平成30年度 登山リーダー春山研修会報告書

日本大学山岳部

主 催) 独立行政法人日本スポーツ振興センター

後 援) スポーツ庁

協 力) 公益社団法人 日本山岳協会、富山県警察本部山岳警備隊

場 所) 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立登山研修所及び夏山前進基地周辺

山域(北アルプス剱岳周辺)

期 間) 平成30516日(水)〜521日(月)

目 的) 大学において登山活動を行うクラブ等のリーダーとリーダー候補者を対象に、

基礎的技術や基本的状況判断力を習得するための研修を行い、チームを率いて

安全で確実な登山を実践できるリーダーを養成する。

 

520日 他大山岳部の研修生たちと平蔵のコルにて。(右から2番目:本学2年村上

 

参加メンバー) 村上 洋道(2年) 日本大学山岳部・・・第2班配属 

  

行動報告)        

515日(火)移動日

新宿(高速バス)24:05〜富山駅0645

 

516日(水)準備

1330国立登山研修所到着

村上は2班に配属された。2班のメンバーは他に東京大学、金沢大学、東北大学、新潟

大学、防衛大学校から編成された。講師は富山県警山岳警備隊の石川仁氏と中央大学山岳

OB山岳会の大堀泰祐氏。この日は、班で入山に向けての行動・食料計画について話し

合い、個人・共同装備の確認を行った。

 

517日(木)座学・実習・準備

国立登山研修所にて終日研修(座学・入山準備)

今日は「ナビゲーション技術」の講義を受けた後、トレーニング室にて基本的なロープ

操作、FIX工作等の訓練を行った。声掛けや、細かい技術について講師の方々に詳しく教

えて頂いた。その後、装備・食料のパッキングを行った。明日からの入山に向けて班員内

で声掛けの統一等について話し合いをした後就寝した。

 

518日(金) 入山日 曇り

国立登山研修所0700〜室堂ターミナル09:20〜雷鳥沢キャンプ場10:00〜剱御前小屋

12:20〜剱沢BC1300

入山日は曇り空が広がっており、室堂に到着後周辺の山域を確認しようとするもガスっ

ており何も見えなかった。雷鳥沢キャンプ場に到着後、テント設営をしたが設定時間を大

幅に過ぎてしまった。スクワットをして気合いを入れ直すと、ガスが少し晴れ雷鳥沢の上

部が確認出来た。

 

班員内でルートを確認して剱御前小舎を目指す。しかし、再びガスがかかってしまいど

のように行くのか、アイゼンをいつ着けるのかで班員の意見が衝突してしまった。状況を

判断する際の班員内でのコミュニケーションが不十分であり、意思疎通の重要性を指摘さ

れた。また、その時々の状況と班員の意見を考慮し、素早く判断を下す事がリーダーに必

要だとも指摘された。

 

剱御前小屋からはガスが酷いためコンパスを頼りに剱沢に向かう。剱沢に到着後、テン

トを設営した。テント内整理をした後支給される水とテントマットを取りに行き夕食の支

度をする。夕食後に講師の方々と今日の反省会と明日のスケジュールを決めた後就寝した。

 

519日(土)雨

剱沢BC08:25〜雪上訓練0835〜剱沢BC0950

昨日から雨と風が強く夜もテントが潰れる度に起きた。起床時もやはり潰されており何

とか押し戻した後、朝食を作る人と風防ブロックの修復をする人で分かれそれぞれ作業を

開始する。外に出ると風防ブロックは全く残っていなかった。しかし、斜面となっている

所でテントを設営したため、多少の風は防げていたようだ。

 

朝食の時間まで風防ブロックを修復し、朝食時にテント内にいた班員と講師の方々と相

談して、当初のスケジュールを変更して風防ブロックの修復をする時間を設ける事にした。

時間を決めて修復を開始したが、あまり時間を意識しておらずペースが遅かったため昨日

よりも軟弱な風防ブロックとなってしまった。講師の方々に正確な時間設定が出来ていな

い、テントが飛ばされたらどうするのかと強く指導して頂いた。昨日から時間に甘くなっ

ており意識の低さを痛感した。

 

講師の方々に風防ブロックを強化する時間を頂き、途中で今日のリーダーと村上で雪上

訓練場所の偵察に向かう。当初はアメリカ大陸で行う予定だったが風防ブロックに時間を

かけ過ぎ、かなりガスも広がっていたため傾斜の緩やかな剱沢の上部で訓練することにし

た。風防ブロックを強化し終えて剱沢上部で支点構築の訓練をする。

 

1時間程した後、雨と風がかなり強くなってきたため一度BCに戻ることにした。乾かし

物をしながら天候の回復を待ったが、雨と風が弱まらないため訓練を再開せずにミーティ

ングを行う事にした。ミーティング後雨が止んだため外に出ると全く見えなかった剱岳が

見えた。夕食後明日のルートや出発時刻等を話し合い就寝した。

 

520日(日)晴れ

剱沢BC04:00〜前剱09:40〜平蔵のコル10:35〜平蔵谷出合11:25〜剱沢BC12:40〜雪上

訓練14:10〜剱沢BC1540

 

今日は昨日までとは違い晴れており風も無く、アタック日和だった。昨日、時間設定の

甘さを指摘して頂いたため全員が時間を意識して動く事ができ、時間通りに出発できた。

一服剱を巻き、前剱手前の急斜面に出た。ここで予定通りFIXを張る。村上が1ピッチ目

を張り、回収するクライマーをビレイで引き上げる。それと並行して残りの班員で2ピッ

チ目を張る。

 

雪面は固かったが、少し掘ると柔らかい層になったため、支点を作るのに時間がかかる

と思ったが踏み固められたトレースに支点を作っていけたためそこまで手間取らなかった。

しかし、2ピッチ目を張る際にFIXの張り方を完全に共有出来ておらず、準備に手間取り

時間が掛かってしまった。本来であれば全員1回はクライマーかビレイヤーをする予定で

あり全員が出来ていなかったが、リミットとザイルの長さが安全地帯まで足りるか不安だ

ったため3ピッチ目はリーダーが張り村上がビレイと回収を行った。前剱過ぎからは時間

が押していたのもあり班員全員が焦り始めていた。

 

平蔵のコルに着いた時にはリミットを30分も過ぎており、全員冷静な判断が出来ていな

かったため、下山を決めた。BCに帰幕後は長めの休憩を取った後BC近くの斜面でボラー

ドを使った懸垂下降と土嚢袋を使った支点の作り方を学んだ。夕食後に反省会をした後、

明日のスケジュールを話し合い就寝した。

 

 

521日(月)研修最終日 晴れ

剱沢BC05:00〜剱御前小屋08:50〜雷鳥沢キャンプ場09:2510:20室堂ターミナル〜国立

登山研修所1250

 今日は剱沢BCからツェルト搬送を行った。要求助者の包み方や搬送の仕方は知っている

人がいたためその人を中心に大堀講師を包んだ。実際に5人で搬送してみると思っていた

よりも重くてきつく、とても大変だった。搬送される要救助者側の気持ちも考え、包む時

や搬送中に度々苦しくないか等を確認する。途中ツェルトが破れてしまい再度要求助者を

包み直す。何度も使われて古くなっていたと思われるが、下界でそのような事もしっかり

チェックすべきだと思った。

 

包むのに時間が掛かり搬送も遅かったため剱御前小舎の手前で搬送訓練を終了する。

室堂に着かなければならない時間が迫っていたため、雷鳥沢までは石川講師にトップで

ペースを作って頂く。剱御前小舎から雷鳥沢まではかなり早いペースで下り休憩をする。

室堂に着く時間を設定し出発する。室堂の集合場所が見えると最後の力を振り絞り走った

が設定時間を4分過ぎてしまった。

 

最後に過ぎた秒数分スクワットをして全員で健闘を称えあった。研修所に到着後は共同

装備の返却や最後のミーティング等を済ませた後、お世話になった講師の方々にお礼と

お別れの挨拶をして閉会式に参加した。閉会式後は時間があったため班員でコーラで乾杯

をして再度健闘を称えあった後研修所を後にした。

 

 

研修会を終えて

 今回の研修では、リーダーとして必要な統率力、状況判断力を中心にたくさんの事を経

験豊富な講師の方々に指導して頂きとても貴重な経験となった。しかし、自分の技術や意

識の低さを痛感し、1年生の時は本当にただ付いて行っているだけだったと実感した。そう

考えれば、今回の剱岳敗退は自分にとってとても良い経験になったと確信している。

 

悪天候が続きロープワークはあまり出来なかったが、今まで自分には無かった状況判断

力、周りの仲間を気遣う大切さ等リーダーだけではなく、上級生に必要な事を具体的に知

る事が出来て満足している。今回教えて頂いた事をしっかりと自分のものにして部に伝え

ていきたいと感じた。今後部を引っ張る事になった時に周りに信頼される存在になれるよ

う今回見つける事の出来た課題を克服していき、あらゆる面でもっと強くなろうと決意を

新たにさせられた研修会だった。

                              (報告者:村上洋道)

 

 

20日、前剱大岩付近でのトップでFIX工作に入る本学2 村上

支点構築をする村上

 

剱沢BCにて第2班〜他大山岳部参加メンバーと(右から3人目:村上)

剱沢BCにて第2班〜他大山岳部参加メンバーと(左から2人目:村上)

剱沢BC

剱岳全景

剱御前小屋から剱岳を望む

剱沢BCにて〜本学の前田部員と村上部員