野猿返し 渡渉点にて (左︰國谷コーチ 右︰4年柴田)
日本大学山岳部
山行報告書
目的 | ナチュラルプロテクションの設置方法を学ぶ マルチピッチクライミング、ロープワーク技術の向上 |
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山域 | 小川山・ 廻り目平 |
期間 | 令和4年7月8日(金)〜9日(土) |
メンバー | OB L.國谷良介コーチ 4年 米山未羽、柴田亮 計3名 |
行動報告
7月8日(金) 曇りのち晴れ 26℃
5:40新宿駅集合、國谷コーチの車両で移動~9:10東俣沢林道駐車スペース9:30~9:45野猿返し取り付き9:50(クライミング開始)〜13:30野猿返し頂上(懸垂下降)14:00〜13:15 東俣沢林道脇駐車スペース〜廻り目平キャンプ場
早朝、新宿駅で集合し國谷コーチ車で出発する。道中小雨がぱらついていた事が気がかりであったが、目的地に近づくにつれて雨は止み、晴れてきた。廻り目平を通り過ぎ、東俣沢林道脇の駐車スペースに駐車する。道の左側に「キャンプ禁止」という看板が2つ連続して立てられているところが目印となる。駐車スペースでギア等の準備を整えてからすぐに出発する。
アプローチ
「キャンプ禁止」の看板の奥に進んですぐにある堰堤の上から石を渡って渡渉をした。そこからおよそ10分ほどケルンを辿りながら歩くと野猿返しの取り付きに到着する。やや踏み跡が多いため迷わないように注意する必要があるが、周囲をよく観察してケルンを辿れば問題なく到着することができる。
-野猿返し(7p) 9:45
リードは3ピッチ目以外全て國谷コーチ
・1ピッチ目(Ⅲ+)40m
登攀開始前に取り付きの岩で、セットされているカムやナッツの回収方法について國谷コーチに教えていただく。その後9:45に登攀を開始した。最初に傾斜の緩い階段状のフェースを登って左のバンドを歩いて一段上がると終了点に着く。登り始めてすぐの右側にボルトがあるが、これは別ルートのものであるため使用しなかった。このピッチは縦ピンチが多く、グレードは優しいが楽しめた。ピッチ終了点は立木。
・2ピッチ目(IV+)40m 10:25
1ピッチ目の終了点から少し歩いて、2ピッチ目の壁の前から登攀開始した。周囲には木がいくつも生えていたため、適当な木を選んでビレイする。登り初めは短くて優しいフェース。そこを一段上がると顕著な横クラックの入ったフェースがある。そこを進むと出てくるカンテ状の岩を登り、リッジ手前のピナクルまで進む。ピッチ終了点はピナクル。ビレイ点は広く安定していた
・3ピッチ目(リッジの歩き)50m
このピッチはリッジの歩きであった。國谷コーチの許可が下りたため、柴田、米山はカムや立木等のナチュラルプロテクションで途中支点を取りながらリードの練習をした。適度な大きさの岩の割れ目が多く、ナッツ、カム共に有効であった。終了点手前には大きな浮き石があるため要注意。なお、当該の石にはテーピングで✕マークが記されている。ピッチ終了点は立木。
・4ピッチ目(5.7)40m 11:25
4ピッチ目は野猿返しの核心ピッチである。岩峰正面の凹角〜ピナクルを右に乗り越えて登っていく。ピナクルを右に乗り越えて登っていくところは少し難しかったが、概ねグレード通りの難易度に感じられた。ピッチ終了点はピナクル。
180cmのスリングをかけた。
・5ピッチ目(Ⅲ)50m
カンテを右に回り込んで少し歩き、階段状の岩場を超える。その後樹林帯をまた少し歩き、立木でビレイをした。
カンテを回り込んだあとの短いトラバースは細かい浮き石が多いため、足元に注意して歩きたい。
・6ピッチ目(Ⅱ)60m
5ピッチ目の終了点から少し歩いて岩壁の前から登り始める。
このピッチと前後のピッチはとても優しく、登山道中のちょっとした岩場程度の難易度に感じられた。途中支点は立木にスリングを伸ばした他、1箇所カムも使用した。
ピッチ終了点は立木。
・7ピッチ目(Ⅱ)80m 13:30
13:30終了点到着。終了点直前に少し階段状の岩場が出てくるが、それ以外は優しく、特別に注意すべき点はなかった。
終了点の木には懸垂下降用の残置ロープ、安全環付きカラビナがあった。そこから1ピッチの懸垂下降をして、徒歩で下降に移る。下降路は踏み跡が明瞭なため、迷わずに下りられた。川の音が目印。
東俣沢林道脇の駐車スペースに帰着後,荷物を軽くまとめて廻り目平キャンプ場に向かった。金曜日の夕方だがキャンパーはやや少なく、よいスペースが空いていた。トイレ・水場の近くにテントを張り夕食後、時間に余裕があったため焚き火をした。
その後翌日に備えて早めに就寝する。
7月9日(土) 晴れ 27℃
廻り目平キャンプ場5:00~廻り目平第一駐車場〜セレクション取り付き5:40〜8:30セレクション終了点8:30〜9:30廻り目平第1駐車場〜新宿駅(解散)
この日は土曜日ということで、人気ルートであるセレクションの混雑が予想されたため、4時起き5時発とした。
時間通りに起床、朝食、撤収を済ませて車に荷物を詰め込み、廻り目平第一駐車場に向かった。到着後、駐車場でハーネスを着けてセレクション取り付きに向けて出発する。
アプローチ
駐車場からは屋根岩パノラマコース・かもしか遊歩道の看板の方に歩くと、やがて分岐岩が出てくる。それを右に曲がるとすぐに石の魂岩が見えてくる。これを左手に見ながら進んでいくと、段々と斜面が出てきて、ほどなくして取り付きに到着する。ところどころにケルンがあるほか、取り付きにはとても綺麗なクラックがあるため、取り付きは分かりやすい。
5:40、取り付きに到着すると心優しい女性クライマー2人組がいた。彼女たちに「お先にどうぞ」と言っていただいたため、お言葉に甘えて先行させていただいた。おそらく一番乗りであった。
-屋根岩二峰 セレクション(6p)
6:00起床~研修所内にて終日研修~22:00就寝
リードは全ピッチ國谷コーチ
・1ピッチ目(5.7)10m
気持ちの良いハンドサイズのクラック。
短いが、真っ直ぐではなく途中で右上するため、クラックに慣れていないと少し難しく感じるかもしれない。柴田は苦戦していたが、2番のカムがよく効いていたため、A0して抜けた。ピッチ終了点はPETZLのハンガーボルト。
・2ピッチ目(5.8)30m
ザ・花崗岩スラブといった風貌のスラブ。
細かいホールドが多くフットホールドも乏しいが、フリクションが効くため、怖がらずに足を信じてしっかり乗れば比較的容易に登れる。途中支点にハンガーがあるが ランナウトしているため、リードは恐怖核心である。
ピッチ終了点はPETZLのハンガーボルト
・3ピッチ目(5.6)40m
チョックストーンのあるチムニーをバックアンドフットで登る。途中からはチムニー内にホールドが出てくるため、フェース登りも混じえて登った。
ここはザックが大きいと少し邪魔になる。
チムニーを抜けたら、少し先の太い立木でビレイ。
・4ピッチ目(5.8)50m
出だしは幅の広いクラック。足を上手く決めながら進むと上手く登れるが、手の幅が広く、核心の1つと言える難易度であった。ここではザックが引っかかり、かなり動きの妨げになった。リードをする人はフォローにザックを預けた方が良いと思われる。
出だしの少し難しいパートを抜ければ、あとはスラブを乗っ越してから凹角の優しいクラックを登って終了点に着く。
ピッチ終了点の立木はルンゼの上部と下部に1本づつあるが、ルンゼの下部のものを使ったほうが、次のピッチのビレイがしやすくてよい。(屈曲しづらい&クライマーを見やすい)
・5ピッチ目(5.7)20m
大トラバースのピッチ。出だしの岩が染み出しにより濡れており、手も足もツルツルと滑る。チョークを大量につけてトラバースに入るが、そこの岩陰もジャミングしようと手を入れた先が濡れており、緊張を強いられるクライミングとなった。
フットホールドは特にないが、緩いスラブ状になっているため、手でしっかりとホールドを捉えられていればスメアリングしていける。
トラバースの途中には残置のハーケンがひとつあったが、使用せずに#4のカムを設置した。
最後は楽しくほふく前進をして進む。
ピッチ終了点はPETZLのハンガーボルト+ラペルリング
・6ピッチ目(5.9)20m 核心、最終ピッチ
Y字に走っているクラックの左を登る。右はセレクションオリジナルルート(5.9)トポによるとワイドハンドクラックとのことであったが、フィストジャムがよく決まった。
ここの足幅は少し広いが、落ち着いて探ればよく決まる。カムは#2,3が有効。
最終支点は立木。8:30クライミング終了。
終了点は広かった。また、良いペースで登ることができて時間に余裕もあったため、10分程度休憩を取ってから下山に移る。
最初はワイヤー伝いに2峰を回り込むように歩いて稜線に出る。そこから3峰とのコルまで踏み跡伝いに歩くと左手に斜面が出てくるので、その斜面を下っていくとやがて廻り目平第一駐車場に到着する。行きに見える「パノラマ遊歩道→」等の看板が目印になるので、もし目にしたら覚えておくとよい。9:35に廻り目平第一駐車場帰着
装備をパッキングして車に積み、新宿への帰路につく。
振り返って
今回の小川山クライミング山行では、今までに行った城山や獅子岩でのマルチピッチの経験を生かし、とても良いペースで登ることができたと思う。また、本山行の目的であったナチュラルプロテクションの設置技術も実践を挟みながら詳しく学ぶことができてよかった。マルチピッチ技術の基本はある程度身についたように思うので、今度は後輩を連れて優しいマルチに行きたい。
また、今回のクライミングは終始アブやブヨの大群に襲われながらの行動となった。この時期に小川山に来る人は虫除けスプレーと蚊取り線香を必ず持参することを強くおすすめする。
國谷コーチには、朝早くからの車の運転やほぼ全ピッチにおけるリード等、大変お世話になりました。ありがとうございました。