3月7日 十勝岳頂上にて~後列左から高橋、山崎、新保、福島、氏神、村上
前列左から國谷、川田、喜多嶋、野上、前田
山行報告書
日本大学山岳部
目的 | 大雪山十勝岳連峰全山縦走 |
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山域 | 北海道中央高地(富良野岳~十勝岳~トムラウシ~旭岳~黒岳) |
日程 | 平成31年3月4日(月)~平成31年3月17日(日) 移動1日、実働10日、停滞3日 |
メンバー | 4年 CL國谷良介、SL髙橋佑太 3年 新保裕也、福島端流 2年 氏神拓真、野上博史、前田雄飛、村上洋道 1年 川田真人、喜多嶋拓海、山崎颯太 計11名 |
行動報告
3月4日(月)移動日
札幌(バス)~富良野(JR)~上富良野(バス)~十勝岳温泉思惟林
札幌駅からバスに乗り込み出発。富良野駅でJRに乗り換え。上富良野駅から再びバスで十勝岳温泉思惟林に到着。バス停横のスペースに天幕を張らさせていただく。日が沈む前に入山口を確認に行く。夏の偵察で道路脇に付けた赤布は除雪の雪で埋まっていたが、おおよその場所は確認できた。北尾根取り付きまでの渡渉は、スノーブリッジは大きく発達していなかったが、部分的に積もった雪と浅瀬をつたっていけば問題は無さそうだ。
3月5日(火)入山日 晴れのち霧 −8℃
十勝岳温泉思惟林05:00~(富良野岳北尾根)~09:15ホコ岩~11:35富良野岳~13:00富良野岳と三峰山の鞍部CS1
テントを撤収し出発。路肩に積まれた雪山を乗り越えて、富良野岳北尾根の取り付きまで渡渉する。昨日の偵察通り雪をつたい、浅い流れを数歩歩くのみで問題無く通過。北尾根取り付きからはアイゼンを装着し、スキーヤーのトレースを辿って行く。ザックは重いがラッセルがほぼ無く順調に進む。
連日の悪天覚悟で北海道に来たが、いきなりの快晴スタートに浮かれながらホコ岩に到着。ホコ岩はトップからの下降を警戒しヘルメットとハーネスを着けたが、東側から簡単に巻けそうだったので巻く。雪崩の心配も無く問題無く通過。巻いている記録がほぼ無かったが、もしやホコ岩の乗っ越しが北尾根の醍醐味だったのか。ホコ岩過ぎに天幕予定だったが、余裕があるので先に進むことにする。
ホコ岩を越えると稜線が徐々に細くなってくる。ナイフリッジは東側をトラバースで2度巻く。急斜面だが雪の状態も良くアイゼンがしっかり効くので、注意しながら慎重に通過。雪の状態やメンバーの力量次第ではロープを出した方が良いだろう。この頃からくもり風が強く吹き始めた。頂上直下の最後のナイフリッジは巻きが厳しいのでリッジ上をロープを出して通過。ここからすぐに富良野岳山頂に到着。晴れの山頂には1歩間に合わず、景色の無い中記念撮影をして先へ進む。
浮かれていた朝の快晴が嘘のような強風とホワイトアウト。やはりそんなに甘くはなかった。ルートファイデイングに気を付けながら富良野岳と三峰山の鞍部まで下り、なるべく風を遮れる山影にテントを設営する。風防ブロックを積むのに苦労した。幕営地の積雪は80cm。
3月6日(水)停滞日 霧 −10℃
1日荒天予報の為停滞。昨夜は風が強くてなかなか寝付けなかった。日中、外は風が強くホワイトアウト。
3月7日(木) 晴れのち雪 −14℃
CS1 05:10~07:55上ホロカメットク山~09:35十勝岳~12:50美瑛岳~14:30美瑛富士~14:50美瑛富士避難小屋CS2
朝は無風快晴。偶に吹き溜まりで膝下まで埋まるが、ほとんどはクラストした雪面にアイゼンが良く効き歩きやすい。三峰山で川田が吐き気を訴えた為、長めの休憩を取る。すぐに回復し体調も問題無さそうなので先へ進む。上ホロカメットク山の登りで前十勝からの火山ガスを浴びて激しく咽る。風が弱い為、ガスが流れず鞍部に溜まっているようだ。上ホロカメットク山頂から前十勝火口の噴煙とルート上に溜まっている場所が良く見えたので、十勝岳手前まで部分的に目出帽やマスクで口元を隠して通過した。
十勝岳の登りで川田が遅れ始める。皆で鼓舞して登りきり、快晴の山頂を満喫する。十勝岳を越えるとしばらく起伏の無いだだっ広い地形になる。視界が無いとルートファインディングには非常に苦労しそうだが、この日は晴れていて助かった。広い地形が終わり、稜線が顕著になってくると美瑛岳までアップダウンが続き疲労が溜まる。さらに少しずつ霧に覆われ風が強くなってきた。
美瑛岳は夏道の分岐あたりにザックをデポして空身で往復。景色も見えなくなってきたので写真だけ撮ってすぐに引き返し、往復20分。重いザックを再び背負ったら、鞍部まで下り美瑛富士に登る。美瑛富士山頂からは美瑛富士避難小屋に向かって一直線に下降した。避難小屋脇にテントを設営する。避難小屋は扉が半開きで、中に大量の雪が吹き込んでいたので入り口を除雪し、中の雪をかき出し、扉を閉めて使用できるようにしておいた。積雪は110cm。明日は荒天の為、停滞とする。
3月8日(金)停滞日 風雪 −16℃
1日中風が強く、テントが押される。降雪はそれほど無い。寒かった。
3月9日(土) 晴れのちくもり −8℃
CS2 05:20~06:50ベベツ岳~09:10オプタテシケ山~10:45双子池~12:20カブト岩CS3
晴れており星が良く見えるが風が強い。撤収中に銀マットが飛ばされ紛失した。撤収に時間がかかり出発が遅れる。
西からの風を避けるため東側の斜面をトラバース気味に登っていく。オプタテシケの登りは急なうえに強風に煽られ少し怖い。狭い山頂で記念撮影して下降を開始。夏の偵察から下り始めの崩壊しかけた岩稜を警戒し頂上直下でヘルメットとハーネスを着けていたが、良い感じで雪が付いており必要無かった。双子池への急な下りに入ると雄大な雪原とトムラウシまでの稜線が目に飛び込んでくる最高の景色。早くも今合宿のハイライトか。
計画は双子池に天幕だが早く着いたので少し歩を進める。しかしここから雪の被ったハイマツ帯にズボズボはまり大幅なペースダウン。1時間半かけてカブト岩まで進み、巨岩を風除けに天幕を設営する。積雪は105cm。
3月10日(日) 風雪のち晴れ −9℃
CS3 05:25~07:25コスマヌプリ~11:20ツリガネ山~12:05ツリガネ山過ぎの雪原CS4
喜多嶋のワカン装着が遅く、出発が遅れた。風が強く視界も悪いがコンパスを頼りに進んで行く。地面は雪に覆われているものの、所々うっすら登山道が見えルートファイデイングはかなり助けられた。昨日の反省に出発からワカンを着けたが、結局ハイマツの落とし穴にハマり続けペースが上がらない。強風とホワイトアウトの上、どこを歩いても数歩歩いては落ちるの繰り返しでイライラし体力を消耗する。
ツリガネ山過ぎの鞍部から、風を避けるため東側の斜面を少し下った標高1,500mくらいの雪原に天幕を設営する。設営し風防ブロックを作成しているうちに晴れてきた。積雪160cm。かなりの強風とホワイトアウトでの行動となったが、道迷いや凍傷が出なくて良かった。この日は停滞でもよかったかもしれない。
3月11日(月) 晴れのち風雪のちくもり −8℃
CS4 05:01~06:20三川台~09:45トムラウシ山~10:20北沼~11:55ヒサゴ沼避難小屋CS5
晴れていたが出発してすぐに曇り始めた。昨日より落とし穴が減り順調に進む。三川台に上がると風が強まりホワイトアウト。コンパスを確認しながら南側の縁沿いに進んだが、視界10m程となり南沼に気付かずそのまま南寄りにスルー。地形図とコンパスを頼りにルートに復帰しようとするも完全に迷ってしまった。仕方ないのでGPSで現在地を確認し、南沼キャンプ指定地までルートを修正し、そのままトムラウシに登る。山頂直下がカリカリの急斜面で緊張する。山頂はガスの中で景色無く残念。
トムラウシからヒサゴ沼までは丘のような小ピークがあちこちに並びルートが分かりにくいが、幸いにもトムラウシの下降から徐々にガスが取れて視界が効いたので迷うことなくヒサゴ沼に到着。避難小屋の脇に風防ブロックを積んでテントを設営する。積雪175cm。
3月12日(火)停滞日 風雪 −7℃
荒天の為、停滞。風が強く雪降っている。風防ブロックの中に雪が吹き溜まり、12時頃に除雪する。19時半にもう一度雪かきをしてから就寝。今年度は前合宿までは少雪、また昨年度は比較的天気に恵まれた合宿が多く、1年生どころか2年生も初めてのまともな雪かきだったようだ。
3月13日(水) 晴れのち雪 −7℃
CS5 06:30~07:25化雲岳~08:25五色岳~09:10忠別岳避難小屋CS6
朝天気が悪い予報の為、出発を一時間遅れの6時にしたが、撤収に時間がかかりさらに30分遅れる。1週間経って荷物もだいぶ軽くなり久々の青空の下気持ちよく歩く。化雲岳の山頂からは白雲岳や旭岳方面が良く見えた。まだまだ先は長い。
起伏の無い雪原を五色岳まで直進し、五色岳から忠別岳避難小屋へも直接下る。避難小屋は入り口が雪に埋もれていた。だいぶ早く着いたが、次の白雲岳避難小屋までは時間がかかりそうなのでここまでとする。小屋横に3m以上の積雪があり、時間もあるので雪洞を掘ってみる。4時間以上かけて全員が寝られる広さになりやっと落ち着く。重労働に皆疲れ切っていた。せっかく苦労して雪洞を掘ったというのに今夜は大して強風にならなかったのは残念だが、初めての雪洞泊も良い経験になっただろう。
3月14日(木) 雪 −14℃
CS6 05:00~06:25忠別岳~10:55白雲岳避難小屋CS7
雪が降っているが、風はそれほど強くない。小屋から真っ直ぐ忠別岳を目指す。山頂に着くと風が強くなり視界も悪くなってくる。忠別岳を下り忠別沼手前でトップが東側の尾根に入り込みそうになったのを修正する。
忠別沼からは平坦な地形が白雲岳避難小屋まで続く。視界が悪いが東側の縁に沿って行けば迷うことは無い。雪が風で飛ばされて所々地面の石が露出していた。低温と強風で寒いのに、景色の無い単調な斜面をただひたすら歩くだけで余計に辛い。やっと白雲岳避難小屋に到着しテントを設営する。夏の綺麗に整備された幕営地は冬も真っ平で快適だった。積雪は30~40cm。
3月15日(金) 晴れのちくもり −11℃
CS7 09:40~10:20白雲岳~10:40 CS7
荒天予報の為停滞とし6時起床。昨夜は寒くてあまり眠れなかった。停滞のつもりだったが、予報が外れ思いの外晴れていたので白雲岳に登っておく。夏道は無視して小屋の目の前の急斜面を直登。ここまでの縦走路を振り返りたかったが、山頂はガスってしまった。1時間でピストンを終え、午後はのんびり過ごし疲れを癒した。
3月16日(土) 雪のち晴れ −10℃
CS7 04:50~07:10北海岳~09:00旭岳~12:40北鎮岳~13:45黒岳石室CS8
雪が降っており、視界が悪い。白雲岳分岐に向かうつもりが小泉岳へ逸れてしまった。道標を頼りに修正し北海岳へ進む。アイゼンでもあまり沈まない歩きやすい雪面が続く。白雲岳ピストンを昨日済ませたことで裏旭キャンプ指定地には計画より早く着いたので、旭岳ピストン後、黒岳石室を目指すことにする。旭岳は1時間弱で往復。北海道最高峰も山頂からの景色が無く残念。
裏旭キャンプ指定地から間宮岳分岐へ戻りは、行きのトレースが消えホワイトアウトでルートロス。同じところを行き来してルートを探し無駄に時間を喰ってしまった。雪の深い所だけでも赤旗を立てておくべきであった。御鉢平の周回に戻ると天気が回復し始め、北鎮岳からは晴れた景色を眺めることができた。吹き溜まりで屋根まで埋まった黒岳石室に到着し行動終了。積雪は165cm。
3月17日(日)下山日 くもりのち晴れ −9℃
CS8 05:10~05:45黒岳~08:55層雲峡
20cmほど雪が積もっていた。撤収に時間がかかり出発が遅れる。最終ピーク黒岳の山頂は生憎のくもり。写真を撮り東側の急斜面を下降開始。昨日の降雪もあり腰まで埋まるパウダーがリフト降り場まで続いた。この雪をスキーで滑られないのは勿体無い。リフトからロープウェイ黒岳駅までは圧雪されており歩きやすい。ロープウェイには乗らず歩いて下山。再びトレースの無い道をラッセルしていく。雪が深いが下りなのでそれほどきつくはなく良いペース。途中夏道を逸れ急斜面の下降に入ってしまったが、問題無く下りきり層雲峡に下山。札幌に帰って皆でジンギスカンを食べよう。
ふりかえって
山容・気象と普段とは大きく異なる山域、初冬・冬山合宿の失敗による経験値不足、10人以上のパーティでの長期山行と、単純な山の難しさ以外の要因も重なった春山合宿だったが、無事成功で終えることができた。
エスケープがあまり無い長期山行で一人でも崩れたら下山せざるを得ない中、2,3年は昨年度の凍傷を反省にしっかり下級生の状態を見てケアできており、1人の体調不良も出さなかった。また、2月合宿ではメンタルの弱さを見せていた1,2年も少し余裕を見せ成長を感じさせてくれた。技術的な面では、ロープを扱うような場面はほぼ無かったが、その分読図、ルートファインディング能力は大きく成長できただろう。ホワイトアウトと難しい地形に迷いながらも、よく観察し徐々に最適なルート選択ができるようになってきた。
しかし、初冬・冬山合宿分の積雪期の経験不足も今合宿ではまだ解消しきれずに残ってしまったミスや反省もある。まずはこれらを解消するべく次年度のGW合宿を経て、成長した姿を新入部員に見せて欲しい。
大人数の部員を抱えての活動は難しく、現在のこのメンバー構成、力量ではこれが現状精一杯の山だっただろう。しかしまだ成長の余地は有り余っている。これを埋めていけばよりテクニカルな山にも挑戦していけるだろう。後輩達には是非とも早いうちに目標を明確にしてそれに向かって取り組んで行ってもらいたい。
何はともあれ、今年度の年間目標に置いて活動してきた、大雪山十勝連峰全山縦走を達成することができて満足しています。1年間サポートしていただいた監督、コーチ、OBの皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。
(報告者:國谷良介)