2015年度 秋山合宿報告書
日本大学山岳部
目 的) 冬山合宿の偵察
積雪期に向けた生活技術の向上
山 域) 北アルプス 槍ヶ岳 横尾尾根
日 程) 平成27年10月30日(金)〜11月6日(土)
移動1日、実働6日、停滞1日
メンバー) 4年 CL賀来素直、SL宝迫哲史
3年 加藤純、桧山泰平、水越健輔
2年 高根澤亮太
1年 荒井暢之、國谷良介、高橋佑太、土井祐介、中泉雄人
計11名
11月5日P8を通過 正面の尾根は槍穂主稜線へ伸びる
行 動)
10月30日(金)移動日 新宿(高速バス)〜松本駅
新宿(高速バス)23:00〜01:10松本駅
計画通り新宿を高速バスで出発、松本駅でステーションビバークとする。
10月31日(土)入山日 松本駅〜上高地〜横尾〜岩小屋跡〜P1994CS@ 晴
松本駅05:00〜上高地06:40〜横尾09:45〜岩小屋跡10:30〜15:35P1994CS@
小型バスにて松本駅を出発し上高地に到着する。体操をして出発する。雲一つない快晴
である。岳沢を眺めると、やはり高度を上げないと雪はなさそうである。そのため、横尾
で持てるだけの水を確保し、合計で約70リットルを携行する。
岩小屋跡へ向かい、各隊員の重量を調整の上、比較的ヤブの薄い箇所に取り付く。赤布・
踏み跡は見つからず、地形図を頼りに遅々としたヤブ漕ぎが始まる。1年生はプラ靴のため
に歩きにくい中、頑張って登っていた。尾根上に上がる手前200m程に赤布があった。登り
やすい箇所を探しているうち、尾根上のP1994に上がりダンロップテントV8とV6を張れ
る分のちょうど良いスペースがあったので設営を決定した。携帯電話の電波は良く探すと
微かに通じた。
横尾尾根末端取り付き
11月1日(日)CS@〜P1〜P2〜P3CSA 晴+3℃
CS@04:45〜05:30P1〜06:40P2〜09:00P2・P3のコル〜14:50P3CSA
またヤブ漕ぎが始まると思うと少しいやだが、行動開始する。P1付近は天幕スペースと
しては広くなく、V8やV6は厳しそうだ。P1を過ぎると赤布が現れ始め、ヤブも薄く歩き
やすい。P2まで一気に進んでしまう。P2は比較的広いが、V8が泊まるには雪を相当整地し
なければならないだろう。ここからコルへの下りがきつく、ロープを出す。ここでかなり
時間がかかってしまった。
P3への登りも少し急で、プラ靴に不慣れな1年生のため、全てロープを出しながらの通
過とする。合計で登りに6ピッチ張ったが、長いロープを2本しか持ってこなかったのは
失敗で、11人もの通過はとにかく時間を要してしまった。
P3に着くと、また細いリッジが待っているため、ここで天幕とする。低木が邪魔していて
非常に狭いが、何とかV8を張り、中に11人入って就寝した。装備はツェルトに包んで外
に固定した。
P2・3のコルへの下降
11月2日(月)停滞P3CSA 風雪後雨+1℃
朝から風と雪が強めであるが、途中から雨に変わる。積もった雪も先では融けてしまう
可能性が高いため、ひたすら水集めをする。夕方、天候が落ち着いたため、賀来、宝迫、
水越で先のコルへ偵察、FIXに出る。P3下りは慎重に通過しなければならないことが分か
った。
11月3日(火)CSA〜P3・4のコル〜P4CSB 雪後晴+1℃
CSA6:50〜P3・4のコル11:30〜17:20P4CSB
装備の紛失防止と、P3下りの通過を考慮し出発を後らせる。コルまでにリッジを通過し、
急坂を下る必要があるが、足場の不安定さに通過に時間がかかる。コルに到着するとそこ
そこ広く、雪が十分ならば天幕の設営は可能である。広くて急なP4への登りをFIXし、少
しの間安定した道が続く。また小ピークを目指してロープを出し、それを越えてまた小ピ
ークへ1ピッチ分ロープを出す。P4直下からの登りは安定しており、P4も十分な天幕スペ
ースがある。時間が遅いので天幕の設営を決定する。
11月4日(水)CSB〜P5〜P5過ぎ広尾根CSC 晴-2℃
CSB06:00〜10:00P5〜11:30
P5過ぎ広尾根CSC
ここからルートファイディングが難しいため、日の出後の行動とする。ハイマツなどの
低木が邪魔をしてスローペースとなる。急坂はほとんどなく、P5に到着する。広いが、
槍沢側は切れている。P5過ぎからは広尾根となり、すぐに快適な天幕スペースを見つけ
る。この先に核心となる横尾の歯があるため、早めに天幕を決定する。賀来、宝迫、水
越、加藤で横尾の歯にFIXを張りに行った。
P5の開けた場所にて集合写真
核心部 横尾の歯全景
横尾尾根左側の穂高連峰
11月5日(木)CSC〜横尾の歯〜P6〜天狗のコル〜天狗池CSD 晴−7℃
CSC04:30〜05:30横尾の歯08:30〜09:00P6〜13:50天狗のコル〜14:30天狗池CSD
横尾の歯手前で日の出を迎えるために、4:30に出発する。横尾の歯は計3ピッチ張った
が、60mロープであれば2ピッチにまとめることも可能だろう。1年生は高度感のあるFIX
を上級生の指導によりスムーズに通過してくる。ルートはP6まで安定している。P6の下
りは不安定に感じたためロープを出したが、実際に降りてみると雪が安定しており、時間
をかけた意味は薄かった。
P7への登りは急なためFIX工作してから、天狗のコルまで
一気に進む。天狗のコルから先は、比較的長くて急な登りであり、中岳の下りも急に見
える。ザイル本数、リミットを考慮し、槍沢からのエスケープを決定する。晴天続きで
積雪も少なく安定しており、雪崩の心配はない。コルは岩が若干露出しているため、安
定していて快適な天狗池の手前まで下り、天幕を設営する。
横尾の歯 2峰の通過
横尾の歯 4峰最後の登り
核心を過ぎてP7にて一息
11月6日(金)CSD〜ババ平〜横尾山荘〜上高地 晴+2℃
CSD05:00〜7:00ババ平〜08:40横尾山荘〜11:20上高地
天狗池からは 大したラッセルもなく、歩きやすい。登山道には赤旗が立っている。天狗
原分岐に着くころには雪もほとんど無くなり、夏と変わらなくなる。ババ平には新しい
小さな小屋が建っており、横尾山荘では小屋の方々が片付けの作業中であった。1年生は
プラ靴による靴擦れなどがあったが、順調に上高地に到着することができた。
槍沢合流点手前から臨む槍ヶ岳
総 括
冬合宿へむけての偵察ということで、下部には積雪の無い横尾尾根を通過したが、藪漕
ぎがきつく、想定していたよりも不安定な道が多いなど、序盤で時間をかけすぎてしま
った。逆にP4を過ぎてからは比較的スムーズに進むことができた。結果としてはエスケー
プすることとなり計画のすべてをこなすことは出来なかったが、核心となる横尾の歯と各
ピークの通過方法、天幕地など積雪期に向けて具体的な計画を立てられる情報をそろえる
ことが出来た。
各自のコミュニケーション不足やFIX工作のスピードなど、まだまだ至らない点があり、
初冬合宿でこれらを改善しなければならない。
(報告者:賀来素直)