平成29年度 大学生登山リーダー春山研修会報告書

日本大学山岳部

主 催) 独立行政法人日本スポーツ振興センター

後 援) スポーツ庁

協 力) 公益社団法人 日本山岳協会、富山県警察本部山岳警備隊

場 所) 独立行政法人日本スポーツ復興センター国立登山研修所及び夏山前進基地周辺

山域(北アルプス剣岳周辺)

日 程) 平成29520日(土)〜526日(金)

目 的) 大学において登山活動を行うクラブ等のリーダーとリーダー候補者を対象に、

基礎的技術や基本的状況判断力を習得するための研修を行い、チームを率いて

安全で確実な登山を実践できるリーダーを養成する。

   523日 他大の研修生たちと剱岳頂上に登る。(右から2番目:本学2年福島

 

参加メンバー) 福島 端流(2年)・・・第1班配属 

  

行 動)        

519日(金)移動日

新宿(高速バス)22:405:00富山駅

 

520日(土)座学・準備

国立登山研修所6:30到着

福島は1班に配属された。1班のメンバーは他に北海道大学、金沢大学、東海大学、首都

大学東京から編成された。講師は横山勝丘氏と富山県警山岳警備隊の石川仁氏。この日は、

「春山の気象と雪氷」「登山の医学」の講義を受け、班で入山に向けての行動・食料計画に

ついて話し合い、個人・共同装備の確認をした。

 

521日(日)座学・実習・準備

国立登山研修所にて終日研修(座学・入山準備)

今日は朝から天気が良く、立山駅周辺の清掃活動を行った。「ナビゲーション技術」の講

義を受けた後、研修所外の人工岩場にて基本的なロープ操作、FIX工作、懸垂下降等の訓

練を行った。声掛けや、細かい技術について講師の方々に詳しく教えて頂いた。その後、

班員内で声掛けの統一について話し合いをした。装備・食料のパッキングを行い明日から

の入山に向けて就寝した。

 

522日(月) 入山日 晴れ 

室堂ターミナル9:30〜雷鳥沢キャンプ場11:00〜剱御前小屋13:00〜別山頂上13:30〜雪上

訓練14:30〜剣沢BC15:00

入山日は朝から晴れで、気温が15度近くあり非常に暑かった。室堂に到着後、班員内で

確認できる山域を観察し、ルートを予想し話し合った。雷鳥沢キャンプ場に到着後、2

とテント設営の競争をした。竹ペグの埋める深さや外引きの張りが甘く、講師の方々に

指導を受けた。別山乗越までの登りでは、ルートを判断する際の班員内でのコミュニケ

ーションが不十分であり、意思疎通の重要性を指摘された。別山頂上付近のアメリカ大

陸で直登・直下降の雪上訓練を行い、剱沢BCまで班員全員で競走して帰幕した。剱沢

BC到着後のテント設営は、整地の質が悪く時間がかかってしまった。

 

523日(火)晴れ

剱沢BC4:00〜一服剣5:30〜前剱8:45〜平蔵のコル11:10〜剱岳山頂12:00〜エビルンゼ

13:00〜平蔵谷出合13:40〜剣沢BC15:00

今日は別山尾根を経由しての剱岳アタックで、天気は良く最高の登山日和である。出発

前には研修所で教わったKY法を用いた。KY法とは、その日行動するルートにおいて考

えられる危険とその対策について班員内で話し合い、予測する方法である。出発後は、ル

ートの選択、班員内でのコミュニケーション、危険個所での対策等を意識しながら行動し

ていく。前剱大岩付近でFIX工作をしながら前剱を目指すが、班員内で基本的な事がで

きておらず流れが悪かったため、大幅に時間が経過してしまった。平蔵のコルでは設定し

たリミットを10分過ぎてしまったのだが、講師、班員全員が頂上に行こうと決断した。理

由として、下りの平蔵谷は観察した限りロープを出す必要が無く、時間内に間に合うと判

断し頂上へと向かった。無事に登頂する事ができ、達成感もあったが、下りの危険と時間

を考慮し集中力は途切らさないように意識した。平蔵谷出合からは帰幕時間が迫っていた

ため全員で剱沢BCまで競走して帰幕した。安全に通過するためのルート選択、ルートの観

察、ロープを出すか出さないかの判断などについて講師の方に実践的な指導をして頂き、

とても勉強になった。

 

524日(水)雨

剣沢BC5:00〜雪上訓練5:30〜剣沢BC15:30

計画では、長次郎谷から剱岳山頂を目指す予定だったが、雨が強く、計画を変更した。

5人を2班に分け、剣御前東斜面で支点構築、FIX工作、懸垂下降の雪上訓練を行った。

支点構築ではスノーバー、土嚢袋、自然物などを利用した支点の作り方を教わった。FIX

工作では、スタカットでリードとビレイを交互に行った。途中支点の場所、ロープの流れ、

ビレイの仕方、ラッキングなど数多くの指摘を受けた。懸垂下降では、雪を使ったボラー

ドの作り方を教えていただき、実際に自分が作ったボラードを使い懸垂下降した。

1日中訓練をし、多くの指摘をして頂きとても貴重な時間だった。

 

525日(木)下山日 雨時々雪

剣沢BC6:00〜剣御前小屋9:00〜雷鳥沢キャンプ場11:30〜室堂ターミナル12:10

 今日は朝から強い雨風で今までの天気とはまったく異なり寒い。剱沢BCから剱御前小屋

までツェルト搬送の訓練を行った。要救助者のツェルトでの包み方、スリングの付け方、

ロープを使っての引き方などを教わった。実際に5人で搬送してみると思っていたよりも

重くてきつく、とても大変だった。搬送される要救助者側の気持ちも考え、度々苦しくな

いかなど確認する。剱御前小屋から雷鳥沢キャンプ場までは下降でのツェルト搬送を行い、

肩がらみ等のビレイの仕方を教わった。最後に雷鳥沢からは室堂まで12班合同での競走

が行われた。期間を通して精神的にも体力的にもきつかったが、自分の中での収穫はとて

も大きいものとなった。下山後の食堂のカレーライスは格別だった。

 


      25日のツェルト搬送訓練、実際にツェルトで包まれた石川講師 

 

526日(金)研修最終日

国立登山研修所にて座学研修〜16:00解散

「登山の運動生理」と「効果的な体力トレーニング法」の講義を受けた後、班で山行を通

して疑問に思ったことや、わからないことを講師の方々に教えて頂いた。その後、全体協

議では、テーマ1として「安全に登山を行う上で必要なノウハウ」と「自分の部で徹底し

たいこと」について班で発表し、テーマ2では、「入山中に選択を迫られた時にどうしたか、

またなぜそうしたのか」について発表し、意見を出し合った。こうして研修会の全行程を

修了し、達成感ともう終わってしまったのだという寂しさの中、1班の仲間たちと講師の

方々にお別れの挨拶をし、研修所を後にした。

 

研修会を終えて

 今回の研修では、リーダーとしての判断力、統率力を中心にロープワーク技術や体力の

向上等を経験豊富な講師の方々に指導して頂き、とても貴重な経験となった。しかし、依

然として自分の技術や意識の未熟さを実感し、今回教えて頂いた事をしっかりと自分のも

のにして部に伝えていきたいと感じた。目標とする山、信頼できるリーダーを目指すため

には精神的にも体力的にも成長しなければならない。「もっともっと強くなりたい」そう感

じさせられた研修会であった。

                              (報告者:福島端流)

例年に比べて雪が多かった剱岳周辺


            前剱大岩付近でのFIX工作