2005年  GW山行 北アルプス 鹿島槍ガ岳 天狗尾根

期間: 平成17年4月30日(土)〜5月4日(水)

メンバー: L須田、SL鈴木、早見、石垣

場所: 北アルプス 鹿島槍ガ岳 天狗尾根

レポート:  4月30日(土)

大谷原駐車場22:30着

 夜遅く、大谷原の駐車場にタクシーで到着。暗闇の中、橋の脇の登山計画書提出ポストの近くにテントを張り、川の音を聞きながら眠りに落ちる。

5月1日(日)曇りのち雨

大谷原駐車場5:00発〜出合7:29着

〜大谷原駐車場からアラ沢、大川沢出合まで〜

 4:30出発・・・、の予定だったが見事に寝坊。結局5:00頃、駐車場をあとにする。橋を渡って、右手に進む。(左に進み右手から合流する林道を進むルートもある。)すぐに沢が見えてくるが、地形図に記載されている橋は壊れていて大川沢の左岸には渡れない。(渡れる箇所があったようであったが、確認せず。)右岸の道なき道を進むが、すぐに渡渉を強いられる。(へつれないことはないが、微妙なトラバースなため渡渉を選択。)プラグツを脱いで、裸足で渡るが予想以上に冷たい。(5:31)そのあと、左岸を1つ目の堰堤まで順調に進み、その手前で右手の斜面を高巻く。次の堰堤は、階段状のため問題ない。右岸も同様のようだ。あと2回ほど渡渉をしたところで、出合近くのつり橋に着くが、これまた壊れている。仕方なく、左岸へ渡渉。ここから、天狗尾根取付まで雪の上を歩くことになる。(雪渓に似た雪質。)出合まで渡渉はないだろうと予想するが、左の斜面が急になってくる。またか、と思うがここは高巻けた。しかし、高巻いた後の急なくだりで石垣が滑落。須田がすばやく声をかけ、下についていた私が止めたため怪我なくすむが、ヒヤッとさせられる。ピッケルを装備して、斜面をトラバース。石垣のキックステップが未熟なため、慎重に下につきながら進む。やがて、大川沢、荒沢出合に到着。(7:29)渡渉を覚悟していたが、アラ沢へ200mほど詰めたとこに、スノーブリッジがあり、免れる。

〜天狗尾根末端から、第一クーロワールを抜け2120付近まで〜

天狗尾根末端取付7:33着〜1,450m付近8:57着〜1,650m付近10:30着〜1,800m付近11:00着〜第一クーロワール基部13:09着〜2,120m地点15:10着〜15:40天幕

7:33、天狗尾根末端に取り付く。尾根を目指し急斜面を登る。雪はない。(12月は急登のラッセルとなるだろう)結構急で、微妙な部分もあるが、8:57、無事1,450m付近の傾斜が緩む支尾根にでる。そこから、西北西〜北西へと進路を変え、10:30頃、1,650m付近の尾根上に出て、西へと進路を変える。ここら辺りから下山まで、雪の上を歩くこととなる。1,800mの1日目天幕予定地に着いたのは11:00。予想以上に早く、石垣も平気な感じである。ゆえに、1,800m付近をあとにする。

ここから次第に尾根も細くなってくる。11:35、第一クーロワール地点と予想していた1,930m付近に着く。左手の支尾根も確認し、目の前の急登を眺め、ここが第一クーロワールかと思うが、予想以上にショボイ・・・。まあ、左手に滑落すればアラ沢へさようならだが。難なく通過。その後、登りが急になり尾根も細いため1〜2ピッチFIX。右手が切れているのであまりよらないように気をつけるが、通過したあと振り返ると、あらまあ、よく発達した雪庇だこと。やはり、冬の核心の一つは雪庇だと思いぞっとする。

そして、2,030m付近。この時点で13:09。右手はすっぱり切れており、はるか遠くに遠見尾根を望む。左手はアラ沢へさようならコース。進むルートは傾斜50度、50mほどの雪壁。ありゃ?これはもしや、第一クーロワールでは?と思いつつ、FIXを張る。途中、雪が割れて地面がはだけている。ギリギリ50mいっぱいで上部に到着。抜け口付近の左手の急斜面から伸びるリッパな木には残地スリングが数本。やはり、ここが第一クーロワールだ。抜け口付近のはだけた雪から覗く丈夫な木の根で支点を作る。セカンドが登ってくる間、次のルートを目で探る。ここから、左へトラバースし、木の合間を縫ってルンゼを詰めるか、上部に抜け、ルンゼを巻くルートをとるか。前者は、急斜面があまりにも急すぎる。さらに、木でランニングはとれそうだが、雪の状態は微妙。後者は、明らかに雪庇が発達している感じだが、トレースがうっすらと残る。しかし、先が見えないので偵察することにする。結果、ルートを後者に決める。やはり、雪庇はリッパなモンだったが、トレースもアリ、いけそうな感じである。

第一クロを全員抜けたのが14:10頃。慣れないFIXのため、やはり遅い。このころから、午後から雨、との予想通り小雨がぱらつきだす。時間が微妙になってくる。コレを抜ければ2120ピークのはずだが、予定通り天場はあるだろうか?そもそも、地形図の読みは間違っちゃいないだろうか?いやそれはない。しかし、お間抜けなことに全員雨具を装備していない。ラフスタイルである。アホである。(反省)仕方なく、上だけ雨具を着る。(早見は、後続を待つ間、いそいそとハーネスをはずし、雨具下も着用。)
次のピッチは、早見リード。雪の状態もびちゃびちゃで、ステップが決まりづらく、ルートは、トラバースに雪壁にといやらしい感じ。リードしている早見に声をかける。

私「早見、行けそうー?」

早見「エーッ?大丈夫です!」

と頼もしい。早見が見えなくなって数分、威勢のいいビレイ解除の声が聞こえる。やれやれ、とセカンドの私も進みだす。トラバースでは、丈夫な木でランニングをとっている。ルートの状態は、やはり悪いので、石垣にはユマールを使うように確認する。次に急な雪壁を登るが、雪の状態も悪く、結構な急斜面。さらに、雨具下を着ていなため、びちょびちょになり、我ながらキックステップの切れも悪い。一瞬、カラダが雪壁から離れそうになりヒヤッとする。上に天場があるかを気にしつつ、尾根上に抜ける。(14:40頃)早見と、結構悪かったなー、と確認しあう。結果、意外にも、雪の常態も影響してか、このピッチが天狗尾根を通して一番悪かったように思う。石垣はユマールに助けられたようだった。ラストの須田は、ザイルの流れが悪く、登りにくかったようだ。

 石垣、須田が登る間、偵察を兼ねて、天場を探しにナイフリッジ気味の尾根を歩きだす。ついでに、地形図で地形をよく確認する。ここからは、よく地形が確認できた。ナイフリッジの先に見えるピークが天狗ノ鼻であろう。そのさきは、はっきりとは確認できないが
鞍部になっており、最低コルがあることが分かる。そしてその彼方に高くそびえる鹿島槍ヶ岳北峰。様々な情報からも、ここが2120ピークであることを確信する。だが、天場としては微妙。他パーティーの天場あとがあるが、そこも微妙。右手は雪庇にクラックが走り、左手の斜面は雪崩そう。結局、先ほどのピッチの終了点付近がマシそうなので、そこを天場と決める。15:10頃には、石垣、須田も無事に到着し、天場をつくりだす。15:40頃、テントも設営し、須田、石垣はテントの中へ、そして、食事の準備と天気図、私と早見は雨の降る中FIX工作へとお出かけ。アー、楽しい。2ピッチ、ナイフリッジにFIXを張り、帰幕。雨は、翌日の10時頃まで降り続ける。

5月2日(月)雨のち晴れ

〜停滞〜

 朝から雨である。まあ、小雨だが。行動すべきか、停滞すべきかで、須田と私ではっきりと意見が別れる。(須田の意見は停滞すべき、私の意見は行動すべき)話し合っても合意形成せず。最後は、リーダーである須田の指示に従い、停滞とする。このことに関しては、反省会でよく話し合ったがここに書く必要はないので、割愛。

 偵察ついでに昨日張ったFIXを、場所を変えて張りなおす。(最初に張っていた箇所は問題ないと判断。先のナイフリッジに張り替えた。)そのあとは、テントでごろごろ。アー、暇すぎてイライラする。昼ごろには、厭味たらしくお外は五月晴れ。ドーン、ドーンと雪崩の音。さらにイライラする。しかしまあ、こんなにのんびりできるのは久々。ここぞとばかりに、物思いにふけりまくる。ハア―。

5月3日(火)晴れ

〜2120付近から天狗ノ鼻へ〜

2,120m地点4:05発〜第二クーロワール基部5:10着〜天狗ノ鼻7:20着

朝、準備も早く4:05には天場をあとにする。FIX工作しておいた2ピッチを順調に通過し、(石垣がヘッデンを落とすというアクシデントがあったが)第二クーロワールへさらに2ピッチFIX通過。5:10、第二クロ基部に到着。第二クロは予想通り、2,200m付近であった。約60mの急なルンゼだ。中間部でピッチを切り、2ピッチ目で上部に抜ける。確かに急ではあるが、全く悪くない。6:00頃、上部に出る。FIXを固定し、次の工程を偵察しに行く。どうやら、天狗ノ鼻(2320)まで悪い部分はないようである。2320への急登もこの時期には問題はないようだ。6:50頃、全員が第二クロを抜け、小休止。7:20に、天狗ノ鼻を通過する。鼻からは、カクネ里、鹿島槍北壁、そしてこれから進むルートも見渡せる。

〜天狗ノ鼻からC5基部まで〜

天狗ノ鼻7:20発〜最低コル7:50着〜C5基部11:35着

 最低コルに向かって歩き出す。コルまでは、トレースに従い進む。途中で、アラ沢側の斜面のトラバースに移るのだが、尾根からハズレる地点で一部地面が露出しており、また傾斜も急なことから慎重にクライムダウン。そこからの、トラバースも気が抜けないが、素早く通過。7:50頃、最低コルを通過する。その後、急登A 2,350m付近(8:00〜8:30)、小雪壁B 2,450m付近(8:35〜9:15)、ミックスの急登C 2,460m付近(9:20〜10:50全員通過)、でそれぞれ1ピッチずつFIX.を張る。C5の岩場手前の2500メートル付近で、傾斜がやや緩む。(11:00)C5の基部に着いたのが11:35。

〜C5基部からC6上部まで〜

C5基部12:10発〜C6基部12:45発〜C6上部13:40着(全員)

基部正面から直登するのは明らかに厳しそうである。資料で読んだとおり、5mほどトラバースした箇所からの登攀を試みる。ちなみに、このトラバースは結構悪い。バランスを崩せば、カクネ里までノンストップ滑落なのでFIXを張る。支点は、はだけた丈夫な木で作る。12:10早見がリード開始。私の番だったが、優しい私は後輩に譲るのであった。C5はこの時期、雪はほとんど付いていない。核心は途中のチムニーを抜ける箇所。だが、冬では全く変わってくるだろう。登攀の途中で早見が、
早見「センパーイ、鈴木先輩もう一回ここリードしたらどうですか?」
と言い出した。ん、何事だ!?とドキッとする私。
私「エッ、なんで!?」
早見「だってもう抜けちゃいますよ、鈴木先輩もここリードしたいっしょ?」
・・・なんだそんなことか、ビビらせやがって。
私「いいよ、変な気イ使うな!!」
と、お気楽な会話を繰り広げる私たち。冬はこんなわけには行かないんだろうな・・・と思いつつ。(早見、ランニングを取るため、軟鉄ハーケンを使用。)

12:30頃、セカンドの私もC5を抜ける。(ATCを落としていたらしく、須田が回収。)次のC6を観察したところ、資料で読んだとおり、どうやら、左にトラバースしたあと登るのが易しそうだ。12:45、石垣がC5を抜けた時点で、C6のリードを開始。とりあえず、左へのトラバース途中にある残地ハーケンでランニングを取る。簡単だと思ったが、アラ沢へすっぱりと切れ落ちるトラバースにビビったのか、うまくいかない。渋っていると、早見の冷たい視線を感じ、若干焦る。結局、やや上のバンドを利用してトラバース。あとは慎重に上部に抜けて13:00。C6を抜けると、荒沢の頭が迫る。お隣の東尾根に目をやると、核心の第二岩峰を登攀中のパーティーがいた。13:40、全員C6を抜けたところで小休止。

〜C6上部から荒沢ノ頭まで〜

C6上部13:50発〜荒沢の頭15:10着〜15:40天幕

 少し歩き、荒沢ノ頭基部に着く。(14:00)少し右に回りこみ、早見が急な斜面をリード。1ピッチ50mギリギリで急傾斜を抜ける。全員抜けた時点で、14:50。そこから、頭を目指して歩く。15:10頃、荒沢ノ頭に到着。東尾根からのトレースと合流しており間違いない。天幕とする。鹿島槍ヶ岳北峰頂上は目と鼻の先。右手(カクネ里側)の雪庇に気を付ければ、もうFIXを張る必要もなさそうだ。これで核心は終わった。明日は登頂し、下山あるのみ。

5月4日(水)晴れ

〜荒沢ノ頭から鹿島槍ヶ岳北峰頂上〜

荒沢ノ頭4:00発〜鹿島槍ヶ岳北峰頂上4:30着

 4:00、荒沢ノ頭をあとにする。薄暗い中、慎重に歩き4:30、頂上に到着。皆、嬉しそうだ。部旗を広げて記念撮影したところで、デジカメの電池もなくなる。

〜鹿島槍ヶ岳北峰頂上から赤岩尾根下山〜

鹿島槍ヶ岳北峰頂上4:40発〜南峰〜冷池山荘〜冷乗越〜高千穂平〜大谷原駐車場10:30着

 ここからは早い。南峰、冷池山荘を快調に通り過ぎ、赤岩尾根を下る。下り始めのトラバース、高千穂平から先の急下降を慎重に下る。ラストの、赤岩尾根の取り付き部分は、本当に一般道か?と疑いたくなるほど悪路である。あとは、林道を歩き大谷原駐車場へのんびりと歩いた。
 


天狗の鼻へ


2120付近にて天幕


荒沢、大川沢出会付近にて


これが第二クロ...か


ナイフリッジ


よっしゃ、登頂


左に見えるのはカクネ里


朝日


頂上をバックに