2013年度春山合宿報告書
日本大学山岳部
山域)北アルプス 北鎌尾根〜槍ヶ岳〜中崎尾根
期間)3月11日(月)〜3月21日(木)
メンバー)4年CL飯田祐一郎
2年山浦祥吾
行動記録)
3月11日(月)入山日 晴れ
新宿〜12:40葛温泉13:25〜13:55七倉温泉14:10〜15:15高瀬ダム下CS@
時間もあり、天候も安定していたので高瀬ダム下まで移動する。終始雪はない。
高瀬ダム下CS@05:30〜15:30湯俣温泉手前CSA
高瀬ダム過ぎのトンネルを越えるとだんだんと雪が積もってくる。発電所近くからはズボ足ラッセルが続き、林道終了点手前からは沢に降り、沢沿いを歩く。沢沿いは多少雪がおちつくものの、ズボ足ラッセルは続く。湯俣温泉まで到着する事が時間的に困難な為、湯俣温泉手前にて天幕する。ラッセルは終始膝下程。
湯俣温泉手前CSA06:30〜11:00湯俣温泉CSB
CSAからは前日に引き続き川沿いを歩行する。本来のトレースを辿ろうとするものの、ズボ足が腰にまで達する為、断念。湯俣温泉に到着する頃には雨が降り出し、テントを設営する頃には大雨となった。
湯俣温泉CSB06:30〜12:30東沢過ぎの高巻過ぎCSC
湯俣温泉からは徒渉を繰り返しながら川沿いを歩行する。本来のトラバースや高巻は崖崩れや雪崩の跡が激しく、歩行を断念。6時間も徒渉を繰り返すと手足に冷えの限界がくる。よって東沢過ぎの高巻過ぎにてCSCを張る。ラッセルはズボ足で終始膝上。
東沢過ぎの高巻過ぎCSC06:30〜12:00P2尾根取付きCSD
相変わらずラッセルはズボ足で、終始膝下。トレースは以前に秋山・冬山合宿にて使ったものを忠実に辿る。ただ、千天出合の部分のみ高巻を行った。乾かし物をしっかりと行う為にP2尾根取付きにて天幕する。
P2尾根取付きCSD08:00〜14:00P2の肩CSE
疲労が溜まっていたので出発を遅らす。相変わらずラッセルはズボ足で、終始膝上。多い所で腰近くのラッセルとなる。途中の木登り区間は予定通りにザイルを出し、山浦がトップをはる。風が強くなり、雪が激しくなってきたので、P2の肩にて天幕。
P2の肩CSE06:30〜13:00P4・5のコルCSF
相変わらずラッセルはズボ足だが、だんだんと雪が締まってきた。しかし多い所で膝上はある。P3手前のルンゼ以降は1ピッチザイルを出す。12月よりもいやらしく雪が付き、緊張感あるリッジを進む。P3〜P4までの稜線は所々雪庇が張り出しており、慎重にルーファイを行う。P4・5のコルは12月よりも雪がしっかりと付いており、安定した天幕が行えた。V8テントでも3張りは安定して天幕が行えると思う。夜から雨が降り出す。また、やっとラジオが電波を拾い始め、天気図・天気予報の確認を取る事が出来た。
前日の雨が止まずに停滞。夏山に来たかのような猛烈な雨となる。
P4・5のコルCSF06:30〜14:00独標基部〜16:30独標過ぎのコルCSG
P6のトラバースは予想していたよりも雪が締まっており、順調に進む。トラバースに1ピッチ、ルンゼ登攀に1ピッチ、P6・P7のコルに向けてさらにトラバース1ピッチザイルを出す。P6・P7のコルからはさらに千丈沢側にあるルンゼに1ピッチ出す。P7からの下降は2ピッチ懸垂下降を行う。また、細い稜線が続き緊張を強いられる。北鎌のコルは12月の方が安定していたように見えた。V4テントが2張り張れるかどうかといった所だ。P8までの登攀からは雪が締まっており、快適に進む。独標基部からは雪崩の危険が高く見られたので、直登を行う。10mほどトラバースしたのち、直登を開始する。1ピッチで核心部分は終了し、念のため稜線部分にもう1ピッチザイルを出す。独標頂上からはタイトロープで進み、天幕地を目指す。天幕地のコルは昨年の秋に行った残置回収地点だ。
独標過ぎのコルCSG08:30〜09:50北鎌平〜11:00槍ヶ岳頂上11:10〜11:30槍ヶ岳山荘12:00〜千丈乗り越し12:40〜16:30槍平CSH
終始雪が締まっており、快適に進む。槍ヶ岳頂上直下の登攀はタイトロープで問題なく進む。千丈乗り越し手前から風が強くなり始め、乗り越しに到着する頃には立っているのもままならないほどであった。中崎尾根を急いで下り、槍平にて天幕。奥丸分岐手前からはズボ足ラッセルが始まり、時間がかかる。また、雪崩の跡があちこちに見られ、慎重に下降する。
槍平CSH06:05〜10:45新穂高温泉
槍平から新穂高温泉手前までは終始ズボ足ラッセルで、雪は膝下程。また、この区間には大きな雪崩の跡がなく、スキーヤーのトレースが残っておりルーファイの手間が省けた。しかし最後までズボ足ラッセルが続き、非常に疲労とストレスがたまった。
総括
結果からみると今回の合宿は完遂とは至らなかった。笠ヶ岳までトレースを伸ばすという予定であったものの、中崎尾根下山となった。しかし、冬期における北鎌尾根への挑戦は今回で3度目となり、やっとの思いで北鎌尾根にトレースを残す事が出来た。また、その内容は雪が多く、尚且つズボ足ラッセルを強いられるというものであり、12月に挑戦した時よりも難易度は高いように思え、その点では満足のいく合宿となったと感じている。そして、北鎌尾根を完登した今、この尾根を学生が登攀する事の意味や意義を再確認する事が出来た。
核心部がそのアプローチ。すなわちP2尾根取付きまでの徒渉にあると言われる程アプローチに時間を要し、また、P2の木登りではラッセル力。そして、稜線部分では迅速なロープワークや適格なルートファイディングに始まり、好天をものにする為の体力が必要となってくる。これらは大学4年間の間に山岳部に在籍する事で得られたスキルの塊であり、4年間の集大成を表現するにあたって、非常に適している山であるように感じた。また、北鎌尾根の厳しさを実感する事が出来た。
当初、北鎌尾根〜西穂高縦走という計画から始まった今回の春山合宿であったが、北鎌尾根を完登し、その厳しさを実感できた今、昔、西穂高までさらに縦走を行っていた先輩方のその不屈の精神力や、無尽蔵とも思える体力に、ただただ脱帽するあまりである。また、そんな大先輩方に憧れを抱くと共に、4年間の山岳部人生において私の目標であった北鎌尾根〜西穂高縦走を完遂する事が出来なかった事が非常に悔しく思う。しかし、2年生の山浦に北鎌尾根を体験させる事が出来た事は非常に意味のある事で、今後の彼の山岳部人生において大きな糧となると思う。
報告:飯田祐一郎
↑ 槍ヶ岳頂上にて
↑ 取り付きまでの渡渉
↑ 晴れ間のもと北鎌尾根を進む
↑ 独標を超え、槍ヶ岳が姿を現す。
↑ 千丈乗越。風が強いです。