1998年 冬山合宿 北アルプス南部 北鎌尾根〜槍ガ岳〜横尾尾根

期間: 平成10年12月22日(火)〜1月5日(火)

メンバー: L本多直也4、松本達彦4、深沢智徳3、佐藤凡3、京増朋子1、石川重樹1 計6人  


高瀬ダム


湯俣吊橋手前


吊橋


徒渉


木登りピッチ


P3クーロワール


P4手前


P4頂上、奥はP5、P6


P5トラバース


P6トラバース


一年生コンビ 石川(左)と京増(右)


P6下り


P7


本多


松本


P8へ向かう


P8


後ろは独標


独標基部で幕営


独標登攀2ピッチ目


独標登攀2ピッチ目


P11


P12手前


P14


P14・15のコルで幕営


幕営地、北鎌平、槍


槍への登り


槍ガ岳山頂


槍ガ岳の下降


顔面凍傷の佐藤(左)と石川(右)


雪崩危険箇所のトラバース


横尾尾根P8へ


横尾の歯


横尾の歯(後ろは平坦なP6)


河童橋


釜トンネルゲート


中ノ湯の2人 

12月22日(火) 晴〜雪

七倉(06:20)〜湯俣(11:00)〜硫黄尾根取付下河原(13:30)

タクシーが七倉のゲートに到着する。うっすらと雪がある程度だ。いつも通り体操し出発するが、やはり今合宿は何か特別な気持ちを持ってしまう。ワカンの必要なく湯俣に着く。この頃から雪が降り始める。湯俣先吊橋までのトラバースは問題ない。吊橋は板がはずれかけているので慎重に行く。左岸を行くが氷化した斜面があり、トラバースせず懸垂25mで対岸の雪の河原まで渡り、ザックの上に乗り、タオルで拭く。切るような冷たさで顔が真剣になり歯を食いしばる。笑顔はない。雪が激しいので硫黄尾根取付の河原で幕営。

12月23日(水) 曇〜雪

CS(06:30)〜中東沢(09:00)〜千天吊橋跡(12:40)〜P2取付(16:00)

「岳人」に載っていたトラバースは手前で右岸に徒渉する。中東沢は石伝いに渡る。その後残置FIXのあった左岸を一カ所トラバース(雪が着いて非常に滑る)したのみで、大高巻きになりそうなところは全て徒渉する。ここまで計6回。千天出会付近から右岸を3回高巻く。雪、笹に足を取られやすい。左岸のP2取付には石伝いに渡る。さすがにここまで来ると雪が深い。しかし後のパーティーはトレースを追って素直に6回も徒渉するだろうか。

12月24日(木) 雪〜晴

CS(06:40)〜木登り(10:30)〜P2の肩(13:00)〜偽P2(14:30)

ワカンでラッセルしながらの急登。1年のペースが上がらない(男35kg、女27kg)。木登り箇所の付近でアイゼンに履き替える。この急登は細引き10m、50m×2で通過。P2までの登りは雪と木に足を取られる。偽P2直下に細引き10mを出す。

12月25日(金) 雪〜晴

CS(06:40)〜3・4のコル(07:30)〜P3(12:00)〜4・5のコル(15:00)

3・4のコル先のクーロワールは50m×1で左上し小コルに出る。更に50m×1で主稜線に戻る。雪は非常に不安定。P3直下はもろい岩場になっており、細引き10mを出す。ここで京増が落石を足に受けるが大事には至らない。P4手前は少ピークが3つあり全てに50mザイルを出した。4・5のコルからはP8が大きく見えるが、P6、P7は重なり見えない。なお今日単独行の方に抜かされたが、OBのご友人であった。

12月26日(土) 雪〜曇

停滞(偵察10:00〜14:00)

石川が喉の痛みと鼻水、倦怠感を訴える。朝から風が強く雪が舞っている。よって今日は停滞とし、雪が止んだので松本、佐藤でルート工作に行く。

12月27日(日) 曇〜晴

CS(06:40)〜5・6のコル(08:40)〜北鎌のコル(14:00)

石川の風邪も多少良くなり36.5℃。風は強いが晴れ間も見える。P5のトラバースは天上沢側を細引き10m×2、50m×3で5・6のコルに達する。雪は不安定。P6へは千丈側のバンド状の登りに50m×1でP6に達する。雪は不安定。P6へは千丈側のバンド状の登りに50m×1でP6に達する。P7へは少しピークに細引き10m×1、50m×1で達し、P7の下りは懸垂25m、50m×1の急下降で北鎌のコル(7・8のコル)に着く。設営後、本多、深沢でFIXに行く。

12月28日(月) 晴

CS(06:40)〜P8(09:50)〜独標基部(13:45)

今日も風は強いが晴れ間も見える。P8へは(10m×2、50m×2)。その後独標基部まではやせたピークが続き、50m×3ザイルを出す。基部で3パーティーに抜かれる。早めに幕営し、松本、佐藤でルート工作に行く。

12月29日(火) 曇〜風雪

CS(08:30)〜独標(11:00)〜14・15のコル(16:00)

早朝はガスと強風のため待機し、日の出と共にガスが晴れたので出発する。今日から中間着にフリース、手にはシルクのインナーをする。左のルンゼ50m、リッジ50m、及び雪稜で独標に立つ。ピークからは時折雲の切れ間に念願の槍が見える。その後mp小ピークはいやらしく、1年2人はタイトロープで常に確保して歩く。北鎌平を目指すが予想以上のいやらしさと、強まる風雪でなかなか着かない。あと一歩の14・15のコルで幕営する。

12月30日(水) 風雪

停滞

昨日からの冬型の強まりで今日も地吹雪となっている。無理せず停滞にする。京増が熱っぽく、平熱35.1℃のところ36.5℃ある。石川同様夜中も薬を飲ませる。P13に(10m×1、30m×1)FIX。

12月31日(木) 風雪

CS(09:00)〜槍ガ岳(13:00)〜肩の小屋(14:00)〜大喰岳(15:00)

昨日同様風雪だが、明るくなるとともにやや弱まり、京増の熱もだいぶ良くなったので槍を越えるべく出発する。北鎌平を過ぎ、左のリッジから上がる。下部は1年2人は、タイトロープで確保するがやさしい登りである。最後のルンゼ状、50m×1、10m×1で祠の横に出る。念願のピークだが視界は全く効かず、寒い。他に2パーティーがいた。下降は地震のためか曲がった危なっかしい梯子を下ってから懸垂2ピッチを経て肩の小屋につく。冬季小屋のデポを無事に回収し、OBの方の差し入れを発見する。大晦日のためか小屋には人が多い。先を急ぐことにした。大喰岳の平坦なピークの風下に設営する。風雪はかなり強まってきたが、槍を越えられたことにより良い年越しとなった。

1月1日(金) 風雪

停滞

今日も冬型で天気が悪い。風も強く行動できそうもないので停滞。寝正月。

1月2日(土) 風雪

CS(06:40)〜天狗のコル岩峰下(13:00)

昨日よりもやや天候が良いので出発。だが風はかなり強い。素早く主稜線から横尾尾根に逃げたいのだが京増のペースが遅い。目出帽をしていてもまつ毛、まぶたが凍りつく。視界も悪く、中岳の辺りは要注意である。横尾尾根との分岐はわかりにくく雪庇も発達している。偵察時にはあった道標もなくなっている。この頃から一層ホワイトアウトになり、岩以外は区別がつかない。ザイルで少し下降、雪崩の危険はないと判断し、主稜線から50m×3のザイルを張る。その後のミックス箇所は1年2人はタイトロープで確保する。平坦地に出、視界がいっこうに良くならないので雪崩の危険のない岩峰下に幕営する。佐藤、石川が右目の下を黒くしたのでヒルロイドを塗る。1年2人は連日の風雪行動と疲れで元気がない。

1月3日(日) 風雪

停滞

朝から風雪強く、視界はない。横尾の歯を越えるのは難しいと判断し停滞。14:00過ぎに視界が効き、ルート、方角、雪崩の危険を頭に入れる。

1月4日(月) 雪〜晴

CS(09:00)〜横尾の歯(12:00)〜P3(17:00)

移動高が来ているが朝は風雪がまだ強く、様子を見て出発する。雪崩危険個所があるのだが、京増のペースが遅い。しばし休ませるが強風のため止まってはいられないのでタイトロープで確保して進む。横尾の歯(P8〜P7)は50m×1で通過。両側切れ落ちている。この頃から風も弱まる。P4の下り、P3のリッジは残置FIXで慎重に行く。

1月5日(火) 快晴

CS(06:40)〜横尾(09:30)〜釜トンネルゲート(14:00)

7日ぶりに満点の星空の下撤収する。無風快晴。気持ちを表しているようで、すがすがしい気分になる。P3の下りはタイトロープで確保する。その後は尾根状を忠実に尾根の首までラッセルする。尾根の首から横尾までは5分ほど。ここでガチャ類を全て外す。誰もいない静寂だがトレースはあった。雪べったりの前東、北尾根、明神岳を眺めながら歩く。沢筋から雪崩の危険は感じなかった。上高地にはカメラマンやクロカンスキーヤーがかなりいる。釜トンネルまでの道は陽光眩しく、想いが巡る。所々凍りついたトンネルを抜け、ゲートで握手を交わし合宿を終える。新しくなった中の湯の旅館まではゲートから送迎してもらえる。500円。きれいで快適な内湯と露天風呂からなり、吊り尾根が望める。石川が落つららの被害を紙一重で免れる。積雪期は上方要注意。

 

全体をとおして

年間目標として掲げ、取り組んできた計画が終了した。既成のルートではあるが、経験、技術の無いなりにこだわりを持って山域、ルートを決め、偵察、研究、訓練に取り組み、本番で計画どおりに遂行という結果がついてきた。単純にルートに挑むよりも時間、労力はかかるが、充実感、達成感は大きく、このような学生ならではとも言える計画からは多くのことを学ぶことができる。かつ、一緒に作り上げ、助け合ってきた仲間はかけがいのないものだ。
 今後は深沢以下が試行錯誤しつつ、ご助言、ご指導を参考にし、自分たちに正直に山に取り組んでほしい。実際やるのは自分たちなのだから、道の決定は自分たちで自信を持って、かつもちろん慎重に下してもらいたい。細かい反省点はたくさんある。今合宿の成功はもう過去のものとしてスタートしてほしい。

主将 4年 本多直也