2015年度 春山合宿報告書

                       日本大学山岳部

目  的) 横尾尾根から槍ヶ岳登頂

      リーダーシップ、メンバーシップの向上

山  域) 北アルプス 槍ヶ岳 横尾尾根

日  程 平成2839日()〜318日(

移動1日、実働8、停滞1

メンバー) 4   CL賀来素直

      3年 SL水越健輔、加藤純、桧山泰平

     2年 高根澤亮太

     1年 荒井暢之、國谷良介、高橋佑太、中泉雄人      9

平成28317日 0730  全員で快晴の槍ヶ岳頂上に立つ(撮影:賀来素直)

 

行  動)

39日(水)移動日 新宿(高速バス)〜松本駅

新宿19:5023:02松本駅

 高速バスにて新宿を出発。予定通りに松本駅に到着するが、雪の後で路面がぐっしょり

と濡れていた。松本駅にて仮眠させていただく。

 

310日(木)入山日 松本駅(タクシー)〜釜トンネル〜上高地〜横尾岩小屋跡CS@

曇後雪

松本駅05:00〜釜トンネル6:10〜上高地08:2014:45横尾岩小屋跡CS@

 松本をジャンボタクシーで問題なく出発する。釜トンネルに到着し、アスファルトを歩

きはじめる。中は照明があまりついておらず、ヘッドランプを装着して通過。釜トンネル

を出ると、路面が除雪済みで凍結しており、緩傾斜ではあるが非常に滑りやすい。このお

かげでペースを上げて通過するのは難しいと感じた。

 上高地の建物は完全には埋没しておらず、半分埋もれている程度である。徳沢へは踏み

固められ、歩きやすい道が続く。徳沢を過ぎ、トレースがなくなる。横尾までショートカ

ットのため登山道を逸れて河原沿いの運搬路を進むが、歩きにくく、かえって時間がかか

ってしまった。

 横尾を過ぎ、到着した岩小屋跡は雪が少ないためはっきりと露出していた。周辺にはス

ペースはあるものの少し狭く、特に天幕地として優れているわけではなかった。ここでの

積雪は70cm。夕方から弱い降雪があった。

 

 

311日(金)横尾岩小屋跡CS@P1P2P3CSA 晴-5

横尾岩小屋跡CS@05:10P1 08:00P2 08:5612:45 P3CSA

 岩小屋跡から横尾山荘方面へ50m程戻った箇所の尾根から取り付く。去年の秋は藪のた

め分からなかったが、末端ではここが一番取り付きやすそうである。藪は雪で抑えられ、

昨年秋の偵察時と比べると非常に歩きやすく感じる。順調に横尾尾根上へと登る。ここで

も藪や低木はなりを潜めている。P2に到着し、すぐに50mFIXを張り、コルへと下降する。

コルからP3登りへはまず出だしの急登に40mFIXだが、重荷だと一苦労である。そこ

から100m程は安定して進み、岩の露出に出くわす。再び50mFIXを張る。そこから先は

安定してP3の頂上に達することが出来た。キャンプサイトの設営と並行し、高根澤、水越、

桧山、賀来でP3下りへ2ピッチFIX工作に出る。ここの天幕地は積雪300cm以上で測定

不能。6人用テントを二張りでも充分なスペースがある。

 

312日(土)P3CSAP34のコル〜P4CSB  晴 -11

P3CSA05:20P34のコル07:4012:40P4CSB

 天気が良いため予定通りP4へ向かう。テントが凍っていたこともあったが、それ以上に

身支度が遅く20分も遅れてしまう。昨日FIX工作してあった急な下りと岩のリッジの2

ピッチを通過し、新たに1ピッチFIX。さらにコルまで短く懸垂下降。コルからはしばら

く急な登りを歩く。P4までの最初のピークは上部で急登となるため50mFIX。それを越え

てクライムダウンし、二つ目のピークへ40mFIX。ピークから15m程懸垂下降。P4へは

歩いて登る。7ピッチ分のロープを使用し待機時間が多かったが、天気が良く暖かいので非

常に助かった。吹き曝しの地形のため、風防ブロックはしっかりと作成。ここでの積雪は

130cm

 

313日(日)P4CSBP5過ぎ広尾根CSC〜横尾の歯〜CSC  曇、風 -11

P4CSB05:0007:00P5過ぎ広尾根CSC08:0008:15横尾の歯11:1511:25CSC

 朝は晴れており、予定通り出発。次第に風が吹いてくる。低木が埋まっていたおかげで

想定よりもハイペースで進む。雪面はクラストが多くなる。わずか2時間でP5を過ぎ、次

のキャンプサイトに到着してしまった。しかし天気も良くなく、このまま核心部へ進むの

もリスキーなため、計画通り設営を決定。その間、横尾の歯へ高根澤、加藤、水越、賀来

FIX工作に向かう。60m2ピッチで充分であったが、雪が浅くてもろく、昨年秋の

偵察時よりも少し難しかった。

 天幕地に戻ると風防ブロックと堀が不十分であったため、全員で作り直した。ここでの

積雪は300cm以上。

 

 

 314日(月)P5過ぎ広尾根CSC〜横尾の歯〜天狗のコルCSD  風雪-12

P5過ぎ広尾根CSC05:0005:30横尾の歯07:2011:40天狗のコルCSD

 朝からやや風があり、雪も降っている。昨夜から20cmほど降っただろうか。さほど強い

風雪ではないため、行動を開始する。横尾の歯はガスにより高度感が無いことも手伝い、

順調に通過する。天狗のコルへの途中で急な登りを1ピッチFIX。また、弱い降雪が止ま

ないため、雪崩が少し心配な斜面を1ピッチFIXした。天狗のコルへと近づくにつれ、ガ

スのために地形と空間の境が分かりにくくなり、雪庇等に注意しながら慎重に進む。コル

に到着し、ひたすら強固なキャンプサイトを設置する。固い雪を掘り続け、スコップが2

つ壊れてしまった。ここでの積雪は300cm以上。夜から風が強まってきた。

 

315日(火)天狗のコルCSD  停滞 風雪後晴 -10

3時頃、テントが埋まりかけているため2時間程除雪する。降雪はそれほどでもな

いが、風が強く地吹雪となっている。5時には風も弱まってある程度除雪が済み、食事をと

るが中泉が両手指先に痛みがあるという。指先がすこし腫れ、霜焼けとなっている。加

温しながら、本日を停滞と決定する。7時頃から天気は回復し、8時頃から中泉を除くメ

ンバーで再度除雪作業に入る。除雪作業を終えてテントに戻ると、今度は桧山が右手中

指、薬指の痛みを訴える。凍傷を負っており、薬指の腫れが著しいので加温を開始し、

バファリンを服用させる。

明日は晴天の予報、桧山、中泉の指の状態に注意しながら、槍ヶ岳へ向かうことを決定す

る。夜になり、桧山の中指、薬指に水泡が形成される。

 

316日(水)天狗のコルCSD〜槍・穂高主稜線〜肩の小屋CSE  晴後風 -7

天狗のコルCSD05:1010:30槍・穂高主稜線〜15:10肩の小屋CSE

 朝、弱い風があるがすぐに落ち着くと判断して出発する。中泉、桧山は指に負担がかか

ることの無いよう荷物を軽くして行動を開始する。雪面は主稜線に突き上げるまでの急登

がクラストしており、凍傷箇所に傷をつけぬよう積極的にザイルを出す。ほぼ無風で、天

気は非常によい。計6ピッチものFIXを工作し、主稜線に出る。稜線上は風が吹いている。

 クラストと吹き溜まりを繰り返し、中岳へ向かう。中岳からの下りはハシゴがあったが、

雪と氷に埋もれかけて不安定なため、ハシゴは無視し、ピナクルを利用して50mほどを懸

垂下降で通過する。大喰岳付近は大きな雪庇が形成されていたため慎重に通過する。飛騨

乗越までクラストして歩きにくいルートが続く。無人の槍ヶ岳山荘に到着し、凍傷の者が

いるため冬期小屋を利用させて頂く。高根澤が行動中にヘッドランプを紛失したとの報告

を受ける。

 

 

317日(木)肩の小屋CSE〜槍ヶ岳頂上〜中崎尾根〜槍平小屋  晴 -8

肩の小屋CSE06:00〜槍ヶ岳頂上07:3012:00中崎尾根上〜16:20槍平小屋CSF

 凍傷は悪化しておらず、天気も良いため全員による登頂が可能と判断し、日の出後に

大槍へ出発する。登りはFIX2ピッチ工作して残置し、速やかに頂上で記念撮影。下

りはFIXに加えて60m懸垂下降。肩の小屋で急いで荷物をまとめ、中崎尾根へと下降す

る。西鎌尾根上は固くクラストしており危険なため、ルートを飛騨沢側へと寄りぎみに

下降する。連日の晴天で雪は非常に安定しており、雪崩の心配はない。しかし高度を下

げるにつれ気温が高くなり、汗ばむほどになる。中崎尾根上に着く頃には雪も腐り、ア

イゼンに雪団子が付く。トレースもなく、アップダウンを繰り返すのは大変である。

正午を過ぎて直射日光を受け続けていた周囲の山域にブロック雪崩が発生し始める。

クライムダウンを繰り返して槍平小屋に到着し、設営する。ここでの積雪は225cm

 

318日(金)槍平小屋CSG〜新穂高温泉 +1

槍平小屋CSG05:5509:45新穂高温泉

日の出後の行動開始とする。槍平小屋からはトレースを辿って進む。チビ谷を含め、沢

ではところどころデブリがあり、注意して進む。問題なく新穂高温泉に到着、桧山を松

本の相澤病院に連れて行き、最も状態の良くない右手薬指については2度の凍傷との診

断を受ける。紹介状を頂き帰京後、皮膚科での診察を受ける。暫くの間、通院は伴うが

大事には至らず順調に回復するだろうという診断であった。

 

 

  

総 括

 

 今合宿は隊にとって成長する要素が多くある合宿であった。9名という人数でのFIX

作をしながらの行動、トレースがなく的確なルートファインディングが求められ、悪天時

の行動、エスケープのない行程、生活技術。それらにおいては冬山合宿、2月合宿よりも

厳しく、満足のいく合宿となった。

 

しかし、コミュニケーション不足やメンバーシップ、注意力の低下から凍傷の隊員を発

生させてしまうなど、解消しなければならない基本的な問題を抱えてしまうこととなった。

下級生にとっては過剰と感じるようなフォローを、上級生が絶えず続けることが出来

てこそ初めて計画の完遂が出来る隊となることを痛感した。

隊としてはメンバーシップ、状況への対応力を、1年生にとっては隊の主力となっていく

という自覚を育み、新年度を迎えてもらいたい。 

                             (報告者:賀来素直)

 

 

 

10日:釜トンネル前で準備

 

10日:釜トンネルを通過

 

10日:路面はつるつるで滑ります〜上高地までの車道

 

10日:雪に埋まった上高地

 

11日:横尾尾根へ上がります

 

11日:横尾尾根上、まだまだこれからです

 

11日:赤布の多いP2からザイルを出して下降です

 

11日:P2P3のコルから最初の急登

 

11日:P3の天幕地、低木も雪に埋まっていて快適なCSです

 

12日:P4の天幕地、こちらも快適なCSでした

 

13日:P5過ぎ広尾根の天幕地〜設営後、風防ブロックの構築

 

13日:横尾の歯FIX工作

 

14日:核心部、横尾の歯を通過

 

15日:停滞日、天狗のコルCS

 

16日:クラストした斜面をひたすらFIX工作〜横尾尾根上部の主稜線ジャンクション

直下を登る、後方中央のピラミダルな山は表尾根の常念岳

 

16日:中岳頂上

 

16日:槍ヶ岳肩の小屋に到着

 

17日:大槍へ

 

平成28317日 0730  全員で快晴の槍ヶ岳頂上に立つ(撮影:水越健輔)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春山合宿番外編〜出発前準備状況

37日 合宿準備中の部員〜装備・食糧・医療の最終確認、個装の最終チェック

合宿準備期間、アイゼンの歯にヤスリを入れる1年生の高橋〜秋の偵察、初冬、冬山、2

の各合宿で使い込んだアイゼンは新品でも半年で歯の先端が丸くなる。グラインダーで軽

く荒削りしてから金工用の中目ヤスリで時間をかけて歯先を仕上げていく。

     

 

 

  39日出発前の部室にて〜出発直前、部室の掃除を終えて…・これから山へ行くぞっ!