしろ、今年も天気に恵まれて、蝶ヶ岳、槍往復、奥穂、北穂東稜、雪渓訓練と全てをしっかりと行うことが出来た。体調不良者が多く出たが、合宿期間中に復活して雪渓訓練、奥穂登頂へと再行動できた部員もおり、良く頑張ってくれた。
2年生の内3名は文登研の研修から1週間おいて初夏合宿突入となったが、タイトな日程の中、良く頑張ってくれた。3年生もリーダーシップを発揮して2年以下を纏めて合宿をリードしてくれた。そして1年生の10人も、横の連携をうまく取りながら合宿をやり抜いてくれた。後半の雪訓では、歩行訓練、確保訓練、滑落停止、FIX通過、グリセードも…コツを掴んで出来るようになっていた。4年生も就活、公務員試験・面接の間を縫って精力的に切り盛りしてくれた。
収穫は4年生から1年生まで、部員全員が参加できたこと。そして、各学年が役割を果たし、事故怪我なく合宿を終えることが出来たことだと思う。下山後の部会(反省会)で部員と会うことが出来た。日焼けした1年生の顔から、4月に入部した頃の初々しさは消えていた。逞しくなっていた1年生、更に成長して来ている2年生に素直に嬉しさがこみ上げてくる。大いに期待したい。
さぁ、夏山合宿にむかって頑張って行こう。
山岳部監督 大谷直弘