湯俣先吊橋
1998年 五月山行 北アルプス 槍ガ岳 硫黄尾根
期間 | 平成10年4月25日(土)~5月4日(月) |
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メンバー | 本多4、深沢3 |
ルート | 硫黄尾根~槍ガ岳~横尾尾根 |
地図: 槍ガ岳硫黄尾根ルート図
4月25日(土)雨~曇
七倉(06:40)~高瀬ダム(07:45)~湯俣(11:45)~硫黄尾根取付(13:30)~稜線上樹林帯(14:30)~樹林帯(14:30)~樹林帯CS(15:50)
雨の大町駅を出発。七倉でタクシーを降りて歩き始める。高瀬ダムのジグザグの登りは雨と重荷とでくじけそうになるが、逆に闘志が湧いてくる。ダムから湯俣までは倒木が道をふさぎ、斜面につけられた木道は傾いている。なぜか側溝にはカエルが異常繁殖しており300匹以上はいた。湯俣付近も倒木が多く道が埋まっている。湯俣先の吊橋はしっかりしているが、吊橋手前のトラバースが残置FIXも古くいやらしい。水俣川左岸は雪がなく、濡れたガレのいやらしいトラバースになっていた。硫黄尾根取付点は、左岸の天幕可能な広い河原がある箇所を5m程登った所である。ケルン、赤布あり。藪こぎをして稜線上に出て、P1手前まで向かうが全く雪がなく、仕方なく先程稜線上に出た所にあった残雪を求めて引き返し、テントを張る。
4月26日(日)霧~晴
樹林帯CS(08:20)~硫黄尾根ジャンダルム群P1(11:30)~P3(12:40)~P5(14:20)~P5(14:20)~P6(15:00)~小次郎のコルCS(16:00)
P1までの樹林帯の急登は藪こぎを強いられる。赤布は多少ある。硫黄岳ジャンダルム群はかなりもろい。P1の直登で細引10mを張る。P2は問題なく、P3のピークからは千丈沢側に50m懸垂下降する。そのまま千丈沢側のいやらしいトラバースをしてP4に出る。P5は右側を登る。P6は直登。P6のピークは広く幕営可能。小次郎のコルまでの下りはハイマツの急斜面で気が抜けない。小次郎のコルには何とか雪がありホッとする。幕営。
4月27日(月)晴
小次郎のコルCS(05:40)~硫黄岳(10:00)~硫黄台地(11:50)~雷鳥ルンゼ下降点(13:30)~南峰手前コルCS(16:10)
硫黄岳へはもろい岩場(凹状雪壁といわれるところか?)を直登する。雪は着いていない。その先の小コルからアイゼンを履く。雪の上を左稜線に出るまで直登する。左稜線に出てからは稜線の右の斜面を登り硫黄岳に達する。ピークから硫黄台地までは背を越すハイマツにかなり苦労する。硫黄台地はのっぺりとした雪の平坦地で、ガス時はルートファインディングに気を使うだろう。その先の雷鳥ルンゼ下降点は背を越すハイマツに隠れており、なかなか見つからなかった。南峰まで南西に伸びる顕著な尾根の右側を巻き降りるようなルンゼである。まず背を越すハイマツを支点に西南西に50m懸垂下降する。そこから南西に落ちている顕著なルンゼ内を50mX3ピッチ下降し、1ピッチで稜線に出る。ルンゼ内には雪が残っており、スノーバーで支点を取った。南峰には雪が見られなかったため、手前のコルにテントを張った。
4月28日(火)晴
南峰手前コルCS(05:30)~赤岳ジャンダルム群P4・5のコル(11:50)~P6(11:50)~中山沢のコルCS(17:50)
南峰を越えて赤岳ジャンダルム群の手前で雪が着いていないためアイゼンをはずす。アンザイレンし、P1、P2は右から巻く。P3は直登。ここまで50mX3ピッチ。P4は1ピッチで直登し、下りは懸垂下降25m。さらに1ピッチでP5の取付に達する。P5は左からもろい岩を1ピッチ登り、リッジ上を1ピッチで越える。ここからP6取付迄はザイルなしで行けた。取付で再びアンザイレンし、右から逆くの字型に2ピッチでピーク。ピークから懸垂下降50mX2回。支点のハーケンやシュリンゲは古く、岩が脆いため要チェックである。P7は左のルンゼから取付き、5ピッチでピーク。ピークから懸垂下降50m。P7はリッジ上を行き、ピーク直下は左から巻く感じで登る。ピークのやや左下に出ないと懸垂の下から離れてしまう。ここまで5ピッチ。ピークから懸垂下降50m。さらに雪渓上を50m程トラバースして中山沢のコルに達する。赤岳ジャンダルム群は岩が非常に脆く、ハーケンも信用できずに緊張の連続で疲れる。緊張感、集中力の持続が必要不可欠である。
4月29日(水)霧~曇時々晴
中山沢のコルCS(06:20)~赤岳主峰群Ⅱ峰(09:20)~4峰(14:30)~白樺平(18:00)
朝ガスっていたため出発を遅らせる。Ⅰ峰はくの字型にルンゼ状を2ピッチ登り、さらに1ピッチで小コルに出る。Ⅱ峰は左の雪の上を1ピッチトラバースし、Ⅲ峰へは3ピッチで達する。Ⅲ峰の下りは左の雪の急斜面を1ピッチクライムダウンする。Ⅳ峰へは5ピッチで、リッジ上を登り最後は右から。Ⅴ峰ははっきりせずに脆い小ピークが連続し、白樺平手前の小コルまで8ピッチであった。白樺平は広くて良い天場であった。赤岳主峰群も赤岳ジャンダルム群同様岩が非常に脆い。
4月30日(木)晴
白樺平CS(06:00)~西鎌尾根分岐(07:45)~千丈沢乗越(10:30)~槍ガ岳CS(12:00)
西鎌尾根分岐までの2つのピークはリッジを直上気味に登るが、藪が多い箇所は右の雪渓を登る。分岐から槍までの南面は夏道が出ている。特に問題もなく槍に着く。肩から穂先まで雪がない。硫黄尾根では誰にも人に会わなかったが、槍の小屋付近にはたくさんの人がいた。
5月1日(金)霧
北鎌隊の到着を待機
朝から槍はガスに包まれている。風はない。無線交信ができず、北鎌隊は今日は来ないと思っていたが、16:30頃現れて合流をする。元気に5人がそろった事がなんともうれしい。
5月2日(土)風雨
停滞
前線による風雨が激しく、横尾尾根を考えて停滞とする。フライが破れて浸水するほどの激しさであった。
5月3日(日)風雨
停滞
昨日と同じ気象のため停滞とする。夕方になってようやく風雨が弱まってきた。フライは修理不能だが、ポールは曲がるだけで何とか持ちこたえた。天気図からは明日の好天が予想される。
5月4日(月)晴
槍ガ岳CS(12:00)~天狗のコル(07:30)~横尾の歯(09:20)~P3・4のコル(13:30)~横尾(14:30)~上高地(17:30)~松本駅(11:00)
快晴の中出発。南岳までは所々夏道が出ている。分岐から天狗のコルまではグサッた雪と岩のミックス帯となっており、ダンゴを落としながら慎重に行く。横尾の歯は雪が着いておらず残置FIXが出ている。残置FIXは信用できないくらい古い。アイゼンをはずして慎重に通過する。春合宿の時と比べて格段にやさしい。その先のP6、P5、P4の下りも雪がなく苦しい藪こぎとなる。春合宿の時の危険個所のいくつかには丈夫な残置FIXがあり、それと木をつかみながら下る。それも3ヶ所ぐらいであとは全く問題なかった。藪こぎの連続なのでP3からは小ルンゼの雪渓を登山道まで降りる。雪は安定しており、落石さえ気をつけてれば問題なかった。1日で上高地まで着く事ができたが、タクシー待ちと国道の落石事故で慌ただしい帰郷となった。
全体を通して
何度も繰り返すようであるが98年の上半期は、上級生5名のチームとしての確立を目指してやってきた。なぜならこの5名が中心となって、下半期には新入生を迎えた新しいチーム作りをしていかなければならないからである。南アルプス、春山、5月と3つの合宿を行ってきたが、結果的にチームとしての確立は出来たと考えている。この5人は各人の得意、不得意分野をうまく補い合うことができるメンバーであると思う。
しかし、1人、2人では力にならない、と言うことも出来る。「クラブなのだからみんなで力を合わせればいい。」と言う者がいるが、それは個人の努力があってこそのものであり、始めから他人に依存する気持ちでの言葉であってはならない。
5人にはそれぞれ個人の課題がある。さらには1年生を迎えての新しいチーム作りをしていかなくてはならない。1人1人がメンバーとして、各学年として、係としての役割を果たせれば、下半期も充実したものを作ることができるだろう。この部を実際作り、動かしているのは誰か、自分たち学生である。自分たちで積極的に、楽しく、充実した、魅力ある日大山岳部を作っていこう。
本多直也