7月31日~8月5日【夏合宿登攀】北アルプス 剱岳(源次郎尾根、Ⅵ峰)

8月1日 夏山前半登攀合宿メンバーが立山から剱沢へ入山する。

2017年度 夏山合宿報告書(前半登攀合宿)

日本大学山岳部

目的 登攀技術の向上
山域 北アルプス 剱岳(源治郎尾根、Ⅵ峰C、Dフェース)~剱沢定着
日程 平成29年7月31日(月)~平成29年8月5日(木)
移動1日、実働4日、停滞1日
メンバー 4年 L高根澤亮太
3年 國谷良介、髙橋佑太
2年 川村洸斗、新保裕也、福島端流
OB 賀来コーチ、宝迫コーチ(3日下山)
計8名

行動報告

7月31日(月)移動日

新宿駅22:45,23:15~05:30,06:00富山駅

予定通り部室に集合し、2隊に分かれて新宿駅バスタを出発する。

8月1日(火)入山日 曇り時々雨 12℃

富山駅06:15〜08:50室堂〜10:40雷鳥沢〜13:20剱御前小屋〜14:50剱沢BC

室堂に到着すると、空はどんよりとした雲に覆われていた。雨が降ったり止んだりしている。剱御前小屋に到着すると、雨が本降りになった。剱沢には雪が大分残っており、風が冷たい。天場に到着してしばらくすると雨は止んだ。雲の間から剱の山頂が顔を出していた。明日は計画書通り、源次郎尾根とDフェースへ行くことにする。

8月2日(水)源次郎尾根、Dフェース 晴れ 10℃
源次郎尾根隊

剱沢BC04:00〜05:00源次郎尾根取り付き〜10:30Ⅰ峰〜12:30Ⅱ峰〜14:00剱岳〜15:45前剱〜17:30剱沢BC

テントから出ると、空は満点の星空であった。剱沢の雪渓は締まっており歩きやすかった。源次郎尾根の取り付きにて、Dフェース隊と別れる。 先行パーティが一組いたが、かなり早いペースで登っていった。最初の3メートルほどの岩場で新保と高橋が少してこずっていた。捨て縄があるがとても古い。岩も濡れており登りにくかった。少し歩くと10メートルほどの岩と木の根が混じった急登になる。フリーで上ったがザイルを出すべきであった。しばらく木のトンネルの中を歩き、核心である5メートル二段の岩に取り付く。一段目は簡単だが二段目は少し難しい。左側にホールドがたくさんあった。新保が大分てこずっていた。このピッチに一時間ほどかけてしまった。

この後はしばらく灌木混じりの岩稜になる。右側に切れ落ちた稜線は高度感があった。一峰手前の登りで、右寄りにトラバースしながらザイルを出したが、上部でやぶこきになってしまった。2ヶ所ほどハイマツに捨て縄があったが、どうやら間違ったルートだったらしい。テラスに出たところで明確な踏み跡を見つけた。トラバースをせずに直登すれば正しいルートだったらしい。一峰の頂上からクライムダウンをし、コルに下りる。

ここでDフェース隊を肉眼で確認できた。二峰の登りは岩混じりの急登。しっかりとしたホールドがたくさんあるので登りやすい。懸垂下降点の手前で2ピッチザイルを出した。細い稜線は灌木やピナクルでプロテクションを取れる。懸垂下降点の杭はしっかりしていたが、バックアップ用に打たれていたリングボルトは腐っていた。頂上までの道は浮き石が多く、注意しながら進む。祠が見えた瞬間、皆歓声をあげた。長かった。頂上で長めの休憩をとり、気を引き締め直して下山を開始する。高橋は一年生と合流した際、ザイルを出すべき場所を考えながら歩いていた。新保や福島にもしっかり指導していた。天場に着くと、一足先に到着していたDフェース隊が待っていてくれた。皆疲労困憊であった。

Dフェース隊

剱沢BC04:00〜長次郎谷出合い05:00〜06:30Dフェース取り付き〜(富山大ルート)〜11:20Dフェースの頭12:00〜Ⅴ・Ⅵのコル14:30〜長次郎谷の出合い15:30〜17:00剱沢BC

平蔵谷出合で源次郎尾根隊と別れ、八ツ峰へ向かう。長次郎谷は落石に注意しながら登っていく。雪が締まっており歩きやすく、良いペースで取り付きに到着する。Cフェース、Dフェースの取り付き周辺はシュルンドが大きく発達していたため慎重に取り付く。

・1P目
富山大ルートより右側の久留米大ルートに取り付いてしまったようだ。先行の宝迫C-川村パーティは2P目終了点のテラスまで伸ばしたが、ロープの屈曲が大きくなり少々苦戦していた。そのため賀来C-國谷は途中で富山大ルートに移りピッチを切る。振り返ると正規のルートの凹角が良く見えたが、こちらの方が残置のハーケンが豊富にあった。

・2P目
凹角を登るが左右に散らばった残置に途中支点を取っていったため、なかなかスムーズに進めない。凹角を抜け、小さなテラスで終了点。

・3P目
核心のピッチであるがそれほど難しさは感じなかった。草付き混じりを抜けバンドの右側に終了点。

・4P目
左上するバンドを快適に登り高度感のあるリッジに出る。

・5P目
高度感のあるリッジだがそれほど難しくはなく気持ちよく登る。途中支点も豊富に取れ。終了点はピナクル。

・6P目
易しいリッジを進む。40m程でDフェースの頭に出た。

下降は明瞭な踏み跡を辿りⅤ・Ⅵのコルへ向かう。Cフェースの頭を過ぎたところで30mの懸垂下降。終了点から縦走路を少し下り、再び懸垂下降。安定した立木に捨て縄で支点を作る。30m程下降したところにハーケンが打ってあったため、そこで支点を作りなおして3度目の懸垂下降。50m程の下降でⅤ・Ⅵのコルに到着。長次郎谷を下り、剱沢を登り返してBCに帰幕。長い1日となった。

(Dフェース隊報告者:國谷良介)

8月3日(木)停滞 晴れ 12℃

昨日の行動時間と、皆の疲労を考え停滞とする。8時過ぎに宝迫コーチを見送り、天場近くの雪渓でロープワークと搬送訓練を行う。ボディービレイが曖昧だった2年生に改めてきつく指導をする。その後、3分の1引き上げ法について指導した。去年の初冬合宿で出来なかったツェルト搬送訓練に加え、ザック搬送も行うことができ、人数は少ないながらも充実した内容をこなせた。天場は多くの登山客で賑わいだしていた。今日も夕焼けの剱が美しい。

8月4日(金)Cフェース 曇り時々晴れ 11℃

剱沢BC〜長次郎谷出合い〜Cフェース取り付き〜(剣稜会ルート)〜Cフェースの頭〜Ⅴ・Ⅵのコル〜長次郎谷の出合い〜剱沢BC

長次郎雪渓を詰めてCフェースへ向かう

Ⅵ峰Cフェース4ピッチ目リッジに入る

一昨日、源次郎の登攀でてこずっていた新保は残念だがテントキーパーとする。学科の研修のため福島は一旦下山する。二人を残し、賀来コーチを含む5名でCフェースの剣稜会ルートに挑む。二時間ほどでCフェースの取り付きに到着した。とてもいいペースである。剣稜会ルートの取り付きには雪渓が覆い被さっており、悪い状態であった。岩が濡れているのと、覆い被さった雪渓と岩との間隔が狭く、ザックが引っ掛かり登りづらい。

1ピッチ目を20メートル程登ったところのテラスで切った。2ピッチ目は凹角を登りリッジ上のテラスに出る。通常ならここが1ピッチ目の終了点になる。ホールドが豊富なため登りやすいピッチであった。3ピッチ目は灌木混じりのルートであった。最後の15メートル程はプロテクションがない。40メートル程でペツルのボルトが2つ打ってある。ここでピッチを切る。

4ピッチ目は長いスラブ状の登り。ホールドは豊富だが岩が脆く剥がれやすい。ナイフリッジ手前でピッチを切る。ナイフリッジのはじめはDフェース側にハーケンがたくさん打ってある。ルートはBフェース側にとるためロープの流れが悪くなる。アルパインヌンチャクで対応したが、あまり改善できなかった。Cフェースの頭の5メー程手前でピッチを切る。Cフェースの頭手前の直登は浮き石が非常に多い。一見安定していそうなホールドも不安定なものがあった。三時間ほどで登攀を終える。

Cフェースの頭に到着した際、松原ガイドに遭遇した。お客さんと上半縦走をしているらしい。遠征を激励してくださった。下降の際、我々は3ピッチ懸垂下降を行った。10分ほど踏み跡をたどり最初の懸垂下降点に到着する。岩に根を張ったハイマツに捨て縄が幾つも巻いてある。ハイマツが枯れ始めており非常に不安定であった。約30メートル下降する。次の懸垂下降点は下降した場所から少し降りた場所にある。立儀に捨て縄が巻いてあり、安定していた。約30メートル下降した。最後には腐ったハーケンが打ってあり、非常に不安定である。しかし、斜め上に安定した立ち木があったためそちらを使用した。木には捨て縄にビナが付いており、それを使って約50メートル斜めに下降し、Ⅴ、Ⅵのコルへ降りた。コルから長次郎谷への下りは雪渓の割れ目を避けながら下降する。落石に注意しながら長次郎谷を下り、長い剱沢の登りを無心で登りきり、剱沢BCに到着した。

8月5日(土)下山日 晴れのち曇り 10℃

剱沢BC06:00〜06:40剱御前小屋〜08:30室堂

本体を迎えに室堂に向かう。到着した一年生たちはきれい皆な顔をしていた。下山後、皆の顔が汚く、逞しくなっていることを期待する。

(報告者:高根澤亮太)

番外編① ~ 夏山前半登攀合宿 : 3年生 高橋佑太の場合

剱沢BCで2年生のロープワーク補習に立ち会う ~ 高橋佑太(法・法律3年)

この夏山合宿が終われば、就職への進路を具体的に固めなければいけない。その準備に時間もお金も大きく関わってくる。無縁ではない。山岳部とバイトと学業、今度は就活が現実として加わってくる。部活をやっている学生は皆同じ。大変なのはオイラけじゃない。“前から来い!後ろから来い!前から来るヤツはワンパンチ、後ろから来るヤツは背負い投げ”…根性でやり切る、こんな感じである。

それでも、これ等をスマートにサクッとこなして見せるのが俺のやり方。汗は見せない、頑張りの微塵も醸し出さない。ぶれない、退(ひ)かない、怯まない…これを胸の内に潜め、ストイックなオレはひたすら突き進む。来年度、國谷と二人で山岳部をリードして行く。山に向かう時、インスピレーションではない、調べつくして、研究して、考えつくし、理詰めで納得して山と向き合う。頭で登るのがオレの最も得意とするところ・・・・

そぅ、オレはタカハシ・ユウタ

(文:大谷直弘)

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