1998年 春山合宿 南アルプス
期間 | 平成10年2月9日(月)~2月22日(日) |
---|---|
メンバー | 本多3、松本3、深沢2、佐藤2、小林1、木幡1、千葉4 |
ルート | 池山吊尾根~北岳~仙丈岳~北沢峠~甲斐駒ガ岳~黒戸尾根 |
2月9日(月)晴れ
芦安先(14:00)~夜叉神峠(16:20)~観音経トンネル(17:00)
新宿からバスで甲府まで行き、そこからタクシーに乗る。夜叉神まで車で入れると聞いていたが、先日の雪のため芦安先のゲートで降ろされる。夜叉神峠からは雪が膝下までありラッセルとなる。鷲ノ住山まで行く時間がなくトンネルの中で幕営。
2月10日(火)雪
観音経トンネル(06:00)~鷲ノ住山(08:00)~発電所(09:45)~池山吊尾根取付(11:00)
朝から雪が降っており、風も強い。林道を進むにつれラッセルが徐々に深くなってくる。鷲ノ住山からは風も強くなり傾斜も急なのでアイゼンを履く。11:00に池山吊尾根取付に着くが、天候とこの先の天場がないことを考えて、テントを張る。
2月11日(水)晴れ
池山吊尾根取付(06:30)~池山御池小屋(11:30)~城峰手前(14:00)
ラッセルが徐々にきつくなり、2ピッチ目からワカンを着ける。雪は柔らかく斜面は急なので歩きづらい。城峰手前の樹林帯の中にテントを張る。
2月12日(木)雪
停滞
朝から雪であり、風も強く視界が効かない。09:00の天気図で判断し停滞を決める。雪の多さと、天候の悪さから今後の行動が厳しいものと予想される。
2月13日(金)晴れ
城峰手前(06:30)~ボーコン沢の頭先コル(11:20)
快晴の中、出発する。相変わらずラッセルが深い。ボーコン沢の頭先コルから先は天幕可能地が北岳山荘までないので、防風壁を作りテントを張る。
2月14日(土)雪
停滞
雪、風ともに強く視界が効かない。09:00の天気図で判断し停滞を決める。前線を伴う低気圧が南岸を通過している。3時間おきで除雪を強いられる。
2月15日(日)雪
停滞
今日も雪、風ともに強く視界が効かない。停滞を決める。除雪を強いられるが、18:00頃には雪が止み風も弱くなっている。
2月16日(月)晴れ
ボーコン沢の頭先コル(07:00)~八本歯の頭(08:00)~北岳(13:00)~北岳山荘(16:15)
快晴の中出発。八本歯の頭からの下りで2ピッチFIXして北側を巻くように通過し、さらに1ピッチ懸垂下降した後1ピッチFIXして八本歯のコルに達する。コルからの登りでは埋もれかけた梯子場の急斜面で1ピッチFIXする。主稜線に突き上げる斜面の雪の着き方が少々いやらしく感じたので十分な間隔をあけて通過する。北岳ピークへは下りのみ2ピッチFIXする。さらに北岳山荘へは西側を4ピッチFIXをして通過する。
2月17日(火)雪
停滞(一度出発後)
06:30に出発するが15分ほど進んだところで雪、特に風が強く視界も効かないため危険を感じ引き返す。天気図では低気圧が通過し高気圧が張り出して来ているのだが、夕方まで悪天が続いた。
2月18日(水)晴れ
北岳山荘(06:00)~間ノ岳(08:00)~野呂川越(13:30)~横川岳先(14:30)
移動性高気圧が来るのがわかっていたので早めに撤収、出発する。強風で目も開けられない程だが快晴である。ときおり耐風姿勢をとりながらジリジリと進む。三峰岳はピークをトラバースする。下りは細いが雪が安定しており問題ない。風も徐々に弱まってくる。樹林帯は地図でルートを探しながら慎重に進む。信州大学のものと思われるトレースはほとんど消えてしまっていて、ワカンでのラッセルとなる。野口川越を過ぎ、横川岳先の樹林帯でテントを張る。
2月19日(木)晴れ
横川岳先(07:00)~伊那荒倉岳(10:30)~2676手前(12:30)
小林が疲れのためか37度の熱がある。少し様子を見るが何とか歩けそうなので出発する。リミット日ぎりぎりである。ルートファインディングとラッセルに苦労する。小林は途中から装備を抜いて歩かせる。小林の体調とこの先の天場のないことから考えて仙丈岳手前の2676手前コルにテントを張る。
2月20日(金)雪
2676手前(06:30)~仙丈岳(09:10)~小千丈岳(10:50)~大滝の頭(11:15)~仙水小屋(13:50)
昨日の天気図から午前中しか天気がもたないと予想していたが、既に小雪が朝から舞っている。風は強くない。視界は20m程だがうまくルートファインディングができた。千丈岳を過ぎた頃から風が急に強くなってきた。木幡のコンタクトレンズの調子が悪く眼鏡に代えたのだが痛みがあるようでペースが上がらなかった。予想された雪庇や雪崩の危険はそれほどではなかった。
2月21日(土)晴れ
仙水小屋(07:45)~仙水峠(08:15)~駒津峰(10:15)~駒ガ岳(12:15)~黒戸尾根七丈小屋(14:40)
今日はリミットの陽であり、08:00に出発できなければ戸台に向かうと昨夜決めていた。05:00の時点では雪であり、07:00近くになって雪が止み晴れ間がのぞき始めたのでぎりぎりの出発となる。駒津峰までは急登のラッセルでワカンを使用するが、1年2人はバテバテである。駒ガ岳直下の岩場は問題なく通過できた。黒戸尾根の下降も雪庇や鎖があるがザイルを出すほどではなかった。
2月22日(日)晴れ
黒戸尾根七丈小屋(06:00)~竹宇駒ガ岳神社(12:10)
梯子や鎖場の連続だがザイルを出すほどではなく、刃渡りも問題ない。下部の樹林帯ではルートファインディングが難しく1度ルートを見失い5分ほど戻り正規ルートを見つけた。竹宇駒ガ岳神社に着き、余韻に浸る。
全体を通して
目的に掲げていた1つである、「新メンバー間のコンセンサスの向上」という面では、6人という少人数での準備会、トレーニングや、天候が悪く長期の合宿になった分、縦も横の関係も意志が自然と伝わる手前まで向上したと思われる。実際山行中、例えば危険箇所でのザイルを出す判断など、1年の感じ方と4年の感じ方は違うわけで、逐一上級生は下の者に声をかけ全員の見解で判断を下すことができた。今後の山行についてもこのことはもちろん実践していくのだが、上級生は隊におけるザイルを出す基準、判断の感覚を養い、さらに下級生が自分の意見を素直に言える雰囲気作りをこれからも実践していこうと考えている。
2つ目に挙げていた「積雪期の諸技術の向上」において、生活技術に関してはほぼ出来ているが、体調不良者が出たこともこの技術にかかわることなので、油断せずに更に追求していく。体力に関しては長期の合宿になったことや、ラッセルが多かったこともあり、後半に1年の体力不足が出てしまった。トレーニングの充実と徹底を図るとともに自主トレーニングの重要性を認識させる。2年のザイルワークについては、支点の取り方やスピードに関してはほぼ出来ている。が、先に述べたザイルを出す基準、判断や、ルートの選定などの点で課題が残った。
計画を遂行することはできたが、各課題の追求と向上を更に進めて、油断することなく春山に望まなければならない。
本多直也