平成30年3月13日 加賀・白山御前峰頂上に全員で登頂する
2017年度 春山合宿報告書
日本大学山岳部
目的 | メンバーシップ、リーダーシップの向上 生活技術の確立、体力強化 |
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山域 | 加賀・白山 (念仏尾根往復) |
日程 | 平成30年3月8日(木)~平成30年3月15日(木) 移動1日、実働7日 |
メンバー | 3年 CL國谷良介、SL髙橋佑太 2年 川村洸斗、近藤 歩、新保裕也、田邊カレン、福島端流 1年 氏神拓真、野上博史、原島千尋、前田雄飛、村上洋道 計12名 |
行動報告
3月8日(木) 雨
新宿22:00,23:55~05:55,07:25金沢駅
直前に膝痛の為不参加となった山田に見送られ部室を出る。部室には大谷監督からの激励のメッセージと差し入れがあり、今年度最後の合宿に気合が入る。夜行バス2台に分乗して新宿を出発する。
3月9日(金) 雨のち曇り 5℃ 積雪280cm
金沢駅07:50~09:30馬狩10:00~12:00標高1,000mCS1
金沢は雨が降っている。マイクロバスで馬狩、トヨタ白川郷自然学校へ向かう。夜行バスでは十分に眠れなかったのか、皆出発と同時に寝てしまった。白川郷で目を覚ますと雨が上がっていた。トヨタ白川郷自然学校で下車し入山準備を整える。
出発して30分程雪に埋まった道路を歩いてから、ワカンを着けて尾根に取り付く。雪は昨日までの降雨と高温で締まっており歩きやすく、深いところでもせいぜい膝下まで沈む程度だ。豪雪地帯ということできついラッセルを予想していたが拍子抜けである。
2時間ほどで標高1,000m付近まで登り、計画通りここをCSとする。比較的平らな場所を整地しテントを張る。日が落ちると雪がパラパラと降ったりやんだりしていた。
3月10日(土) 曇りのち晴れ -2℃ 積雪300cm以上
標高1,000mCS1 05:10~09:00野谷荘司山(1,797m)~09:45もうせん平(1,750m)~10:40妙法山手前CS2
1年がパッキングに手間取り出発が遅れる。昨日の湿雪は夜のうちに凍りつき表面はカリカリ、アイゼンを着けて出発する。30分程登ると昨日の天場よりも広く快適そうな場所がありもう少し上がっておけばと後悔する。
野上がモナカ雪に苦労しバテ気味でペースが上がらない。標高1,250~1,350mの急な登りを越えるとしばらくは広い雪稜が続く。赤頭山は手前でヘルメットを着用しトラバースで通過、赤頭山から鶴平新道分岐までの稜線は細いので慎重に進む。分岐に出るとそれまでのガスが晴れ、白山が目に飛び込んできた。目指す本峰はまだまだ遠い。後ろを振り返れば剱から槍まで北アルプスがきれいに見える。夏に歩いた山々だ。
野谷荘司山からは野上の調子も回復し広い尾根をペースよく進むが、非常に暑く小さなアップダウンの連続が鬱陶しい。計画よりも大分早い為、天幕予定地の“もうせん平”を過ぎて妙法山手前の広い雪原まで進み天幕を設営した。
3月11日(日) 晴れのち雪 -5℃ 積雪300cm以上
妙法山手前CS2 05:00~05:30妙法山(1,775m)~08:50 P1,786.3m~10:30三俣峠CS3(1,970m)
妙法山の下りは雪が東側に崩落しかけていたため念のためロープをのばして通過する。そこからは比較的平らで広い尾根上だが、東側に雪庇が発達している箇所があるため寄り過ぎないように細心の注意をする。
夏道はシンノ谷へ下り西の尾根に移るが、今回は県境沿いの尾根をそのまま進む。登りになると原島、前田が遅れ始める。P2,041mへは東側が切れているため西寄りを登る。急な斜面だがアイゼンとピッケルをしっかりきめて慎重に登る。この登りで風が強く吹き始める。
天幕地の三俣峠は風を遮るものが無かったため、下りきらず少し手前の木々の脇に天幕を張り、さらに風防ブロックを作成した。設営した頃には雪も降り始めてきた。
3月12日(月) 晴れ -6℃ 積雪300cm以上
三俣峠CS3 06:00~07:00間名古の頭(2,123m)~09:15北弥陀ヶ原~10:20お花松原AC(2,250m)
強風のため出発を遅らせ日が出てからの行動開始とする。間名古の頭からは白山が大きく見え近づいてきたことを実感する。下りは所々岩が出ており危険な箇所は西側を巻いて行く。間名古の頭を過ぎ、うぐいす平、北弥陀ヶ原と広い雪原歩きに入ると、再び風が強くなり始める。
昨日に続いて登りになると原島が遅れるが何とかついてきている。お花松原手前では真っ直ぐ立っていられないほどの強風になる。バランスを崩さぬようゆっくり慎重に歩を進め、天幕場に辿り着く。お花松原には風を遮るものが無いうえにACでは最短でも二晩は越すことになるため、昨日以上に強固な風防ブロックを積む。かなり時間がかかったが快適なACができた。
明日のアタックに向けて、通常の夕食に加え監督からの差し入れのカレーうどんを食べて、皆満腹である。英気を養い眠りについた。
3月13日(火) 晴れ -2℃ 積雪300cm以上
お花松原AC 06:00~07:30大汝峰(2,684m)~08:10御前峰08:30(2,702m)~10:40お花松原AC
朝まで強風が予想されたため出発を1時間遅らせる。天気も良く風も昨日より穏やかな中出発する。雪崩の心配は無さそうなので、ヒルバオ雪渓上を進む。クラストしておりアイゼン、ピッケルがよくきまる。雪渓を登りきり広い雪原に出たらまずは大汝峰へ登る。
大汝峰からは剣ヶ峰と御前峰がきれいに見える。下りはクライムダウンを交えつつ慎重に来た道を戻る。御前峰へは西側の緩やかな尾根から上がる。雪に埋まり赤い屋根だけが見えている室堂ビジターセンターを横目にあっという間に山頂に到着。快晴の山頂からはこれまでの道程が良く見え、360°素晴らしい景色である。が、昨日まで毎日後ろを振り向けば見えていた遠くの北アルプス連峰が見えなかったのは残念だ。
集合写真を撮り下山を開始する。日射と高温で表面の雪は腐り始めているがまだ雪崩の心配はないだろう。登りと同様雪渓を下るが、下りでは2ピッチFIXして下降する。大人数でのFIX通過には時間がかかったが昼前には帰幕。疲れが溜まっている1年生は皆夕食まで寝ていた。
3月14日(水) 晴れ 0℃ 積雪300cm以上
お花松原AC 05:10~06:00北弥陀ヶ原~07:20間名古の頭~08:30 P1,786.3m~11:15妙法山(1,775m)~13:25もうせん平CS4
凍り付いた竹ペグの回収にてこずり撤収に時間がかかる。荷物も軽くなり帰りはハイペースで進む。P2,041mの急な下りはクライムダウンで通過。5日間毎日アイゼンで歩き続けたことで1年生のアイゼンワークも向上し、少しは安心して見ていられるようになった。間名古の頭は西側斜面からピークへ登る。始めのトラバースは少し緊張したがロープを出すほどではないだろう。
妙法山の登り、下りでは練習として2年生にロープを張ってもらった。ロープワーク、工作については概ね理解できているが、習熟度合いに多少差があるようだ。1年生は通過が遅い者、手順を十分に理解できていない者もいた。このままでは来年度の1年生に指導などできない。
妙法山を越えたら“もうせん平”までもう一踏ん張り。2日かけて登ったルートを1日で下りてきた長い行程であったが1年生はよく頑張って歩いた。
3月15日(木) 晴れ 4℃ 積雪300cm以上
もうせん平CS4 05:00~05:30野谷荘司山~06:30赤頭山(1,602m)~08:50馬狩~白川郷
鶴平新道分岐からの下りで腐った雪と大きく開いた亀裂に緊張を強いられる。5日前の登りと比べてかなり融雪が進んでいるようだ。赤頭山はロープを出して稜線沿いを越える。その後は危険箇所もなくあっという間に馬狩まで下山。白川郷まで40分程歩いて行動を終える。1週間ぶりに風呂に浸かった。
総括
2月合宿の終了後、急遽4年生の不参加が決まり3年リーダーでメンバー・山域ともに大きく計画変更となったが、私自身初めてのチーフリーダーとしての合宿であり目標のひとつでもあった白山での合宿を無事に完遂することができてまずはホッとしている。
連日の好天と予想に反してラッセルが一切無かったことで何だかあっさり終わってしまった気もする。それでもまだ課題が残った。まず1年生は自分のことで手一杯で周りを見る余裕が感じられない。体力に余裕が無ければ精神的な余裕は生まれない。2か月後には後輩に指導していかなければならないことを自覚しトレーニングに励んでほしい。
2年生は、昨年度の剱岳早月尾根や南アルプス縦走を経験した者には今回の合宿は物足りなかったと思う。しかし、いまだに撤収遅れなど細かい反省が出てくる。ここまで気象等の条件に恵まれた合宿でこのようでは、来年度新入部員を加えた大所帯でさらに難しい山へ登ることはできない。
(報告者:國谷良介)
番外編① ~ 春山合宿 白山に挑む : 2年生 近藤 歩 の場合
オレには昨年の春山合宿の事が常にのしかかっていた。わだかまりにしては余りにも大きく重たかった。ここに来るまで2年かかってしまった。どうやら他の同期より少しだけ時間がかかってしまったようだ。でも、これで少し吹っ切れたような気がする。
3月9日、合宿はひたすら登りが続く下部の樹林帯から始まった。探って、かわして、慎重に切り抜けた主稜線の雪庇帯。我々の他に誰もいない。白山全域でもオレ達だけかもしれない。長大な馬の背、遠く長くうねる稜線にオレ達だけのトレースを刻む。
登れど進めど近づかないAC。アイゼンを効かせ、細心の注意を払い1歩1歩進んだ大汝峰への頂稜斜面。3月13日、最高の天候に恵まれ全員で頂上に達する。共に登頂した仲間の笑顔は忘れない。この場所、この時間を共有できることを何よりも大切にしたい。
“長い稜線・遠い頂”…・下山して合宿が終わってみると、いつもの疲労感や充実感とは違う。不思議と達成感も湧いてこない。何とも言えない恍惚感だけが体を覆う。こんなこと、今までの合宿にはなかったかな。
ひとつ自分の中で新たな扉をこじ開けられたのかもしれない。
そぅ、オレは コンドウ・アユミ
番外編② ~ 春山合宿 白山に挑む : 1年生 氏神拓真 の場合
最終合宿である春山合宿は加賀の白山となった。近年、本学山岳部では足を踏み入れていない山域になる。積雪期では22年ぶりの入山となった。昨年の夏山合宿で剱から望むことができた白山、冬山合宿では槍の頂きから望むことができた白山。遠望できる山の中で、いつも白くそしてデカく、際立ってその存在感を放っていた。
昨年4月に入部、6月の初夏合宿から始まった一連の各合宿。当時、合宿や山行での訓練や部活でのラントレ・筋トレのひとつひとつを、積雪期の決算合宿にイメージとして繋ぎ合せることは出来なかった。だが、それは昨年の冬山合宿の槍ケ岳を経て、今回、白山の頂上に立った時、正にこの日のためにあるのかなと思った。
白山の頂上をあとにACへと帰幕する。何度も何度も主峰の御前峰を振り返る。紺碧の空に“白きたおやかな峰”はどこまでも、いつまでも、高く大きく、そして美しく身を横たえていた。
下山の日、入山地点でもある馬狩は寒い冬をようやく終えようとしていた。山は命の光を待ちわびていたかのように、うららかな春の日差しに満ち溢れていた。
そぅ、オレは ウジガミ・タクマ