8月3日 竜王岳東尾根を経て竜王岳頂上にて
2018年度 夏山合宿報告書(前半登攀合宿)
日本大学山岳部
目的 | 登攀技術の向上 |
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山域 | 北アルプス 剱岳(源治郎尾根、龍王岳東尾根他)~剱沢定着 |
日程 | 平成30年7月31日(月)~平成30年8月4日(木) 移動1日、実働3日、停滞1日 |
メンバー | 4年 L國谷良介 3年 野上博史 OB 横山 裕、賀来素直コーチ 計4名 |
行動報告
7月30日(月)移動日
新宿~富山駅
國谷、野上、賀来Cが部室に集合。横山OBとバスタ新宿で合流し、4人で夜行バスに乗り込み富山へ出発。
7月31日(火)入山日 晴れ
05:00富山駅~室堂08:40~11:30剱御前小舎~12:15剱沢BC
富山駅から地鉄、ケーブルカー、バスを乗り継いで室堂に到着。暑さと重荷でバテないようゆっくり歩き始める。ザックは1人40㎏程になったが、バテることなく良いタイムで剱沢へ着くことができた。キャンプ場はまだ空いていたので、広いスペースを見つけて設営した。明日は朝のうちは霧がかかる予報の為、源次郎尾根から別山の北尾根に変更する。
8月1日(水)別山北尾根 霧のち晴れ 12℃
剱沢BC04:50~05:15北尾根上~07:35別山北峰~08:45剱沢BC
キャンプ場から続く顕著な踏み跡を辿り北尾根上のコルまで登る。一部ガレた急斜面となるので落石に注意。
コルからも踏み跡を辿り尾根上を進む。別山岩場の上部にはボルトを打ち込んだ跡が多くあった。練習に使われているのだろう。リングボルトや残置ハーケンをよく見かけた。様々なルートをとって登ることが出来そうだ。岩場上部を歩いているうちにガスってきた。ロープを出す必要の無い易しいルートを選んで歩いて行くが、途中で訓練がてら FIXとスタカットで1ピッチずつロープを出す。源次郎尾根、八ツ峰に行く前に、2年生の野上にとっては丁度良い技術確認になった。
岩場を抜けると、別山北峰まではなだらかな尾根上を歩く。この頃にはガスが晴れ、気温も上がってきた。剱岳を眺めながら、別山を経由してBCに戻る。しっかりとした歩行技術があればロープの必要も無いやさしい岩稜だが、残置支点やハイマツ、ピナクルなどを使ってロープを出せば、下級生を剱岳の登攀に連れて行く前にシステムやプロテクションの取り方など技術レベルを確認できる丁度良いルートになるかもしれない。BCからきれいに見える別山岩場にも上ってみたいところ。
BCで一息ついた後は、野上に懸垂下降時のバックアップやカムの扱いについて指導し、夕食までのんびり過ごした。
8月2日(木)源次郎尾根 晴れ 11℃
剱沢BC03:45~04:45取り付き~09:35Ⅰ峰~10:35Ⅱ峰~12:10剱岳~15:40剱沢BC
まだ暗い中、体操をして出発する。クロユリの滝下部までは夏道を歩き、そこからはアイゼンを着けて雪渓上を歩く。20分程雪渓を歩くと源次郎尾根の取り付きについた。最初の3m程の岩場は賀来Cが登り、上からロープで確保する。手の届くガバが浮いており要注意。
その後は木登りが続き、核心の2段の岩は國谷がリードで登る。野上も難なく登れていた。この先の灌木混じりの岩稜は1ヶ所ロープで確保した。Ⅰ峰手前の一昨年トラバースした急斜面は危険なため稜線上を藪漕ぎで抜けた。日が昇ってくると非常に暑く、水分補給のペースには気を遣う。
Ⅰ峰からは主にクライムダウンで慎重に下降。Ⅱ峰への登りはホールドがしっかりとしており登りやすい。Ⅱ峰からの懸垂下降は頑丈な杭を支点にリングボルトからバックアップを取った。30m近い懸垂下降の機会はなかなかないので、野上には良い刺激となっただろう。コルからは浮石に注意して登り、1時間で山頂に着いた。渋滞は無く序盤に1パーティに抜かれたのみで、終始自分たちペースで登ることが出来た。
別山尾根からの下降は、合宿で1年と来た時の注意点などを気にしつつ慎重に下りる。野上は疲れ気味だが最後までよく頑張っていた。1人3Lの水も飲み切る勢いの非常に暑い1日だった。明日はCフェースの計画だが、源次郎尾根から見た長次郎谷の雪渓の状態があまり良くなさそうなので八ツ峰は中止。龍王岳東尾根の計画に変更する。
8月3日(金)龍王岳東尾根 晴れ 13℃
剱沢BC03:30~05:10雷鳥沢~06:30一ノ越~07:00龍王岳東尾根取り付き~11:20龍王岳~15:15剱沢BC
アプローチが長い為、出発時間を早める。雷鳥沢を経由して一ノ越へ向かう。一ノ越からは東一ノ越へ延びる登山道を5分程歩くと龍王岳東尾根へ続く踏み跡が現れる。20分で尾根末端に着いたが、そこからは取り付かず北側を谷沿いに登った。
Ⅰ・Ⅱ峰間のルンゼ近くまで上がり、リングボルトからⅠ峰へ直登するルートを國谷のリードで登る。出だしは残置ハーケンもある易しい岩を乗り越え広めのテラスに出る。クラックが走っておりカムもきめられる。ルンゼ脇を直上するつもりであったが、残置に惑わされ少しルートが逸れた。Ⅳ⁺程度をカムで支点を取りながら登り、50m程のばしたⅠ峰直下でピッチを切る。ロープが大きく屈曲し流れが悪く、途中で区切れば良かったと反省した。少し横に目をやると残置がいくつもありルートは様々なようだ。
2ピッチ目は賀来コーチのリードで登る。出だしが少し悪いが、越えてしまえばすぐにⅠ峰ピーク。稜線を少し歩いてピナクルで最終支点。屈曲しないようルートを取れば1ピッチで登れただろう。Ⅰ峰からⅡ峰、Ⅱ峰からⅢ峰は主に稜線上より北側を巻いて行く。ロープは必要ないが所々浮石があり注意する。Ⅲ峰を越えると岩壁が現れる。10m程を残置ハーケンから支点を取りながら登り、上部は傾斜が緩みハイマツ漕ぎになり、開けた場所に出た。ここからは踏み跡を辿ってすぐに龍王岳山頂に着く。帰路は一ノ越、雷鳥沢を経由して剱沢に戻る。連日の長時間行動に野上は疲れ果てた様子だった。今回は計3ピッチロープを出したが、もっと弱点を突けばロープの必要なく通過できるルートもあっただろう。また、さらに難しい点を突けばより楽しいクライミングが出来そうな面白いルートであった。雷鳥沢をベースにすればアプローチも楽で入門には丁度良いだろう。
8月4日(土)停滞 晴れ
汗にまみれた服を洗濯し、シュラフも干す。夏山合宿前半定着本隊の入山をのんびり待つ。ストレッチをしてしっかり疲れを取って、明日からの合宿に備える。
(報告者:國谷良介)