涸沢カール
2005年 初夏合宿 北アルプス 横尾定着
期間 | 平成17年5月28日(土)~6月2日(木) |
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メンバー | L須田 SL鈴木 石垣 北條 船田 OB鳥居コーチ |
場所 | 北アルプス 横尾定着 涸沢雪訓 奥穂、蝶ガ岳 |
計画概要
5月28日(土)入山日 薄曇り
4:32松本着~7:30島々宿着、7:50発~8:30二俣着~10:40岩魚留小屋着~14:10徳本峠小屋CS1着
前夜部室で若林に見送られ、出発。早見は先週の谷川で怪我をしてしまい、不参加になってしまった。詳しくは事故報告書参照。23:54の新宿発ムーンライト信州に颯爽かつ華麗に飛び乗り、いざ出発。若林にもらった差し入れのスイートポテトで腹を満たし、さっさと寝る。
朝目覚めると、そこはもう松本。電車から降り、タクシー乗り場に向かう。タクシー乗り場には三月合宿でお世話になった運転手さんの、下里さんが待ってくれていた。そしてタクシーに乗り込もうとしたその時
船田「あっ、電車に靴忘れてきました」
一同凍りつく。船田の山靴は、ムーンライト信州と共に白馬へ旅立ってしまった。電車で白馬までとりに行くと丸一日かかり、今日の入山は無理だ。何か手はないかと考えていると、下里さんが
「タクシーでとりに行こう、料金はサービスしてあげるから」
とおっしゃってくれた。ああ!なんていい人なんだ!下里さんが神様に見えた。そして下里さんをはじめ、信州名鉄交通の皆さん、JRの皆さんの協力により、少しの遅れだけで山靴をとり戻し、入山することができた。ありがとうございました。
島々宿のゲートから登山道に入る。登山道というより林道という感じで、たらたら歩く。道が崩れている場所もあるが、たいして問題ではない。途中、女の子だけの団体に会う。徳本峠への登り始めあたりで水を汲んでいく。この付近は虫がとても多く、まとわりつかれてイライラする。峠の小屋に着くと、眼前には穂高連峰がそびえ立っていた。テントを設営してのんびりしていると、先ほどの女の子だけの団体が登ってきた。石垣が話しかけたところ、明治学院ワンゲル部だそうだ。石垣は女の子がたくさんいるので嬉しそうだった。
5月29日(日) 晴れのち曇り
4:40徳本峠小屋CS1発~5:55徳本峠入口着~6:40徳沢着~7:50横尾BC着
「偵察隊」
8:20横尾BC発~11:20涸沢小屋着~13:20涸沢槍下部(雪訓予定地)着~14:15涸沢槍下部(雪訓予定地)発~14:30涸沢小屋着~15:20本谷橋着~16:00横尾BC着
テントを撤収し、出発。徳本峠からの下りは少し雪があるが、問題ない。水場で水を汲み、約1時間で徳本峠入口に着いてしまった。徳沢を過ぎ、屏風の頭を眺めながら歩いていると、横尾に到着。テントを設営し、鈴木と石垣は偵察に出発。須田と北條、船田はBCに残り、ザイルワークの復習をした。横尾は地形的に電波が届きにくいらしく、ラジオはほとんど入らない。
「偵察隊」
8:20、横尾BCを後にする。石垣がトップで快調に飛ばす。本谷橋まで特に問題はない。本谷橋を渡ってから、登山道が雪に覆われている。と、ここから石垣もいつも通りの安定したスローペース。滑落したらまずいトラバースもあるが、慎重に行けば1年生がいても問題ないだろう。涸沢小屋はなかなか快適。ここでヘルメット、ハーネス、雨具下装着。ここから雪訓予定地までなかなか遠い。登っている間、奥穂高直下の壁は頻繁に雪崩が起きていた。雪訓予定地の下もいくつか雪崩の跡が。下部まで行くが、斜面はゆるい。弱層テストをすると、25cmぐらいの深さに弱層あり。とりあえずザイルワークの確認をして下山。下りは早い。涸沢小屋で装備を外し、駆け下りるように下る。16:00をちょっと過ぎて下山。
5月30日(月) 晴れのち曇り
4:40横尾BC発~5:30本谷橋着~7:20涸沢ヒュッテ着~8:105・6のコル下雪訓場着、直登&直下降開始~9:10ダイヤモンド&八の字開始~10:40ジッヘル開始~12:10グリセード開始~12:405・6のコル下雪訓場発~12:50涸沢ヒュッテ着~13:40本谷橋着~14:30横尾BC着
1位北條、2位船田、3位石垣。新たな雪訓場は5・6のコル下の斜面とする。すぐ隣では顔見知りの法政大山岳部が雪訓をしている。我々も直登、直下降、ダイヤモンド、八の字とこなす。雪がグサグサで、まるで3月のような雪質だ。八の字が終わったところで北條が足が痛いと言い出す。大事をとってジッヘル、グリセードはやらせず、涸沢ヒュッテで休ませてもらうことにした。他のメンバーはジッヘル、グリセードをこなして雪訓終了。涸沢ヒュッテに北條を迎えに行き、小屋の人にお礼を言う。下りは北條も自分の足で歩き、BCへ戻る。
5月31日(火)小雨のち晴れ
4:40横尾BC発~5:50本谷橋着~7:10涸沢ヒュッテ着~8:005・6のコル下雪訓場着、ザイルワーク(肩がらみ、腰がらみ、グリップ、スタンディングアックス、FIX)開始~12:405・6のコル下雪訓場発~12:50涸沢ヒュッテ着、13:10発~13:50本谷橋着~14:40横尾BC着
夜中から雨が降るが、出発するころには小雨になっていた。北條の足が心配だが、ひとまず公共なしで歩かせてみることにする。本谷橋手前まで行くが、やはり足が痛むそうなので鈴木同伴でBCへ戻す。その間、須田、石垣、船田は先行して雪訓場に向かう。そして涸沢ヒュッテが見えるあたりから雪訓場まで、一気に雪訓ダッシュ。結果は1位船田、2位石垣。石垣はホントにダッシュが遅い。雪訓場に到着し、小雨の中ザイルワーク開始。なんせザイルワークなので、体が温まらずとても寒い。肩がらみをしていると、下から鈴木が上がってきた。肩がらみ、腰がらみ、グリップ、スタンディングアックス、FIXとこなしていく。船田も頑張って練習している。次第に雨も止み、太陽も見えるようになってきた。12:40ザイルワーク終了。鈴木は今日下山のため、一足先に下っていった。涸沢ヒュッテで休憩し、BCへ。この頃には完全に天気が回復しており、汗をかきながら下降していった。BCでは北條がシュラフを干してくれていた。夕食はミートスパゲティーをがっつり食う。
6月1日(水)晴れ
3:30横尾BC発~4:30本谷橋着~6:00涸沢小屋着~7:10ザイテングラート下着~9:00白出のコル着~10:10奥穂高岳着、10:40発~12:40白出のコル着、13:00発~13:30涸沢ヒュッテ着~14:10本谷橋着~14:50横尾BC着
朝テントの外を見ると、満天の星空、快晴である。天佑とはこのことか。3:30にBCを出たため、最初だけヘッデン行動をする。涸沢小屋を過ぎ、ザイテングラート目指して登る。しかしザイテングラートはほとんど雪に埋まっており、夏道が使えたのはごく一部。万が一のため、雪崩を回避できる場所をルートにとる。白出のコルに着くと、西からの風が強く寒い。奥穂高の登りでは夏道の一部が完全に雪に埋まっており、苦労する。10:10、奥穂高登頂。頂上からは富士山も見え、絶景である。実は今日は若林の誕生日。頂上では携帯の電波が届いたので、お祝いの電話をかけてみる。しばらく頂上を満喫し、いざ下降。下りでは万が一に備え、3Pロープを出す。石垣も船田にあれこれ指示を出し、ようやく2年生らしくなってきた。
白出のコルで休んでいると、頂上のほうからガイドとおぼしき2人組が降りてきた。そしてガイドの方が須田を見て、
「あれ?君どこかで会わなかったっけ?」と。はてさて、誰だろうと考えていると、一昨年の文登研でお世話になった、プロガイドの三浦先生であることが判明!お仕事でお客さんと前穂北尾根を上がってきたそうだ。いろいろと楽しくお話をする。別れ際、石垣がお客さんのピッケルを見て「そのピッケル、本郷君が欲しがってたんですよー。いいですよねー」とかなんとか話してる。こんな石垣の反応を見てその優しいお客さんは、後日そのピッケルを我々に下さったのだ!ありがとうございます!
そして白出のコルからは一直線に涸沢ヒュッテ目がけて駆け下りる。斜面は傾斜はあるが、雪がグサグサなので歩きやすい。BCには14:50到着。そして16:00ごろ、鳥居コーチがきてくださる。明日は下山ということで、鳥居コーチも一緒に全員で食いつぶしを行う。さらに食後には鳥居コーチの差し入れの河童橋プリンを食べ、とにかく食いまくりの夜であった。
6月2日(木)曇り
4:40横尾BC発~8:252625地点着~8:45蝶ヶ岳ヒュッテ着~8:50蝶ヶ岳着~9:50長堀山着~12:00徳沢着~13:00明神着~13:50上高地バスターミナル着
北條は鳥居コーチにお願いし、蝶ヶ岳目指して出発。蝶ヶ岳への登りは途中から雪だらけになってしまい、いそいそとピッケルを出す。樹林の中をひたすら登り、2625地点に出る。そこからは稜線歩きだ。右手には穂高連峰が見える。晴れていれば絶景なんだけどなあー。8:50、蝶ヶ岳登頂。徳沢目指して下降開始。
ここに妖精の池というのがあり、相当メルヘンチックなのか?と思いながら行ってみると、なんでもないただの樹林帯の沼であった。ただ石垣はここで妖精に惑わされてしまったらしく、なんでもないルーファイで渋っていた。ここも雪が多く、2100m付近までは雪がついていた。それ以降はいたって普通の樹林帯の下り。12:00、徳沢に着く。ここから上高地まではひたすら歩く。徳沢まではアプローチが簡単なせいか、普通の観光客らしき人も多い。上高地で鳥居コーチ、北條と合流。沢渡までタクシーで行き、そこから松本までは鳥居コーチの車に乗せていただいた。そして松本で鳥居コーチと別れ、とんかつを食い、高速バスで帰京するのであった
全体を通して
今回は1年生は初めての合宿ということであったが、雪訓ダッシュの頑張りなどは今後を期待させるものであった。ただし食当などの天幕生活においては、反省点が多くあったようである。1年生である以上反省点は出るものだが、大切なのはそれを改善し、次の山行で繰り返さないことである。これを実行できていれば、必ず次のステップへ進めるだろう。
上級生の大きな反省は、直前になってメンバーの不参加という、計画の変更をしてしまったことである。早見が怪我をしたのは合宿の1週間前であり、十分な注意をしていればもっと早急な対処ができたはずである。メンバーが変われば合宿の内容も変わるものであり、直前での変更は避けなければならない。また雪訓で北條を怪我させてしまったことも上級生の責任である。1年生は雪訓の内容についていくので精一杯であり、自分の体調を完全に把握できない時もある。そんな時のために、上級生はこまめに1年生の状況を観察しなければならない。
今回の合宿も「奥穂高岳、蝶ヶ岳に登れた→成功」ではなく、一番大切なのは今回の問題点を反省、改善し、少しずつ次のステップへ進むことである。そういった地道な努力を積み重ねてこそ、冬の鹿島槍ヶ岳が見えてくるのである。
最後に、お忙しい中合宿に参加して下さった鳥居コーチ、ありがとうございました。
文責:須田貴志