2012年夏合宿報告書

                                 日本大学山岳部

 

 

山域)北アルプス 剱岳 槍ヶ岳

期間)平成2484日(土)〜18日(

メンバー)4年 CL飯田祐一郎(4日〜10日)

     3    SL関洸哉、横山裕

     2年 山浦祥吾

                 1年 池田祥子、賀来素直、金原守人、小松周平、須郷直也、田仲航

OB 大谷直弘(7日〜10日)、本多直也(5日〜7日)、高木大地(8日〜11日)

 

行動)

84日()移動日

 

新宿西口発高速バス23:206:15富山駅

 

85日(日)入山日 曇り後晴れ

 

電鉄富山駅06:27〜立山駅08:0009:10室堂バスターミナル09:5010:50雷鳥沢キャンプ場11:0513:50別山乗越14:3015:30剱沢キャンプ場BC

 

627分の電車にぎりぎり乗り込み立山へと向かう。室堂は毎年の事ながら人が多い。雷鳥沢キャンプ場までは順調に進むが、雷鳥沢の登りから池田と小松のペースが遅くなる。池田と小松の装備を上級生で分担し持ったが、ペースが上がらないため1時間ほど進んだところで隊を2つに分けて行動する。須郷は初夏に比べると良く歩けていて感心した。剱沢キャンプ場に到着したところで田仲が足を挫いてしまう。

 

86日(月)分散登攀1日目 曇り時々雨

 

Cフェース登攀隊 メンバー)関,山浦,賀来,須郷,本多OB

BC04:0505:20長次郎谷出合〜07:35Cフェース取り付き08:1511:40Cフェースの頭12:3014:30X・Yのコル〜17:50BC

 

朝小雨が降っており、天候が心配であったがCフェースへ向けて出発する。剱沢雪渓は固くて滑りやすいため慎重に歩く。長次郎谷もなかなかキックステップが決まらず苦労するが、本多さんの掛け声で元気に登る。Cフェースの取り付きに着く頃には天候も安定し、先行パーティーもいないため快適なクライミングが期待できた。確認のもと賀来と須郷にビレイをさせて山浦と関がリードする。途中晴れ間も見えて気持ちよく登ることができた。4ピッチ目のリッジをリードし終えたところで雨が降り始める。賀来、須郷は大変であったと思うがCフェースの頭に立つ。2人とも恐かったと言っていたが上手く登れていた。その後も降ったり止んだりの連続で、X・Yのコルへの懸垂時は土砂降りであった。懸垂支点までのルートは危なっかしく慎重に進まなければならない。コルから長次郎谷までも雪が残っており、簡単には下れず苦労した。長次郎谷は本多OBにグリセードを教えてもらいながら下降する。BCに到着した頃にはメンバー全員疲れきっていた。

 

※剱岳往復隊 メンバー)飯田,横山,池田,金原,小松

BC04:4006:35前剱06:4509:10剱岳09:4013:55BC

 

この日は剱岳本峰へ向かう登山者が多くなく、かにのたてばい、よこばい共に大渋滞という事も無く、進む事ができた。初山行、初登山で剱岳へ向かう事になった小松は、ここの鎖場通過は中々堪えたようである。池田は鎖場も順調に通過していた。山頂についた時にはガスっており。下山時になると雨が降ってきた。鎖場・岩場が滑りやすくなっていたので、慎重に、ゆっくりとBCまで下った。

 

87日(火)分散登攀2日目 雨後晴れ

 

※源次郎尾根登攀隊 メンバー)関,横山,山浦,金原,須郷

BC04:0005:00源次郎尾根取り付き06:3010:10ルンゼ合流地点11:3014:00源次郎尾根取り付き〜15:20BC

 

源次郎尾根取り付きに着くと同時に大雨になる。雨宿りする場所も無く、雪渓から少し上がったところでツエルトを被り雨を凌ぐ。1時間ほどで雨は止み、晴れ間も見え始める。1時間半の遅れで、リミットに間に合わない可能性は高かったが、このまま引き返すのも勿体無いので計画を続行する。出だしからいやらしい箇所があり時間を食う。尾根伝いに進むが簡単には進ませてくれず、ザイルを計4回出す。そうしている内に時間が経ち1峰のリミットに間に合わないことが明確であったので、ルンゼ合流地点付近で前に進むのを諦める。関と山浦で少し前方を偵察し、11時半に下降する。下降は、登りにザイルを使用した箇所は木を使用し、懸垂下降で慎重に降りた。

 

※雄山往復隊 メンバー)飯田,池田,賀来,小松,田仲,本多OB

BC04:0005:15別山〜07:50BC

 

別山を越えたところで田仲が挫いていた足が痛いことを訴える。別山に戻り地図を出して位置情報などを確認する。雨が強く降ってきたためBCに引き返す。

 

88日(水)剱岳往復 快晴

 

BC03:3008:10剱岳08:5012:30BC

 

田仲はBCで安静にさせる。賀来、須郷が剱岳に登れていなかったため、来年も見据えて(1年生を連れて行けるように)剱岳に登ることにする。雲ひとつない天気であったが、日差しも強くとても暑い。鎖場はFIXしながら慎重に進む。大谷監督含め、10人で頂上に立つ。コンパスを使って目的地への同定の仕方をおさらいする。南方には槍ヶ岳も望め、皆遠いなとつぶやいていた。写真を撮って下山を開始する。小松も2回目ということで随分恐さには慣れていた。下山の最中、小松が両足の親指の痛みを訴える。靴が親指に当たっているようである。BCに着いてから池田も元気が無く、体調が悪いことが分かる。診療所の方に診てもらい、脱水症状と診断される。

 

89日(木)雪訓1日目 晴れ

 

BC06:0007:05別山〜08:00真砂岳〜08:20内蔵助カール13:40〜真砂岳13:5015:20BC

 

池田はBCで安静にさせ、飯田主将も池田についたため、大谷監督、高木OB、学生7人で内蔵助カールで雪訓する。大谷監督指導の下、歩行・方向転換、ジッヘル、グリセードの訓練を行なった。1年生は最初手間取っていたが、繰り返し練習することで上手く出来ていた。ジッヘルは高木OBの見本を基に何度も練習する。金原はジッヘルが綺麗に出来ていて良く止まっていた。グリセードも最後は形になっており、まだ修正できる点は多々あるが良く出来ていた。途中立山方面から登山者が落としたと思われる落石があった。あまり立山方面に近寄りすぎると危険である。

 

810日(金)雪訓2日目 晴れ後曇り

 

BC07:0008:00雪訓場15:501610BC

 

飯田主将は黒部ダムへ下山する。朝、別山側に雲がかかっており、天気が良くなさそうなこと、また池田や小松の体調を考慮し、出発を遅らせ近場にある別山北側の雪渓で雪訓を行なうことにする。別山へのルートを途中で左に外れ、雪渓に入る。最初に池田を交えて歩行と方向転換の復習をして、ロープワークを行なう。1年生は支点作りや足場作りに時間が掛かっており、架け替え等忘れていることが多かった。途中で大谷監督が帰られる。ロープワーク終了後、FIXをしたがインクノットに手間取っており、時間がかかっていた。

 

811日(土)曇り

 

BC05:4006:40別山乗越〜08:30雷鳥沢キャンプ場CS@

 

先に高木OBが田仲を連れて室堂に下山する。今まで足指の痛みを堪えていた小松だが、雷鳥沢の下りでとても痛いと訴える。隊を二つに分けて進む。小松に横山を付けてゆっくり下らせる。先に到着した隊で雷鳥沢キャンプ場にテントを張る。室堂から装備を配送してから、みくりが池で温泉に入り心身ともにリフレッシュする。小松は両足の親指の爪が剥がれかけており、出血している。このまま縦走をするのは厳しいため、室堂から帰京させる。

 

812日(日)晴れ後曇り

 

CS@05:0005:40室堂バスターミナル〜07:00浄土山〜14:00ザラ峠〜15:10五色ヶ原キャンプ場CSA(後発隊:室堂バスターミナル12:3516:05CSA)

 

天気も良く、薬師岳を見ながら浄土山へと登る。龍王岳の下りで急に金原が倒れる。足を挫いたらしく、中々立ち上がらない。テーピングを巻いて固定したが歩くと痛むようである。捻挫の状態や悪化を考慮に入れ、上級生で話し合う。様子を見て次のキャンプ場までとも考えたが、ザラ峠までの急坂や途中で悪化したときにエスケープが困難になることから室堂に下山させることにする。レーションだけ金原の分を減らし、横山と山浦が金原に付き添い、室堂に引き返す。残りのメンバーで横山・山浦・金原の共同装備を持ち、ゆっくりと進む。鬼岳のトラバースには雪も残っており、雪の状態によっては危険だと感じた。装備も重たく、五色ヶ原に着いた頃にはへとへとであった。横山と山浦は私達が到着した1時間後くらいに着き、18時くらいに到着するだろうと予想していた自分は驚いた。

 

813日(月)曇り後雨

 

CSA05:000800越中沢岳〜09:10越中乗越〜10:50スゴ乗越〜11:55スゴ乗越小屋CSB

 

霧の中の行動となった。稜線上は風が強く、雨が降り出しそうで降らないといった天気であった。越中沢岳から越中乗越の間は岩場が多く緊張を強いられた。午後から大雨となる。

 

814日(火)曇り

 

CSB09:3010:50間山〜14:10薬師岳〜16:20薬師峠キャンプ場CSC

 

朝も雨は降り続いておりテント内は水浸しになっていた。須郷の人差し指の第1関節から第2関節まで大きな水疱ができていることに気付く。昨夜の食当中の火傷が原因である。指を冷やして軟膏剤を塗り包帯を巻く。雨も止み、出発を遅らせて薬師峠に向かう。須郷が転倒して水疱が割れてしまわないように荷物を軽くし、注意を払って行動する。水疱は時間が経つにつれどんどん大きくなる。薬師岳に着く頃にはメンバー全員に疲れがみえていた。特に池田は登りがきついようでペースも遅くなる。薬師峠キャンプ場は人が多くテントを張れる場所はほとんどなかった。テント設営後、須郷を連れて太郎平小屋にある診療所に向かう。医者の方は居なかったが、富山県警の方に診てもらった。氷水で冷やし、消毒して包帯を巻き直してもらう。水疱はかなり大きくなっており、パンパンに膨らんでいた。2度の火傷だと言われ、明日の朝下山して病院で診てもらった方がいいと伝えられる。

 

815日(水)曇り後雨

 

横山が須郷を連れて折立に下山し、病院へ向かう。縦走を続けるのは4人になったため横山に不要な装備、食料を持って行ってもらう。天気が悪いことと、疲労の蓄積を考え薬師峠キャンプ場で停滞する。

 

816日(木)曇り後晴れ

 

CSC03:1506:00薬師沢小屋〜09:30雲ノ平山荘〜11:55岩苔乗越〜13:15鷲羽岳〜14:45三俣蓮華岳キャンプ場CSD

 

薬師沢小屋から雲ノ平までは急登であったが良いペースで登れていた。雲ノ平は霧で覆われ、木道もつるつる滑るため危険だった。祖父岳までのルートも明瞭ではなく少し手こずった。岩苔乗越辺りで霧もはれ、水晶岳や鷲羽岳が見える。鷲羽岳に登頂したときは、やっとここまで来たかと少し達成感が滲み出た。夕方雷が鳴るが、遠いため問題はなかった。

 

817日(金)晴れ後雨

 

CSD04:1506:30双六小屋〜11:50千丈乗越〜13:50槍ヶ岳山荘CSE15:4016:05槍ヶ岳〜16:40CSE

 

朝方星空が広がっており、快適に行動ができそうであった。三俣蓮華岳には行かず、巻道ルートを進み双六小屋に到着する。池田が双六小屋手前の下りで膝を痛める。本人も大丈夫と言っていたが、樅沢岳を越えた下りでとても痛そうにしている。池田の共同装備を上級生で持ち進む。膝を曲げると痛いため、下りや岩場にはとても苦労していた。賀来も靴擦れで足を痛めていたが頑張って歩いていた。やっとの思いで千丈乗越に到着する。その頃には雲が覆い始め、ポツポツ雨が降り出してきた。黙々と登り続け、槍ヶ岳山荘に到着する。その直後土砂降りとなる。雨が弱くなったのを見計らってテントを設営。明日の朝も雨の予報なので、今日のうちに槍ヶ岳を登ることにする。池田も膝の痛みが治まってきたようで順調に登る。槍ヶ岳までは渋滞しており時間がかかる。最後のハシゴ辺りで雨が降り出し、山頂で大粒の雨に打たれて体が冷える。何とか写真を撮り下降する。雷も鳴り始め、慎重に素早く下降した。

 

817日(金)晴れ後曇り

 

CSE04:1506:50槍平小屋〜11:00新穂高温泉

 

予報は外れ早朝は天気も良く槍ヶ岳が綺麗に見えていた。最後は疲労、足の痛みなどで皆疲れ切っていて、最終日という気力で歩いていた。林道を抜け、新穂高温泉に到着する。

                                                                   

 

 【総括】

1年生が1人増え学生10人での合宿となった。OBの方にも多く入っていただき、分散登攀では剱岳・Cフェース、雪訓も内容の濃いものとなり、有意義な合宿となった。その反面初歩的なミスから1年生の怪我まで大きな課題を残してしまった。1年生の怪我は、1年生の体力・経験を上級生がしっかりと考えケアをしていれば防げるものもあり、反省点の一つである。

目的のリーダーシップ・メンバーシップ・チームワークはまだまだ足りないところが多い。一人一人が隊の一員であり、一人の行動が隊全体に影響を与える事を、もっと強く考えて認識していかなければならない。そのことを意識させる事、まとめる事がリーダーとしての役割であると感じる。これからの山行を大切にして向上させていきたい。

後半縦走は怪我人がでてしまったため4人だけしか槍ヶ岳に行けなかったが、完遂した1年生2人にとっては長期の山行も経験でき大きな財産になったと思う。この合宿の反省点・経験を糧にして次に進みたい。

(報告 関)

 

↑分散行動3日目,剱岳頂上

↑剱へGO!

↑今回初合宿参加の一年小松もしっかりと頂上を踏んできました。

↑雪上訓練一日目,内蔵助カールへ向かうメンバー

↑大谷監督に剱周辺の概念を教えていただく

↑滑落停止訓練,停止中の一年須郷と ピックの差し込みについて指導する三年横山

↑直登訓練,高木OBと一年賀来

↑全員でのグリセード訓練

↑雪上訓練一日目を終え,BCへ戻る

↑夕食後,剱岳をバックに剱沢BC

↑雪上訓練二日目は,BC近くの雪渓

↑雪上訓練二日目,ロープワーク

↑一年賀来が二年山浦(滑落者)を肩がらみで確保

↑一年須郷が三年横山を肩がらみで確保するも中々止められない

↑一年金原がスタンディングアックスで,高木OBを確保する

↑一年賀来,腰がらみで確保

 

↑ 分散登攀Cフェース剣稜会ルート、本多コーチと一年須郷

↑ 分散登攀Cフェース剣稜会ルート、高度感があり楽しいです

↑ 後半縦走、越中沢岳(2,591m)

↑ 後半縦走、薬師岳(2,926m)

↑ 天気も良く快適です

↑ 鷲羽岳(2,924m)、槍までもう少しです。

↑ 槍が見えました。良い天気です。